ギャルゲ主人公、GWの予定を聞かれる。
4月も終わりに近づき、クラスは浮き足立っていた。そう、ゴールデンウィークである。かく言う俺も浮き足立っている内の1人だった。5連休万歳。何の予定もない人間だって、この連休は待ち遠しいものである。しかし俺のこれには理由があった。
「もうすぐゴールデンウィークだよな!橘は何か予定あんのか?」
根岸がウキウキしながら聞いてくる。
「彼女とデートする」
「えぇ〜!マジかよいいな~!」
そう、莉愛と会う約束をしているのだ。入学式以来一度も会っていないので、そろそろ顔が見たいと思う頃だった。というか、そろそろ会わないとマズい。最近俺は莉愛の機嫌を損ねてばかりなのだ。莉愛とは会えないのに他の女子(主にヒロイン達)とは仲良くしているのに嫉妬してるんだろう。電話の声は拗ねていた。
「デートどこに行くんだ?」
「絶対言わねぇ」
「何でだよ!」
「琉依アンタ、ゴールデンウィークどうせ暇でしょ?私が遊んでやってもいいわよ?」
出会い頭に瑞季にそう言われる。何目線じゃ貴様は。
「いや、俺予定あるから。悪いけどそんな時間ない」
「はぁ?1日くらいあるでしょ?無くても時間作りなさいよ!」
「いや割と本気でない。ごめん。」
「どんな予定よそれ!?」
「人と会うんだよ。瑞季は知らない人だし、付いて来ても気まずいだけだからな」
彼女って言ったらうるさくなるだろうしなぁ。
「〜っ、馬鹿!」
瑞季には悪いが嘘は言ってない。莉愛のことを瑞季は知らないし、デートに瑞季がいたら莉愛だっていい顔はしないだろう。それに、時間が無いのも本気だ。
実は5連休の内の3日間デートする事になっている。そんなに会って何するつもりだって言われるかもしれんが、俺が提案した訳じゃない。莉愛に言われた時は流石に俺だってビビった。でも仕方なく受け入れた。放課後お菓子パーティを許可してもらう代わりの条件だったんだから。
「琉依さん、貴方ゴールデンウィークは何か予定がおありですの?」
さっきも同じような事聞かれたな。
「ありますけど」
「あらそうでしたの!てっきり一人寂しく引き籠もって過ごすのかと」
「失礼な」
いつものように放課後お菓子パーティである。この集まりにもいい加減慣れてきた。椿も段々とスナック菓子に慣れてきたようで、何と今回は自分で袋を開けたのだ。成功した時、俺と紫乃は思わず拍手してしまった。「子供じゃありませんのよ!」と椿は怒っていたが、その顔は嬉しそうだった。
「先輩方は何か予定あるんですか?」
「私と紫乃は冬園家のガーデンパーティに参加致しますの!」
「うわ…お嬢様だ…」
ガーデンパーティとな。いかにもお貴族様って感じの過ごし方だな。
「…って、藤堂先輩も参加するんですか?」
「えぇ、そうよ。去年も参加したの。私的なものだけれど、随分盛大に開いてたわよ」
流石は冬園家。私的なパーティでも金かけてるんだろうな。
「紫乃は私の学友として招待されてるんですのよ!」
「えぇ、私しかいないけどね」
「え?冬園先輩、もしかして友達1人しか…」
「喧しいですわよー!!!」
家に帰ると千百合が開口一番聞いてきた。
「お兄ちゃん、ゴールデンウィーク何か予定あるの?」
何で皆して俺の予定聞いてくんだよ。
「ある」
「いつ?暇な時私の買い物に付き合ってよ~」
「ゴールデンウィークの5分の3予定ある」
「えぇ!?何で!?何の予定!?」
そりゃびっくりするよな。俺だってビビるわ。
「人と会う」
「えぇ〜。3日間とか、意外にお兄ちゃんと会ってくれる人多いんだね~」
「意外にって何だよ、意外にって」
一言余計だぞ。
「でも空いてる時間でいいから付き合ってよ~。可愛い義妹の頼みでしょ〜?」
「誰が可愛いって?この間俺のアイス食ったの忘れてないからな」
楽しみにとっておいた俺のアイス返せ。
「良いじゃん別に〜。…そうだ、お兄ちゃん」
「あ?」
「瑞季さんとは会うの?」
「会わないけど」
「…ふぅ~ん、そっか〜。なら良いや」
そう言うと千百合は機嫌良さそうに部屋に戻って行った。
「…何が良いんだ?」
「あ、ねぇ琉依。デート初日は水族館で良い?」
「あぁ、おっけ」
夜。莉愛と電話していると、突然デートの予定について言われた。
水族館か。デートで行くのは初めてだな。ゴールデンウィーク中は混むだろうし、事前にチケット買っておいた方がいいか。
「もう2人分のチケット買っておいたから!」
と、思ったが先を越されてしまったようだ。俺の彼女は本当によく気が回る。
「次の日の予定は琉依が決めていーよ!」
「えぇ?急に言われてもな…」
「どこでも良いよ?」
「それどこでも良くないやつじゃん」
ふふっ、と莉愛が電話の向こうで笑う。何が可笑しいのやら。
「じゃあ最後の日は?」
「なんとねぇ…花見デートだよ〜!」
「花見ぃ?5月なのに?」
咲いてる所もうないと思うけど。
「近くの桜公園は今見頃だよ?知らないの?」
桜公園。その名の通り立派な桜並木が何百メートルにも渡って続いている公園だ。花見の名所としてこの辺りでは有名だったが…まさかそんなに遅咲きとは。
「知らなかったわ。観光スポットとかあんま興味ないし。」
「近くなんだから知っときなよ~」
「それより花見ってことは…」
もしかして…待望のアレが…?
「お弁当作ってくからね!」
キタァァァァァァ!!!!!!
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