第16話 クズとクロ
「銀の食器が弱点の絶滅危惧種の種族か…。」
客室に戻っていた那自はブラック・ドッグを撫でながらそう呟いた。ブラック・ドッグは、那自に撫でられるとあくびをした。
「フフ……くすぐったいよ」
那自は、ブラック・ドッグに微笑むと窓を覗いた。
「まだ暮れないのか日…。それに」
那自は、窓を覗くとエレインの家の前にある大きな木を見つめた。
木の幹からはまるで寄生さるように青白い光を放つ花がいくつも咲いていた。
「あれも……あの光の花も気になる……」
那自がそう呟くと、ブラック・ドッグは主人の服を口で引っ張るようにして引っ張った。
「どうしたの?エサ欲しいの?」
那自がそう言うと、ブラック・ドッグは首を横に振った。そして再び那自の服を口で引っ張った。
「またルシミスがこちらに来ているのか…。 」
那自は、ため息をつくと部屋の扉がノックされた。「どうぞ」と那自が言うと扉が開いた。そしてそこにはルシミスがいた。
ルシミスは、震える声を必死に抑えて言った。
「あの……那自様、入浴の準備が整いました。」
「あ……ありがとうございます……。」那自はルシミスに礼を言うと、立ち上がった。
ルシミスの手に、布が被せられた木製のかごを那自は見つけた。
「その手のものはなんですか?」
ルシミスは、何故かビクッと肩を震わせると震える声で言った。
「これ……ですか?これは夜食の【リペッツ】と紅茶です。エレイン様には内緒で……お召し上がり下さい。」
「え?あ……ありがとうございます……」
(リペッツ…この世界特有の食べ物か…。)
那自がそういうと、ルシミスは怯えたような表情を浮かべていた。
「ルシミスさん……大丈夫ですか?」と那自が言うと、ルシミスはブルブルと体を震わせた。そして口を開いた。
「に…逃げ…ふぐッ?!」
ルシミスが言葉を言い終わる前に、那自は背伸びして、ルシミスの口を手で塞いだ。
「しーっ…それ以上はいけない。今は…なるだけいつもの君がいい…。」
ルシミスは、目を見開くとコクッと頷いた。そして那自の手から解放されると口を開いた。
「わ、わかりました……。」
「じゃあ……案内をお願いしても?」
「はい……ではこちらへ……」とルシミスは言うと、部屋の扉を開いた。そして歩き出した。
那自もブラック・ドッグをひと撫ですると、それについていった。
廊下に出て、階段へと足を運んだ。
「あの…ところで…ボク着替えが…」
「あっ……はい、もちろん用意してますよ」とルシミスが言うと階段を再び降り始めた。そして1階の一室の前で立ち止まった。そしてドアを開けると那自に入るように促した。
「この部屋で入浴してもらいます……では失礼します……」とルシミスが言うとドアを閉めた。
那自は、脱衣場に入ると早速か上の服を脱いだ。
那自の肌は非常にきれいなものだったが、胸部には奇妙な事に禍々しく光を放つ、緑色の十字傷があった。
那自は服を全て巻き終わると、タオルを片手に、異様な広さの浴室に入った。
大理石で作られたような巨大な風呂だった。浴槽には、なみなみとお湯が注がれていた。
那自は、大きく欠伸をすると、複数のシャワーヘッドが付けられた、巨大な蛇口を捻った。そしてシャワーからお湯が出ると頭からそれを浴びた。
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