第13話 躍動蟲 その1

那自が通った後、 階段と、壁には一匹の蝿が止まっていて、ルシミスを 見つめていた。そして蝿は飛び立った。

食堂には既にアリスとエレインがいた。

那自が入ってくると、二人は同時に口を開いた「「遅い。」」

那自は、二人の声の大きさに笑いながら席に座った。そして再び口を開いた。

「ごめんなさい」

アリスとエレインは、ニコッと笑った。

「じゃあ……食べましょう。」

エレインはそういうと、手をパンッ!と叩いた。すると食堂の扉が開き、メイド達が料理を運んで来た。そして那自の前にも料理が並べられた。

「凄いな……」

那自は、その料理の数々に思わず言葉を漏らした。テーブルに並べられたのは……それは見たこともない料理のフルコースだった。


鳥のようだが、なんの肉かはわからないステーキ、そして、色とりどりの野菜の盛り合わせ。

那自は、その料理を見て目を輝かせた。

するとアリスがクスクスと笑った。エレインも笑っていた。

「さぁ……食べましょう」とエレインが言うとアリスも「うん。」と笑顔で答えた。

そして……三人は食事を始めた。那自はナイフで切ったステーキに、フォークを刺して口に運んだ瞬間その美味しさに声を上げた。

「美味しい!」

那自は、その美味しさに思わず頰が緩んだ。

するとエレインは、クスクスと笑った後口を開いた。

「それは良かったわ……ところで……」

エレインは、そう言うと那自の目をジッと見つめた。

「ん?」

「貴方……本当に何者なの? 」エレインは、そういうと那自の目を見つめたまま、食事を続けた。

「それは……わかりません…ボクにも…。」

「記憶喪失だから?」

エレインは、那自の目をジッと見つめたまま、食事を続けた。

「はい……そうです……。」

「ふーん。」エレインは、そう答えるとアリスをチラリと見た後口を開いた。

「…貴方はまだ子供…御両親のことは? わからないの?」「はい…」那自は、そう答えると食事を続けた。

「ふーん…もしかすると、オルレルケアにいるかもね」「オルレルケア?」那自は、そう呟くと食事の手を止めた。そしてエレインの目を見つめたまま続けた。

「それは……どういう?」

エレインは、食事の手を止めて答えた。

「驚いた…オルレルケアも……わからないの? 」「はい……」那自はそういうと再び食事を始めた。

アリスが口を開いた。

「オルレルケア…永遠と頂天の国…。 この地上で唯一、国と称されるほど広大で、領土のある国。この世界に存在する五大国家の中で……最も力を持つ国。魔工学に科学技術に教会書造…ありとあらゆる文化において、遥か高みに君臨する国よ。」


「へぇ……そんな国があったんだ……」


那自は、そう呟くと食事の手を止めた。そして再びエレインの目を見つめたまま続けた。

「地上で唯一? って? まるで地上以外の場所があるような

言い方ですね」


エレインは 食事の手を止めた。そして口を開いた。

「貴方……相当重症ね。まるで、この世界のことを何も知らないみたい」

那自は、エレインにそう聞かれて、「アハハ…」

と困ったように笑いながら言った。

エレインは、その返答に軽くため息をついた。


「まぁ……いいわ……」

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