第3話 ゲルニカ その1

「よし……【ブラック・ドッグ】。この方向を目指そう。」そして、那自と一匹の猟犬は森の中を歩いて行った。


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「全く……方角も分からなければ地図もない……」

あれから、那自はひたすらブラック・ドッグに血で作り出した針を頼りに方角に指示しながら歩いていたが、那自はそろそろ限界だった。

「途方もない気分だがわかったことがある。 斜面がない…となるとここは日本じゃない。 どういうことだ。なんで皆ボクを海外で埋葬した。」那自がブツブツと独り言を言っていると、ブラック・ドッグが那自のズボンの裾を咥えて引っ張った。


「なんだ……どうした?」


 那自がブラック・ドッグにそう尋ねるとブラック・ドッグは「キャイン! キャイン!」と

吠えた。


「甘い匂い…か。 この先からするんだな…。」


那自はブラック・ドッグの鼻を頼りに森の中を歩いて行くと、やがてブラック・ドッグは、地面に落ちているあるものに気づき、那自の裾を引っ張った。

「これは……パン屑か…」それは小さなパンの屑だった。


那自はブラック・ドッグに目配せすると、ブラック・ドッグはパン屑の匂いを嗅いだ。それを見た那自はニヤリと笑った。


「どうだ?ブラック・ドッグ」


那自が言うと、ブラック・ドッグは「キャン!」と鳴き、那自に吠えた。


「なるほど…バターの匂いか…となるとこのパンは最近ここで落ちたか……いや…」


 那自がそう呟くと、那自はそのパン屑を拾い上げた。


「…潰れているな…人の指で潰れている…自然に落ちたものではない…。 

誰かが意図的に落とした…それも正方形型にわざわざ千切られているところを見ると…落とし主は神経質かつ几帳面な性格だな……。」


 すると、那自は地面に視線を落とし、周囲を探り、草むらの方へ目をやった。 


 草むらには再びパン屑が、それも今度は一つではなく、一定間隔で点々と落ちていた。


(来た道を戻るための目印かと思ったが…この間隔だとそうではないな…第一、目印にするなら…パン屑にするはずはない。パン屑ならその場に残りにくいからな……

ではこのパン屑の落とし主は何を意図している……? 道しるべか? それにしては……あからさまな気がする…まるで餓えているものを誘っている罠のように…。)

那自は暫く考えると、そのパンの隣に小さな足跡が、点々と続いていることに気づいた。

(このサイズ…子供の足跡だな……。ボクより小さい年齢の男の子のだとも思ったが、つま先が内側を向いてるのは、女性に表れやすい歩き方の癖だ…となるとこの足跡はボクと同い年つまり十歳前後の少女か……)

那自は地面にしゃがみ、足跡を見比べながら呟いた。

「そうか……つまりこの少女は誰かに追われているな……。」

そして立ち上がりブラック・ドッグに呼びかけた。


「行くぞ……ブラック・ドッグ……。

オレ達も追われる身になるかも知れんが、この少女の足跡を追うぞ……。」


 そして那自はブラック・ドッグと共にそのパン屑と少女の足跡を辿った。

そして数分も歩かないうちに今度は高い声の少女の悲鳴が聞こえて来た。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!! 」

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