第6話 ゲルニカその4
「ふぃ~危なかったな……。ブラック・ドッグ!新手の気配は?」那自がブラック・ドッグに呼びかけると、ブラック・ドッグは首を振った。
「ワン!」
すると那自の腕の中にいた少女が口を開いた。
「あ……あの……あ……」少女はなにかを言おうとしているが、衰弱と恐怖で声がうまく出ない。
那自は少女を抱えたまま問いた。
「君……名前は?」
少女は少し間を開けて答えた。
「私は……アリス・シンセシス・フィフティ」
「アリスか…英語圏の名前だね…それにその金髪…。顔立ちからしても君はヨーロッパ、もしくは北アメリカの生まれだとおもうが……。日本語が驚異的なほど流暢だ…まるで日本語しか喋れないかのように。」
「にほん?あめりか?なにそれ…。一体…なんのことを…。」
アリスはそう言って気を失った。
「冗談だろおい…。アメリカとか知らないってのは物知らないってレベルじゃすまないぞ……。
じゃあ……彼女は宇宙人か……?」
那自は、気絶した少女を抱き抱えながら冗談を呟いた。
「ワン!」
ブラック・ドッグが相槌を打つように吠えると、那自は苦笑しながらブラック・ドッグに伝えた。
「そうだな……まずはこの少女を介抱しよう。話はそれからだ……。ブラック・ドッグ…この魔物の血で鼻がやられて厳しいかもしれんが…なんとか水の匂いを嗅ぎつけてくれないか? きれいな水があればこの娘の手当と、介抱もでき…。」
「その必要はないわ!!」
那自がブラック・ドッグにそう伝えようとした時、突然背後から背の高い、トンガリ帽子を被ったの女性が話しかけてきた。
那自は驚きながらその女性の方を見た。
その女性はとても美しく、まるで人形のような顔立ちで、スタイルも抜群の美しい女性だった。しかし服装はどこか奇妙で、灰色のマントを羽織っていた。
那自はその女性よりも自らの足元を見て口を開いた。
「たっ…助けてください…ぼ…ぼく…。」
那自は女性の顔を覗き頬に青痣があることに気づいた。急におどおどと怯えた少年の様な態度を取った。
その女性は不敵に笑って答えた。
「お腹が空いてるでしょう? ついてきなさい……。ご馳走してあげる……。」
そういうと女性はあるき出した。
「あ…あっありがとうございます。 では遠慮なく」
「ワン!ワン!!」那自はよそよそしく女性にお礼をいうとブラック・ドッグは吠え出した。
「…わかってるよブラック・ドッグ…対策は打ってある。 だがここは彼女についていこう。 どう転んでもリスクは折り込める程度だ」那自はブラック・ドッグにそう言うと、アリスを抱き抱えたままその女性についていった。
「ボクの名前は……那自。君は?」
那自がそう聞くと、女性は立ち止まり振り返った。
そして那自を見て、不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「私の名前は……エレイン・フィーニ。
そうね……この世界では、『魔女』と名乗らせてもらうわ」
「魔女……か……。」
「そうよ」
エレインと名乗った女性はそう答えた。そして再び歩き出した。
那自はエレインの後ろを歩きながら、ブラック・ドッグに話しかけた。
「やれやれ……まるでファンタジー小説のようだな。」
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