第11話 螺旋の精霊 その3
「アーハッハッハ! 異世界転生だってさ!! あ〜あ………ふざけんじゃないそんなわけねえだろ…。異世界転生ってのはよう。大抵なんの苦労もせずに力に手に入れて暴力で世界を蹂躙しまくってあと…そういうのできないにしろあれだ…女! 女死ぬほど侍らせてハーレムでも作れるだろ!
ソレがどうだ!今!この状況! これなら地獄で好き勝手してた頃のほうがマシじゃないかよ!! 」
「ハハハ…できるかもしれんぞ…。これから…。」
ベルゼブブは、まだヘラヘラと笑っていた。すると突然、ドアをノックする音が2回響いた。
那自は目を見開いてベルゼブブと顔を見合わせた。ベルゼブブは、立ち上がり先程魔法陣が展開された場所へいき手を振りながら
口を開いた。
「要件はわかったから…オレは帰るぜ! 精々楽しめよ…異世界転生者…。」
そう告げると、ベルゼブブは魔法陣の中に消えていった。そしてもう一度ドアを叩く音がした。
那自はドアのほうを振り返り、言った。
「どうぞ…空いてます。」
するとドアが開き、入ってきたのはアリスだった。
「おや…傷の方は大丈夫なのかい?」
那自は、朗らかに笑いブラック・ドッグを撫でながら言った。
「…………うん。」
アリスは、そう答えると那自に近づいてきた。そして口を開いた。
「…ありがとう……助けてくれて。」
アリスはそういうと、ベッドの横の床に膝をついた。そして俯いた。那自はブラック・ドッグを撫でながら言った。
「……んん?」
那自が不思議そうな顔をしているとアリスは続けて口を開いた。
「助けてくれたこと感謝してる。ほんとうに感謝してる。」
那自は笑いながら返した。
「貧血は?治ったみたいだけど……もう痛くはない?…妙だね…傷は掌にしかないのに貧血だなんて」
アリスは首を横に振った。
「もう大丈夫……本当にありがとう。」
那自は、クスクス笑うとブラック・ドッグの頭を撫でた。
「ところで…?!」
那自が口を開こうとした瞬間突然アリスは那自の服を掴み、頬にキスをした。
「………」
那自は、硬直した。
アリスはその間にそそくさと
立ち上がり、真っ赤な顔で言葉を続けた。
「ありがとう!それと……これからもよろしく!」
そういうとアリスは部屋を出ていった。那自はしばらく呆然としていたが、ブラック・ドッグの頭を撫でて口を開いた。
「ボクぅ…これ…ホントに異世界転生者かも…」
「ワン…」
那自は、ポカンとしながらブラック・ドッグに問いかけた。
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5時間後…
那自は荷物という荷物はないもののそれでも少ない持ち物はきっちりと整理と収納を済ませていた。
ただそんな部屋も…机の上には、1枚の白いハンカチが無造作に置かれていた。
那自は再び呆然とした目で、窓の外の森を眺めていた。
那自が客室に入ったときには既に夕日が差し込んでいたのだが、未だに陽の光が差し込んでいた。
「夜が……来ない……。」那自は、そう呟くとブラック・ドッグが口を開いた。
「ワン」
「ん?」
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