このひと夏への哀悼

 あんなにやかましかった大合唱が今や随分遠くなった。街路樹の根元にひっくり返った蝉が動かない様子を見て、ひとつの季節の終わりを感じた。そうは言っても未だ気温も高く、残暑と言うには夏の勢いはあまりにも強い。この国だけでも一体いくつの命がこの季節とともにその命を終えたのだろう。夏の間にしか咲けない命もあっただろう、この灼熱に削り取られた命もあっただろう。それでも、わたしの足は次の季節に踏み出していく。

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