いのちの残り香

 わたしの膝の上に彼女が陣取る。先ほどまで日向ぼっこをしていたから、その柔い体はいつもより温かい。ゴロゴロと喉を鳴らす上機嫌な彼女は、わたしの顔を見上げ、ゆっくりと瞬きした。これは親愛の証なのだと、以前見た気がする。伝わるかはわからないが、わたしもゆっくりと瞬きを返した。すると、彼女はまるで微笑むかのように目を細める。そして、そのまま眠りについた。彼女はもう動かない。お日さまの香りだけが残った。

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