第8話 螺旋の精霊 その1


エレインが指を鳴らすと、食堂に先程のメイドが現れた。そのメイドはお盆を持っていて、その上には紅茶のセットとケーキが乗っていた。


「先程はどうも…アリスの手当て……ありがとうございました。」

那自は、ルシミスにお礼をいった。「いえいえ…

。アリス様は命に別状はございません……。

しかし、衰弱は激しいので、しばらくはここで休んでもらいますが……。問題はその衰弱の原因がわ!からないということです。」


「もしかすると血が足りないのかも…。大量出血によって。」那自がそういうと、ルシミスは「大量出血?」と聞き返し、那自は頷いた。

するとエレインが口を開いた。


「大量出血ね……。でもあまり、血を流しているようには見えなかったけど。」

「ただなんとなくの勘です。 あの顔色だし、彼女を抱きかかえた時、 背中には冷たい汗と、呼吸のリズムは不規則だった。

…もちろんこういった症状は何も出血時のショックだけでに起きるものだけではないから、その…あくまで勘の域を出ないですけど…。」

那自がそういうと、エレインとルシミスは顔を見合わせた。

「そう……。エレイン様……どういたします?」

「そうね……。魔香薬室、の左の棚342番に体内で血液を生成させる、魔香薬があるわ…ソレを飲ませにいって。」「わかりました。」

ルシミスはエレインにそう答えると、まるで霧のよういに消えた。


「すごい……。」那自は、ルシミスがその場から消えたのをみてそう呟いた。

するとエレインはクスクスと笑った。

「さて…聞きたいことが沢山あるんでしょう?」

「ここは一体…何処ですか?アメリカ?それともヨーロッパ?」

那自の質問にエレインは首をかしげた。「アメリカ?ヨーロッパ? 聞いたことないわ。」

「そうですか……。」那自は頭をかくとエレインに質問した。

「じゃあ…ここは一体、なんていう国ですか?」


「そりゃ、もちろん……【オルレルケア】に決まってるじゃない。」

「オルレル……ケア?」那自は、エレインの答えに首を傾げた。

「そうよ。」エレインはそう答えたと、那自は頭を抱えた。

「そんな国……聞いたことがない……。」


那自が

そう呟くと、エレインは眉をひそめた。

「あなた…一体何者なの? 那自…あなた一体何であの森に?」


エレインは那自にそう聞くと、那自はこう答えた。

「わからないんです……。ここに来るまでではなく全ての記憶が曖昧で…自分の名前すら、完全には思い出せないんです。ただ…乗っていた船が嵐で転覆したこと

は覚えてます……。そのあと自分がなんであそこに倒れていたのか、それすらわからない……。」


那自は真っ赤なウソを平然とついた。だがソレは全てが嘘であるものの、真実よりも手っ取り早く正確に自らの状況をエレインに説明することが出来ていた。


エレインは那自のウソを信じた。

「そう……記憶喪失ってやつね……。

名前も思い出せず、記憶もないなんて…」

エレインはそういうと、再び那自に顔を近づけて、鼻をひくひくさせて匂いを嗅いだ。

「フォルビナの花の香。。貴方……。まるで【転生者】ね……。」

「転生……者?」

那自は、そう呟いて首を傾げた。エレインは口を開いた。

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