第5話 ゲルニカその3
那自が少女にそう囁くと、少女は震えながらもギュッとしがみついた。
そして那自は、少女を片手で抱き抱えたまま、サイクロプスに話しかけた。
「悪いな……待たせて」
するとサイクロプスは大槍の穂先を那自に向けたままその場で静止した。 喋らずともわかる、サイクロプスは「少女を抱えたままで俺と一騎打ちするつもりか?」と那自に疑問と、挑発の意味を込めて穂先を向けているのだろう。
那自はそれが理解ているため震える少女の手をもう一度握って口を開いた。
「あぁ気にするな。ボクはこれで構わない…さぁ始めようか」
そういうと那自は少女を地面に下ろし、ブラック・ドッグに合図をした。
「ワン!!」
ブラック・ドッグがそう吠えると、サイクロプスは「グオオ!!」っと叫び、大槍を振りかぶりながら、那自に向かって突進してきた。
「さて…私のブランクは…どう響く?」
那自はそういうと少女を再び抱き抱えてサイクロプスから距離を取った。
そして那自はサイクロプスの突進をギリギリまで引き付けてから、少女を抱いていない方の片手を地面に着き、もう片方の手で地面を掴み体を横に傾けて攻撃をかわした。
「その図体でよく動く…まぁソレが魔の物と動物との差だがな。」サイクロプスはその巨大に合わず凄まじいスピードを持つ見せたが、それでも那自は難なくかわした。
そして地面に着地しサイクロプスの懐をあっけなく取った。
「さて……こっちの異能は蘇生からは初運転だな」
那自はそういうと少女を抱き抱えていない方の手をサイクロプスの腹部に当てた。そしてそのまま、掌を上にして広げた。
「【ダンス・マカブル】」
那自はそう呟いた。 ブラック・ドッグを顕現させるときのように、しかし今度は一瞬稲妻の様なものが、
掌から発せられただけで、特に何かが起きるわけもなかった。
「何だと!!??」
那自は驚愕した。
「なぜだ!? 確かに今異能が発動したはずだ……。まさか…。 ッ!!」
那自がそう呟いた瞬間。サイクロプスが大槍の持ち手を棍棒のように扱い、那自にぶち当てた。 那自はなんとか反応し、少女にその攻撃が当たらないように、身を挺して少女を守った。
「うぉお?!」那自は吹っ飛ばされ、地面を転がる。その際少女にダメージがいかないように、両腕で抱き抱えていた。
「やってくれるじゃないか……。」
那自がそう言いながら立ち上がるとサイクロプスは、ニヤリと笑ったような顔をしたように見えた。
両者が再び向き合うと、サイクロプスは大槍の持ち手を地面に引きずらせながら那自に近づいた。
適切な間合いまで接近した後サイクロプスは立ち止まり大槍を振りかぶった。そして思い切り大槍を振り下ろした。
「【ダンスオブデス】」
しかし那自がそう呟いたと同時にサイクロプスの動きはとまる。
サイクロプスの懐からは銀の針のようなものが無数に現れ、その紐は瞬く間にサイクロプスの全身を貫きながら、巨大な剣山にまでになっていく。
「グオオォオ!?」
サイクロプスはもがき苦しむように体を動かしていたが、やがて体に銀の針が刺さったままピクリとも動かなくなった。
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