第13話 ルイーザの味方
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「あれ、待てよ? 今、おれってノアだよな?」
まだ、自分が異世界転生してからノア・ファフェイスになったと判明して日が浅くて忘れそうになるけど、今のおれはノアだ。
「ってことは、おれがルイーザの味方になれば良くないか?」
ノアはルイーザの双子の兄だ。
ルイーザにとって、ノアは家族の一人だ。
そのノアであるおれが味方になれば、ルイーザには家族に味方が最低一人はいることになる。
「そうだよ! おれ、ノアじゃん! わざわざルイーザの敵にならなくて良いじゃん!」
ルイーザがノアをどう位置付けしてたのかは、ルイーザにしか分からない。
だけど、
「最悪味方だった3人がいなくなっちゃっても、おれだけがずっとルイーザの味方でいれば良いんだ! 絶対におれは敵になったりしない! ルイーザを裏切らない!」
おれがルイーザの自他ともに認める味方になれば良い。
困った時にいつでもルイーザを助けられるお助けキャラみたいになれば良いんだ!
「ルイスの様子を見るにまだノアとの仲はそこまで悪くないはず。仲良くなるチャンスは充分にある!」
これからたくさん遊んでたくさん喋って仲良くなって、ルイーザに信頼も信用もされる双子の兄になれば良い。
「やることがあり過ぎるからその都度こなしていこう。この身体じゃやれることが限られているし、変にやり過ぎると“神童”とかにされて別の家に養子に出されてルイスと離れることになる」
貴族の家なら養子を迎えるのも、実子を養子に出すのも珍しいことじゃない。
基本的に長男以外は爵位を継承出来ないから、長女や三男などが養子に出されるのもよくあることらしい。
次男は長男の“スペア”だから養子に出されることは少ない。
だけど、ノアの場合は次男とはいえ三男のルイスとは双子だから養子に出されてもおかしくない。
優秀な子どもは“神童”とされ、身分の高い公爵家や辺境伯家の養子になり、英才教育を受けることになる。
ゲームではファフェイス侯爵家からノアもルイスも養子に出されてないけど、もしもおれが“神童”になればファフェイス侯爵以外の爵位を継承させるために養子へ出される可能性もある。
やり過ぎ注意というわけだ。
「おれが最初にやる大きな出来事はルイスがルイーザになった時にフォローすることだろうな」
父親・ジョージから無理矢理ドレスを着せられて、泣いて悲しんでいるルイスを慰める役目。
「5歳の子の心のケアかぁ……。おれに出来るかな?」
これが攻略キャラの誰かなら泣いているルイスに優しく声を掛けてお互い初恋で疎遠になって、数年後に再会して恋愛に発展する展開なんだろうけど、おれは双子の兄だしな。
「くそっ、いくらルイーザの一番身近の存在とはいえ兄弟なら恋愛出来ないじゃないか……!」
ダブハーは普通の恋愛ゲームだったけど、同性婚は出来る世界観だったはずだ。
それを知ったダブハーのプレイヤーのお姉さま方(腐女子)に火をつけて“ダ腐ハー”が人気となったって女友だちが言ってたな。
「キャラを選べるならカイルとかが良かった! モブの使用人とかだったらルイーザと恋愛して“駆け落ちエンド”に出来たかもしれないのにぃ……!」
ルイーザが破滅しないエンドが見たい。
ルイーザが誰かと幸せになるエンドが見たい。
それは嘘じゃない。
でも、せっかくダブハーの世界に転生したのなら、おれがルイーザを幸せにしたかった……。
「うぅ……。ルイーザと恋愛は出来なくても、兄弟仲良く暮らすエンドも有りか……」
ルイーザが廃嫡&国外追放になるのもあったから、そのルートに進んで一緒について行って平民になろうかな。
長谷川優希は一般人だったから、仕事を選ばなきゃきっと平民でもやっていけるさ。
「まぁ、廃嫡&国外追放はその後にルイーザは惨殺されるから、無しだけどな!」
本当にルイーザと平民になるなら円満に事を進めないと、待っているのは死だ。
「あー、ダメだ……。なんかすごいダメージ食らった……。これから生のルイーザを見れるのに、恋愛出来ないなんて……」
男同士の恋愛は良いけど、兄弟同士はダメだ。
それはしっかりと線引きしないといけない。
「おれがノアに転生した意味を教えてくれよぉ……!」
おれはあまりのショックに、また寝込みそうになるのだった。
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