第17話 這いずる騎士 その1
那自の体を温めたそのお湯は排水溝へと流れていった。
(気持ちいい……ていうか…いかにも中世的な文化レベルの世界なのにこういう水道とかのインフラは整ってるんだな……)
「ワン!」とブラック・ドッグが吠えた。
「あっ……君も入りたいの?」
と那自は言うと、ブラック・ドッグを抱きかかえて浴槽に入れた。ブラック・ドッグは、浴槽のお湯を尾でバシャバシャと叩き始めた。
「ぷひー」
とブラック・ドッグが気持ちよさそうに言った。那自は、お風呂に浸かりながら、大きく欠伸をした。
「ふぁー……なぁブラック・ドッグ?」「ワン!」
「私は…頭、悪いよな…?バカだ。」
那自は、そう言うと顔をお湯の中に沈めた。
ブラック・ドッグは、その様子を横目で見ていたが何も言わなかった。
「だけど…皆はもっとバカだ」
と那自は言った。
「なぁ……ブラック・ドッグ……今日初めて蘇って人と話して実感したことがある。」
「……」ブラック・ドッグは、那自をじっと見つめて、次の言葉を待っていた。
「生物は【力】を持つ程に知性を失っている。力なき亡者共はみな賢かっただろ?」と那自はブラック・ドッグに問いかけた。
「ワン!」
「非力差はソレを補う知性を生み出すんだ…。魔力も異能も精霊も神すらも人から知性を奪った。なぁ2020年代以前の地球に住む人々は一体…取れ程の賢者だったのだろうね…。」と那自は言った。ブラック・ドッグは何も言わずに主人を見つめていた。
「すまない…君の知らない世界の話だったね…ソレを知るのは…いや顕密には私すらも…。」
と那自は言って、立ち上がった。
「そろそろでようか……あまりにも長いと迷惑がかかるしのぼせる。」と言うと那自は浴槽から出た。そしてブラック・ドッグの身体をタオルで優しく拭くと、いつの間にやら、かごの中に収められていた服を着た。
そして脱衣場を出るとルシミスがいた。
「あの……サイズは大丈夫ですか?」とルシミスが聞いてきた。
「えぇ……ピッタリです」と那自が答えると、ルシミスは少し微笑んで言った。
「それは良かった……」
すると廊下の奥から、エレインがこちらに向かって歩いてきてるのが見えた。
「あら……お早いのね」とエレインが言った。
「エレインさん…」
と那自が言うと、エレインは笑った。
「フフ……少し話しましょうか?」
「はい」と那自が答えると、一同は歩き出した。
一行はリビングに場所を移した。
「あなた…【闇這い】って知らないわよねぇ」
「はい…なんですか?それ……闇這い……?」
「フフフ……」とエレインは笑うと言葉を続けた。
「フフフッあと二時間で完全に日が暮れる。夜になるの。」
「はぁ…。」
「いい…基本的に…勝手にこの屋敷の外には出ないでほしいんだけど…特に夜は絶対、外を出歩いちゃダメよ。」「
なぜですか?」
と那自が言うと、エレインは答えた。
「外に出たら……死ぬからよ。」
那自は驚いた表情で言った。
「死ッ?!何でそんなこと……」
エレインはその質問には答えずただ「フフフッ」とだけ笑った。そして言った。
「ねぇナイン…。貴方って怖がり?」とエレインは言った。
「怖がり……?えぇ…まぁ人並みには……。」と那自が答えると、エレインはニヤッと笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます