第12話 ファフェイス侯爵家について

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 ジョージ・ファフェイス。

 ノアとルイスの父親で、ファフェイス侯爵を名乗っているけど爵位は“持っていない”。

 ファフェイス侯爵の爵位を継承したのは、ルイスたちの母親、ボニー・ファフェイスだ。


 ちょっとファフェイス侯爵家について説明しよう。

 ファフェイス侯爵家は女家系で、本来爵位を継承するのは男のみだけど特例が認められ直系の長女が爵位を継承している。

 該当者がいない場合は親戚の男とかが爵位を継承するようだけど、ファフェイス家の直系は女ばかりで男はいない。

 高祖父までは男が爵位を継承していたけど、曽祖母の代から“ある理由”によって婿を取って、女が爵位を継承している家系だ。


 3代続く女侯爵だけど、何故か爵位を継承したボニーが産んだ第一子は娘ではなく息子だった。

 約80年ぶりのファフェイス家の男の誕生に、親族を含め周囲は驚きを隠せなかったという。

 それがノアとルイスの兄、マテオ・ファフェイスだ。

 マテオだけではなく、次に産まれたノアとルイスも男だからジョージとボニーはファフェイス侯爵家の歴史を覆らせた当主だったりする。


 爵位を継承出来る男が産まれたことは喜ばしいことだ。

 だけど、ボニーは女家系だから自分が産む子どもも娘だと信じて疑っていなかった。

 長男・マテオを産んだ一年後に、双子を妊娠した。

 ボニー自身も双子だから、2人の娘を授かると信じていた。

 でも、産まれたのは双子の男の子であるノアとルイスだ。

 ボニーは3人の息子を持つ母親になった。


 年子で子どもを授かったのだから、またすぐに妊娠するだろう。

 次こそ娘を産むのだと意気込んだ。

 でも、ノアとルイスを出産してから一年経っても二年経ってもボニーは妊娠しなかった。

 妊娠しないボニーは徐々に病んでいき、心を壊してしまう。


 “娘”に執着し、娘は何処かとボニーは屋敷内を徘徊し存在しない娘の姿を探す。

 ボニーの双子の妹・ケイリーがルイスたちと同い年の娘を出産したので養女にする案も出たが、ケイリーの夫から断られてしまいボニーはますます“娘”に執着する。

 先代のファフェイス女侯爵(ルイスたちの祖母)に許可を取り、遠縁から養女を取ることにしたけどボニーが『自分の産んだ子じゃないと嫌!』と拒絶し断念。


 そこで、ジョージの取った行動がボニーとの子作りじゃなくて、『息子を娘にする』だった。

 長男のマテオは爵位を継承する大事な跡取りだから娘にさせられない。

 ノアとルイスのどちらかを娘にさせようと考えた結果、ジョージは大人しいルイスを選ぶ。



『さぁ、ルイス。今からお前は私の娘・ルイーザだ』

『お父さま、嫌です……。ぼくは……ルイスは男の子です……。いや……』

『お前が娘になれば、お母さまは元気になるんだ。我が儘を言うんじゃない!』

『やだ……やめて……』



 嫌がるルイスに無理矢理ドレスを着せて、ジョージはルイスの尊厳を奪った。

 この会話は、あるルートでヒロインと話してる時に流れて来た数少ないルイーザの回想シーンだ。

 そしてファフェイス侯爵家の歴史については、ルイーザ本人じゃなくてある攻略キャラが説明してて知った。

 ネタバレになるからその攻略キャラが誰なのかは伏せる。


 ルイスはどれだけ怖かっただろう。

 ルイスはどれだけ嫌だっただろう。

 ルイスはどれだけ絶望しただろう。


 ルイス本人が望んだことではなかったのに、無理矢理ドレスを着せられた時にルイスは何を思ったんだろう。

 母親のためだと、自分をいとも簡単に生け贄むすめにした父親に何を思ったんだろう。


 ルイスがルイーザになる原因を作ったのは父親・ジョージだけど、元凶になったのは母親・ボニーだ。


「……そうだ、ずっと父親だけが悪いと思ってたけど、母親も絡んでて救いようがなかった」


 ノアは双子の弟であるルイスが女の子の格好をさせられても何も思わなかったんだろうか?

 兄であるマテオはそんな光景を見て、何を思ったんだろう?

 ゲームではその描写がないのが非常に残念だ。


「ルイーザの家族に味方がいないなんて……」


 ルイーザにとって敵か味方かどっちかなら、両親は敵だ。

 ノアとマテオも敵だろう。

 味方がいない中で、ルイスはルイーザおんなとして生きてきた。

 ファフェイス侯爵家の使用人に味方がいたのかもあやしい。

 セバスチャンとサラはゲームに出て来ないのなら、使用人を辞めたんだろう。


「もし、本当にルイーザの味方だった執事・メイド・庭師の3人だったら……ルイスがルイーザになる5歳の時にいなくなったのは何かあったんだろうな」


 セバスチャンとサラ以外に、庭師にカイルが当てはまったらカイルも屋敷からいなくなる。


「3人はいなくならずにルイスの味方でいてほしいな」


 おれはそう思わずにはいられなかった。


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