ギャルゲ主人公、先輩に出会う。その2
「紫乃!ようやく来ましたのね!」
やっぱり。4人目のヒロイン、藤堂紫乃だ。ゲーム内でもこの2人は親友だった。
「あら…?そちらは?見た所1年生のようだけど」
「橘琉依です」
「そう、初めまして。私は2年4組、藤堂紫乃。椿の友人です。よろしく」
一緒に選んだ友人とはやっぱり紫乃だったか。味のチョイスが微妙なのはセンスが変わっている彼女が選んだからだろう。
紫乃は訝しげに、
「椿、私が来る前に開けたの?というか開け方分かったの?」
とまるで幼稚園児みたいな心配をしている。椿は慌てて、
「あっ、これはこの1年が…そう!琉依さんが勝手に開けたんですわ!」
いや勝手に開けようとしたのそっちですやん!
紫乃は椿の隣に腰掛け、スナック菓子に手を伸ばす。
「紫乃、随分遅かったじゃありませんの。待ちくたびれましたわよ。」
椿が口を尖らせて文句を言う。
「生徒会の仕事があったのよ。それに、待ちくたびれたって言う割には楽しそうにしていたじゃない。橘くんに何をそんな大声で話していたの?」
紫乃は既に生徒会入りしてるのか。
「此処に来た時琉依さんに思いっきりぶつかられましたの。説教してましたわ」
「冬園グループ令嬢の高尚なお悩み相談(笑)もされましたけどね」
彼女達の会話を聞き流しながら、とある事に気付く。
紫乃はともかく、椿が初対面で名前呼び?ゲームでは始めは苗字で呼ばれていた。名前呼びは好感度が上がってからだ。
ゲーム開始前に出会った事で本編とのズレが生じているのか?
そうでなくとも普通初対面の男子を下の名前で呼ぶとかあるか?いや別に良いけどさ。
ゲーム同様、椿は、何と言うか残念な子だ。成績は良いがどこか抜けている。プライドは高いが素直で、前世ではそんな所が人気だった。
気付くと椿は2袋目を開けていた。期間限定チョコ、桜餅味。…桜風味とかではなく、桜餅味か。よくそんなの売ってたな。
1つ手に取り、食べてみる。口に広がるのはこし餡と、甘じょっぱいチョコの味。奇跡のマリアージュが…起きていなかった。
「琉依さん、まだ沢山残ってますわよ?食べませんの?」
「あぁ…俺はもういいです」
なんでチョコの中にこし餡入ってるんだよ。あとどうやったらチョコ単体を甘じょっぱくできるんだ?
「もういいの?こんなに美味しいのに」
嘘だろこの人。センスが変わってると味覚も変わってるのか?
無知なお嬢様にお菓子を選ぶのは良いが、庶民的なお菓子に変なイメージを植え付けられるのは困る。
「…結構余ったわね」
「これ以上は夕食が入りませんわね…」
結局2袋目でプチお菓子パーティはお開きとなった。残ったお菓子は紫乃が持ち帰るらしい。
「琉依さん!また来ても良いですわよ!」
またやんのこれ。
「そうね、あまり人は呼べないけど…隠れてするなら3人位が丁度良いわね」
参加確定なのか?俺。…まぁ、楽しくはあったから良いけど。
「紫乃!また選びに行きますわよ!」
と目を輝かせる椿。
それは不味い!次はどんなゲテモノ食わされるか分かったもんじゃない!
「次は俺が選んで来ますよ!」
「あらそう?ならお願いしようかしら」
良かった。次は普通の味が食べられる。
「私に変な味を食べさせたら許しませんわよ!」
いやそれは貴女のご友人に仰ってください。
2人と連絡先を交換し、帰ろうとした。が、椿に呼び止められ、
「そういえば貴方さっき随分急いでらした様ですけれど…何か急用でもありましたの?」
急用?…あ。
…誤解解いてねぇ!!!!!
「お兄ちゃんお帰り。遅かったじゃん」
家に帰ると千百合がリビングのソファに座っていた。
「ただいま。色々あったんだよ」
「色々ぉ?何々、もしかして告白でもされちゃった感じ?」
とからかうように聞いてくる。
「まぁ…そんな感じ」
嘘は言ってない。
千百合はショックを受けたような声で、
「…は?本当に告白されたの?ちゃんと断ったんでしょ?」
と聞いてくる。
「断ったよ」
「あ…だ、だよね~。お兄ちゃんに彼女なんてできる訳ないよね~!」
いつもの調子を取り戻した千百合が続ける。
「でもその子も見る目ないよね~!お兄ちゃんに告白するなんて!」
「おい、それは失礼なんじゃ」
言い終わらないうちに千百合は部屋に戻る。
「何だあいつ…」
そして俺も部屋に戻った。
夜。恐る恐る莉愛に電話をかけた俺は、今日の出来事を全て話した。
「…ふ~ん。告白されて?幼馴染みさんと付き合ってるって誤解受けて?先輩2人とお菓子食べて?連絡先まで交換したんだぁ~…」
不味い。これは過去最高に不機嫌かもしれない。
「いやあの、わざとじゃなくてですね…」
「しかも次会う約束までしたんでしょ?良いご身分だね~」
「いや、ほんと、ごめんなさい…」
「美少女に挟まれて食べるお菓子はさぞ美味しかっただろうね」
「いやそれはあんまり美味しくなかった…」
これは本当。
「…琉依は私の彼氏なんだからね」
「はい」
「あんまり他の子と仲良くし過ぎたら怒るから」
「はい。存じております」
「…分かってるなら良いけど〜」
何とか機嫌は治ったみたいだ。
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