ギャルゲ主人公、衝撃の事実に気付く。

確かに次会うときに告白するとは言った。






…だけどこんな早くに来るとは思わねえだろ!!!!


 

 翌日。俺は本屋に来ていた。新しいノートを買うためだ。あとついでに面白そうな漫画とかも探しに来た。ノートを選び、漫画コーナーに向かう。が、あまり興味を惹かれる物はなかった。適当に見て回っていると目に入ってきた後ろ姿に、鼓動が跳ねる。

「莉愛じゃん。」

「あれ、琉依。偶然だね~。何買いに来たの?」

平然と会話してるが、昨日あんな決意をしたせいで結構ドキドキしている。こんな早くに会うとか普通思わねえだろ。

「ノート。もうすぐ無くなりそうだったし。莉愛は?」

「私もノート買いに来たの!あとお菓子のレシピブック。新しいのに挑戦したいな~って」

「ふ~ん。…あれ?でもレシピ本こっちに無くね?」

「あー、色々見てたの!買わなくってもさ、見て回るだけでも楽しいでしょ!?」

急に焦りだす莉愛。不審に思ってさっきまで莉愛が眺めてた方を見ると…

『人をダマす10の方法』

『心理学入門〜マインドコントロール編〜』

『嘘で魅せる!偉人のカリスマ逸話集』

 …見なかった事にしよう。


 



 「げぇ…雨降ってる…」

 ノートを買って外に出ると雨が降っていた。それほど強い訳でもないが雨粒が大きい。

 傘持ってきてないんだよな。本屋行くだけなのにわざわざ天気予報とか見ないだろ。

「あ~…私もないんだよねぇ。家近いしちょっと位なら濡れてもいいんだけどねぇ」

「俺ん家はちょっと遠いからびしょ濡れ確定だわ」

「じゃあ家で雨宿りしてく?」

 莉愛の家だと!?そりゃ勿論行きたいが…

「良いの?いろいろと…」

「別に良いよ!今日家誰もいないし!」

何が良いと言うのだろうか。男と、ましてや昨日恋心を自覚したばっかの奴と家で2人きりになるのは非常にまずいのでは?危機感が無さすぎるというか…いやまて、これはむしろ…





 …告白チャンス到来⁉!?




 「お邪魔しまーす…」

 結局雨宿りすることになった。夕立のようだから待っていれば直に止むだろう。それよりも…

「結構濡れたね~!タオル持って来るから待ってて!」


 濡れた莉愛がエロい!!!!!

 髪は首筋に張り付き、濡れた服が体のラインを際立たせている。長い睫毛にまで水滴が浮かんでいて…

 これから告白しようってのにこんな調子で大丈夫なのか?


 タオルで体を拭いてから2階に上がる。先に着替えるから外で待っててと言い、俺を残して莉愛は部屋に入る。ドアを1枚挟んだ向こう側で莉愛が着替えてると思うとソワソワする。何ならワンチャン覗いてもバレないんじゃ…


ガチャ

「お待たせ」

「うぉわっしょい!!!!!!」

「え?何?どしたの?」

「何でも無い」

驚いて変な声が出た。疚しい事考えてると過剰に反応してしまう。

「洗濯機に服突っ込んで来るから入ってて〜」

「分かった」


 部屋は綺麗で、あまり物がなかった。ベッドに勉強机、本棚、クローゼット、鏡。ごちゃごちゃしてないのは管理も楽で良いと思う。

 部屋を見回すと、机の上にノートが置かれている事に気付いた。近付いて手に取り、表紙を見るとそこには


 『恋狂』

 

とだけ書かれていた。

驚きを隠せないままページを捲る。内容は、おそらく『恋狂』のストーリーや設定だと思わしき事柄が記されていた。

 頭の中を思考が駆け巡る。どういう事だ?他の誰かの物か?いやこれは紛れもなく莉愛の字だ。それだと莉愛にはゲームの記憶が有ることになる。俺と同じ転生者なのか?俺が莉愛と出会ったのは偶然じゃなかった?俺は…


ガチャ

「琉依?何見て…」

俺の手元に視線を移した莉愛が途中で言葉を切る。顔が一気に青褪める。

「あ…、それ…」

「…恋は狂い咲く」

「!何で知って…」

そう、これを初めて読んだ人間ならこの名前を知る筈がない。ノートには『恋狂』としか書かれていないからだ。

「莉愛…『はな♡きすっ!』って、知ってる?」

「!もしかして…琉依も…?」

「2人の認識が間違ってないなら…お互い、転生者って事になるね」

 莉愛が信じられない、と言うように目を見開く。俺だって信じ難いけど。実際に現在進行形で起こっている事なんだから信じるしかない。


 未だに驚きから抜け出せないでいる莉愛とベッドに座る。現状を整理しないといけない。

「まず、俺らは2人共前世の記憶が有る転生者って事で合ってる?」

「うん…そうみたいだね」

「それで、莉愛は『はな♡きすっ!』知ってる?」

「広告で見ただけだし、ストーリーとかはあんまり知らない…」

「そっか。俺も似たような感じだよ。『恋狂』については知らない。もう1個質問良い?」

「うん」


「莉愛は『恋狂』のヒロインで合ってる?」


「何でわかったの!?」

やっぱり。

「何となくヒロインっぽいなって思ってたんだよ。髪とか目の色とか。家事が得意な所も、幼馴染みがいる所も、五色花に行く所も。あとヒロインじゃないと可笑しいくらい可愛い。」

「か、可愛いって…」

顔を真っ赤にして俯く。照れてる所も可愛い。

「…あれ、じゃあもしかして琉依も…」

察しが良いな。


「そうだよ。俺も『はな♡きすっ!』の主人公」


 莉愛は再び目を見開いた。

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