第7話 ハズレの揺り籠
「ワン!」
しばらく歩くと、甘い匂いのする洋館にたどり着いた。
洋館の外観は最早城と呼べるほど大きく全体的に白と茶色の色味で形は極めて奇妙で、まるで粉っぽいレンガを積み上げたような外見だった。
「ようこそ……私の家へ」エレインはそういって玄関を開けると那自とブラック・ドッグを招き入れた。
そして中に入ると、玄関が突然自動的に閉まり、外の景色は見えなくなった。
(なるほどね…。)
那自はそう心の中で呟くとエレインに話かけた。
「すみません…か…彼女の事を…」
「わかってるわ。 今、メイドがやってくるから…。彼女に任せて」
「助かるよ」
那自はそういうと、エレインにアリスの事を頼み、メイドが来るのを待った。
数分後。
扉がガチャリと開く音がして、見るとメイド服を着た女性が現れた。
丸渕のメガネをかけていて、長い白髪で、人形のような白い肌をした美しい女性だ。
そのメイドは那自とブラック・ドッグを見ると口を開いた。
「おかえりなさいませエレイン様……あら?その方達は?」
「ただいまルシミス。この2人は客人よ。」
「ナインと申します。 こちらはアリス…。 彼女は酷い重体なんです。 助けてください。」
那自はそういうとナインと名乗るメイドに頭を下げた。
「そんなにかしこまらないで……。アリス様ですか? 承知しました。彼女の事はお任せください」
メイドはそういうとアリスを抱えて、奥の方へ行ってしまった。
那自は一息つくとエレインに話しかけた。
「エレインさん。本当に助かりました。 二人してあの恐ろしい魔物に襲われたりしてもうダメかと…。」
那自はその体を身震いさせた。
「あら?サイクロプスのこと?私が来たときには既に死んでたわ。 全身から針が出ていて…。 あんな異質でかつ驚異的な魔法は見たこともない…。 私はてっきり貴方がやったとばかり思っていたけど。」
「いや……ボクにそんなこと…。 だいたい魔法なんて…。それにあのときは逃げるのに必死で何が何やら。」
那自がそういうとエレインは、那自に顔を近づけた。
「そう……。貴方……もしかして記憶がないの?」
「はい……ここが何処かも。」那自はそう答えた。
エレインは、「ふっ」と笑うと那自に微笑んだ。そして、また窓の外を眺めた。
「私はね……。
『魔女』なんて名乗ってるけど、本当はただの『魔導士』なの。
だから……貴方の力になれるかもしれないわ」
「本当ですか!?」那自がそう聞くとエレインは頷いた。
「ええ……。しばらくは家にいるといいわ…。色々聞きたいことがあるんでしょ?」
「ありがとうございます! エレインさん!」
那自は、エレインに頭を下げた。
「気にしないで……。さぁ……お茶でも飲みましょう」
エレインはそういうと、那自を案内した。
「はい! ありがとうございます!」那自はそういうと、エレインについていった。
那自がエレインに案内されて入った部屋は、大きな食堂だった。
「どうぞ……座って」
そう言われた那自は、椅子に腰掛けた。
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