ギャルゲ主人公、乙女ゲーヒロインと進展する。

五色花高校。乙女ゲーム『恋は狂い咲く』、通称『恋狂』の舞台である。

攻略対象は5人で、それぞれを象徴する花がある。らしい。この設定は『はな♡きすっ!』にもある。ちなみに『はな♡きすっ!』も5人。この2つは製作会社が同じらしい。

 前世ではよく広告に出て来たのでうっすらと知ってる。ストーリーや攻略対象の名前などは知らないが、こちらもまた豪華声優陣と美麗なスチルで女性人気が高かった。

 この2つって世界線リンクしてたのか。『恋狂』はプレイしたことないから気付かなかったが、もしかしたらゲーム内の用語とか共通してるのかもしれない。まあ俺はこっちには関係ないだろうから考えても仕方ないけど。

 …咲良さんには関係あるんだろうか。あんな美少女ならどんなイケメンでも放っておく筈がない。もしかしたらヒロインだったりして。そうしたら攻略対象と恋愛するんだろうか。

 公園で見た彼女の笑顔を思い出す。あの顔を他の男に見せるんだろうか。見せるんだろうな。図書館の帰りに聞いた優しい声を思い出す。あの声を他の男に聞かせるんだろうか。聞かせるんだろうな。当たり前だ。乙女ゲームなんだから。

 何故か胸が締め付けられた。


 




 あれから友達と遊んだり咲良さんとLINEでやり取りしたりしてたら夏休みも残り1週間となった。そんな折、

『明日子供達と海行くんだけど橘くんも来る?』

とお誘いのLINEが来た。そう、海である。つまり水着が見れるということ。勿論断る筈もなく。



 「橘くん!こっちこっち〜!」

 俺は今海に来ている。子供達がいるのは知ってたが保護者の姿もちらほら見える。まあ子供だけで来る訳ないか。水難事故とか怖いし。

 声がする方を見ると咲良さんがいた。





 …私服姿の。


 水着やないんかい!!!!!いや可愛いけれども!!!!!

肩出しの白いTシャツにショートパンツという格好は水着には見えない。私服に見える水着もあるとは知ってるが素材からして普通の服のようだ。

「なんか久しぶりだね!」

「2週間も会ってないならそりゃあね。今日水着じゃないんだ。あんま海入らない感じ?」

「水着は下に来てるよ!」

「そうなんだ」

見たい。


 

 その後俺達は海で遊んだ。砂の城を作ったりビーチボールしたり貝殻拾ったり水かけ合ったり。途中で飲み物を買いに行った咲良さんがナンパされかけるという事件もあったが

「ねぇ~君ひとり?さびしくな〜い?俺らと遊」

「咲良さん今からあっちでビーチするって。行こっか。」

ナンパの気配を察知した俺によって未然に防がれた。そんなこんなで時間が経ち解散となったが、

「莉愛ちゃん歩きでしょ?橘くんに送ってもらったら?」

という保護者からの神託によりまたもや一緒に帰る事になった。俺達は脈アリに見えるんだろう。周りの保護者もニヤニヤしていた。


「また送ってくれてありがとね」

「どーいたしまして」

自転車を漕ぎながら取り留めのない言葉を交わす。この穏やかな時間が俺は好きだったりする。

「…ねえ、橘くん」

「んー?」




「琉依くんって呼んでいい?」





 キッと自転車を停めるて振り返る。俺は今、驚いた顔が隠せていないだろう。

「…いいけど、なんで急に?」

「なんか他人行儀だなーって。琉依くんも好きに呼んでいーよ」

おっふ。いきなり名前呼びは刺さる。というか俺も好きに呼んでいいの?だったら…

「じゃあ…莉愛」

言うと同時にペダルを漕ぎ出す。

前世含めると俺は40代。今更名前呼びで照れる訳が無い。だから…

 

顔が熱いのは日焼けのせい。


赤く見えるのは夕日のせい。






 家に着くまで無言の時間を過ごした。





 翌日。

 ブーッ ブーッ

 着信音で目が覚める。枕元に置いてあるのでバイブ音だけでも気付く。表示を見ると幼馴染みの瑞季から。

「もしもし」

「琉依、アンタどーせ課題終わってないでしょ?どーしてもって言うならこの瑞季様か見てあげなくもないけど?」

「いや俺終わってるからいい」

「…はぁ?…せっかく誘ってやってんのに断るとか何様?バカ!バーカ!」

ブツッ ツーッ ツーッ

「はぁ…またかよ…」

 …嵐のように過ぎ去っていった。今までにも何度かこういう事はある。逆らえば一方的に罵倒されるのだ。ゲームではうはwツンデレカワユスwとか思ってたがあれはツンデレのデレの部分があったからだ。現実で何度もこんな態度をとられると流石に辟易してくる。

 というかびっくりした。昨日の出来事全部夢オチか?と一瞬焦る。が、スマホ見たら日付は合ってたのでちゃんと現実だった。

 

 




 あれから莉愛と連絡を取る頻度が上がった。と言っても内容はただの世間話だ。しかしそこから分かったこともある。

 まず第一に、家事はほとんど莉愛がやっているらしい。

莉愛の両親は仕事で忙しく、幼い頃からよく手伝っていたらしい。特に料理には自信があるそうだ。手料理、食べてみたい。

 第二に、莉愛にも幼馴染みがいるらしい。爽やかで親しみやすいスポーツマンだが、莉愛曰く頻繁に遊んでるって訳でもないそう。しかし莉愛の幼女時代、ロ莉愛時代を見れるとは羨ましい。そこ代われ。

 第三に、莉愛はやっぱり五色花高校を目指しているらしい。俺はゲームをプレイしたことないから何とも言えないが、やっぱり莉愛はゲームに関わっているんじゃないかと思う。まあこれはただの憶測だし、『恋狂』本編の時間軸とズレてたらその限りでもないけど。

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