神憑きの少年の非日常
「ふう。くっっっっっっっそ疲れたぁ」
「苛立ってんなぁ。次社会だよ」
「いやだなぁ。地理苦手なんだよなぁ。せめて歴史ならまだできなくもないのに」
俺たちは休み時間。そんな会話をして時間をつぶしていた。休み時間は基本的に友達と一緒に友達の机を取り囲んでる。そしてその机の持ち主にだるがらみ。まあいつもの光景だ。
社会が終わった。続く3時間目の理科が終わり4時間目の国語も終了。昼食の時間となる。我らが学校は昼食中に席の移動とかできない。できたらいいのに。
「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
昼食の時間が終わり昼休みの時間となった。俺は次の時間の授業の用意をしてあいつらとやはり他愛のない会話をしている。予鈴もなりみんなが席につき始めた。なんの変哲もない日常風景だった。だがそんな日常は一瞬で崩れ去った。遠くから悲鳴が聞こえた。ふざけていて出たとかそんなものじゃない。もっと恐ろしいものを見た時の悲鳴だ。
みんなが廊下に出て外を確認する。そこには5時間目で体育をしようとしている1年の男子たちが成人者たちと思われる集団に襲われている風景がそこにはあった。
「なんだよ。これ」
「あれは...神憑き?」
「は? 全員神憑きなのかよ。これ」
「死にたくないよ」
各々意見が出てきた。絶望するもの。助けを乞うもの。今すぐに窓から飛び出て1年を助けに行こうとしている者。大きく分けてこの3種類だろう。
神憑きであろう一人が炎を身の回りに纏っておりその炎を男は四方に飛ばした。1年の傍まで迫っていた。知っている1年だった。そこで俺は神の力を使うことを決意した。
「代償、左腕! 要求、グラウンドにいる1年生全員を各々の家に帰すこと!」
「え」「お前なに言って」
その瞬間俺の左腕ははじけて消えた。強烈な痛みが俺を襲った。だがグラウンドにいた1年生共は全員いなくなっていた。痛い痛い痛い痛い痛い。こんなのは初めてだ。まあ当たり前か。普通に生きていればまず一瞬で左腕が消えることなんてない。それは恐らく戦地でもないだろう。
「お前。神憑きだったのか?」
「実は、な。俺は体を代償に願いをかなえれるんだ」
「マジかよ。というよりお前この学校にいるってことは政府に登録してない?」
「もちのろんです!☆」
「嘘でしょ」
そんな言葉を無視して俺は窓越しに見える神憑きの集団に目をやる。あれは恐らく集団占拠か何かなんだろう。神憑きはたいてい何かいい役職についていたりする場合が多い。それこそさっきいた炎の奴なんかは色々な場面で活躍できただろう。なのになぜこいつらは集団占拠なんかをおこしているんだ?
「お前ら。急いで逃げよう。もしくは...いやにげよう!」
「分かってる。というよりもしくはの方なにが言いたかったんだ?」
みんなで走って外に出ようとしていると紅音が並走してきてそう聞いてきた。
「いや。隠れるだなんて言おうと思ったけど神憑きの中に敵の居場所が分かる神憑きがいた場合ダメだなって思って」
「それ言うなら高速移動できる神憑きとかいるんじゃないのか?」
「そっちの方がまだ対処できるだろ。少数なんだから」
「それもそうだな」
「というよりみんな純応力高いね。周りに神憑きがいたって言うのに」
「いや今それどころじゃないから」
「それなぁ」
外に出て校門が見えた時。一番先頭の人が外に出ようとしていた。その時だった。戦闘の人が見えない壁にぶつかって外に出られなかったのだ。
「見えない壁を作ることができるって頭わりぃな」
「お前ならこいつら全員逃がせるんじゃないか?」
「いや1000人以上の人間を逃がせるほどの代償なんてない」
「くそが! 如何逃げればいいんだよ!」
「戦う。か?」
「非現実的すぎる。あいつらのなかには攻撃に転用できる力もあるんだぞ」
周りがうるさくなった時。銃声が聞こえた。俺は即座にその方向へ振り向いた。そこには先ほどいた集団の中の一人であった男が銃を構えながらニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべて立っていた。
「大人しく捕まってくれよなぁ?」
「代償、左目。要求、今視界の中にいる銃を持った男を沖縄に飛ばすこと」
左目が見えなくなり痛みを感じた時には男はいなくなっていた。
「おい! 大丈夫か!」
近くから声が聞こえた。そちらを見ると腹から血を出して倒れている凛がいた。俺は走って近づいた。周りにいたやつらの事を押しのけて奴の傍に駆け寄った。
「代償左足。要求俺から視界の中にいる対象相楽 凛の傷の完全修復。及び足りない血液の補充」
俺は歩けなくなった。でも凛が何事もなかったかのように起きた。倒れた俺を見た瞬間に困惑の顔をしてたけどこいつが生きてんならいいや。まだ生きてる。生きているならどんな傷でも軽傷だ。
「幸春! おい。どうしたんだよ。なあ! てめぇの左半身はどこに消えちまったんだよ!」
「すまん。もうゲーム出来ねぇや。左腕なくしちまった。そして今。動けなくなってやっと決意が固まった。ありがとうな今まで」
「何言って「代償、俺のすべて。要求、俺から半径1㎞以内の神憑きの排除」っ! やめろ! たの――
その声は途切れて聞こえなくなった。代償を払うまで少しラグがあった気がする。気のせいだろうか。それとも大人数の排除だから少してこずるのだろうか。まあそんなのはもう俺には関係ないな。俺は、死んじまったんだから。
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