こんなにも醜く見える

「では、元大地の女神ガイアを今から裁きにかける」


「ねえ。あの閻魔の右側にいる神は?」

「あれは神じゃないよ。閻魔にとって僕達から見た天使みたいな存在。側近だよ」

「ああね。でもなんか…強制されてるみたいな感じ?」

「…見えるのかい?あれは服従の鎖と言って閻魔に昔裁判中に襲い掛かろうとした罪人につけて強制的に働かせる道具さ」

「うへぇ、肉体的には健康なんだろうけどやつれてるように見える」


恐らく雑用とか色々任されてるんだろうなぁ実際各席に資料とお茶を置いてたのあの人だったし。


「ええ。まず事実確認だ。貴殿は昨夜、四季統 秋桜の家に強引に侵入し従者セリヌンティウスの殺害。四季統 秋春の殺害未遂を行った。これに間違いはあるか?」

「違う!あいつが!あいつが悪いの!私の悪口ばっか言って私を貶めたの!」

「例えそうであっても互いの了承の無い戦闘は原則として禁じられている、貴殿は自分のやったこと自体は否定せんのだな」

「違う!私は!私は、なんにも悪くないの!」

「違うばかり言っていても埒が明かないぞ。証拠がないのだから」

「昨日会議に来たみんなならわかるでしょ!私は悪くないの!」

「では証言してもらおうか。3名に来てもらった」


そう言って近くに3つ証言台が現れそこに3名の最高神。左から順にオーディン、ラー、天照というメンツだった。


「まずオーディン。証言してください」

「はい。ボクは会議にいましたが四季統が彼女を貶める様な行動をとってはいませんでした」

「そうか、次。ラー、どうぞ」

「そうだな。私もオーディンとおおまか同意見だ。追加として奴は私達最高神にその性格から嫌われてもいた」

「では最後に天照。証言を」

「わかりました。私は彼、四季統さんが完全に白とは思ってはいません。ですが今回はガイアさんが全面的には悪いと思います」

「なるほど。なぜ思いますなのかは置いといて証言してくれた3名全員が貴殿が悪であると主張している。もうこれ以上は必要ない。貴殿は何か望む死因はあるか?」


その言葉にガイアは先ほどまでの狂ったような怒りの表情を変え顔を下に向けて最後の自分が望む死因を口にする。


「……に…ぬ」

「なんと?」

「四季統を殺して一緒に死ぬ」


俺は正直驚いた。まだ俺を殺すことをあきらめていない。半分呆れ半分感心した。だが、死ぬわけにはいかない。


「俺に執行させてくれ」


俺はガイアの後ろに立ってうなじに斧を当てる。この斧は先ほど事実確認をしている間に執行人から借りたものだ。


「分かりました。どうぞ」


案外あっさりと了承してくれたな。

今、俺の視界はとてもスローだ。これは神の力を使っていない。人が死ぬ瞬間にはそれがゆっくりに見えてしまうそれだろうか?だが俺の腕は止まらずこちらを振り向こうしているガイアを躊躇なく肩から刃を入れ腰に向かって振り下ろしている。


「サラダバー」


昨日までガイアだった女をで殺した。確かに俺の、この俺の手なのに。なんでだろうか、悲しみや苦痛、体調の不良などが一切ない。それどころか今の俺にはなんだかスッキリしたような感じもするのだ。邪魔なものが消えてスッとするような。


「俺、本当に人間じゃないんだな」


その小言を聞こえたものはいないだろう。だが俺はつい反射的にそんな言葉を吐いてしまった。


……いや悲しくならないのは逆にいいことなのでは?だってその分ゲームに集中できるし。


「じゃあ俺帰るわ」

「はい、では」


そう言ってその場を、あえて歩いて帰るとするか。ここで瞬間移動してら風情もクソもなくなるしな。特に左の方、見たくもなかった。誰だっけ、紙の名前は憶えづらいな。そうだ、テミスだ。あいつは表には何も見えなかった。でも裏側で俺に対する憎しみを抱いていた。

それが動機として俺を殺すことはないと、断言できる。だが、あんなものをみちまったししばらく、いやもういっそのこと一生会いたくないな。


「待ってください」

「はて?いったい何用で?テミスさん」


秒じゃねぇか。嘘だろ?まさかのここで仇討ちか?やっぱりさっき言ったの前言撤回でいいかな?だってもう裁判所出ちゃったから神他にいないもんどうしよう!


「そのですね…墓をあなたに造って欲しいのです」

「はあ?墓?え、待って墓造るなら他にヘパイストスとかそれこそ岩操ったりするやつに頼めばいいじゃん」

「あなただから頼みたいのです。あの人を直接殺めたあなただからこそ」

「一応聞こうか、真意はなんだ?なんでさっきあんなに俺に対して憎しみを抱いていながらそんな俺にあいつの墓造りを頼む?」

「人の感情に敏感なのですね。確かに先ほど私はあなたを憎みました。ですが同時に尊敬も抱いたのです」

「尊敬?」

「あなたはあの人を斬る時に斧の刃と本人に麻酔をかけていましたよね。しかもかなり強力なものを」


俺が感じとれる感情はマイナスなもののみだ。まさか尊敬なんてものも抱かれていたとは。そしてバレていないと思っていたけど麻酔の事バレてたのか。となると他にも最高神全員とか気づいてそうだな。


「そんな優しいあなたならきっと思いを込めた墓を作ってくれると思ったので」

「ええと。すまん。俺西洋式の墓見たことないんよね」

「日本式でもいいですよ」

「すぅ(逃げられないことを察する)分かりました。後日作成の場所をお伝えください」


ありゃダメだ。強引に抜けようとしてもついてくる。瞬間移動してもうちまで絶対来る。多分現状はバレてないけど特定される。

故に私は諦めた。

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