第3話 夏だ!海だ!祟り神だ!!?

燦然と煌めく太陽に照らされ、額から大粒の汗が滝の如く流れる。


気温は38.5℃……万全に暑さ対策をしていても、この温度では形無しだろう。


しかし人間よりももっと暑さを感じる生物がいる。


そう――


「暑い……何故我をこんな浜辺に案内あないするのだ」


「え?一緒に来たかったから……ダメ?」


「ダメだ……だが、まぁ美味しい物で手を打とう」


「ノッた~」


季節は夏の8月、お盆前の浜辺には多くの人が来ており、海の家や数々の屋台が道路上に犇めいていた。


その中でもコハナちゃんが目についたのは……


「おい美海、あのかき氷とは何だ?」


「氷を細かく削った、シロップをかけた氷菓のことだよ」


「ほぅ~旨そうではないか~!!」


「おい店主」


「しゃっ喋った!!?」


「このブルー?ハワイ?を1つくれ」


「あっ私はマンゴーで」


「へっへい!!」

――――

―――――――

――――――――――

「う~ん旨い、何味と言ったかな?」


「ブルーハワイだよ、こっちのマンゴーも美味しい!」


シートとパラソルを用意して、かき氷を食べていた2人。


すると背後から男性に声を掛けられ振り向くと、それは会社の後輩であった。


彼は今日出勤日だった筈だが、何と仮病を使ってまで海に泳ぎに来ていた。


「あなた仕事に行きなさいよ!」


「えぇ~別にいいじゃないッスか、俺ちゃんと働いてますよ?じゃ、俺ダチ待たせてるんで」


「アイツ~~ッ!!」


「……」


2人のやり取りを横目で見ていたコハナちゃんは、後輩が行ったのを確認し、目を瞑りながらかき氷を頬張る……すると――


「大丈夫ですか!?」


少し行った向こうで誰かが倒れており、それを見た人が慌てて救急車を呼んでいた。


倒れたのはなんと後輩で、口から泡を吹いているのが確認出来る。


「ウソ……」


「調子にのった罰じゃな」


「え……まさかコハナちゃんが!?」


「お前、アイツに対して死んでほしいって思ったろ?」


「まさか死んだの!?」


するとコハナちゃんは最後の一口を食べた後、少し間をおいた後に、美海の顔を見つめていじめっ子のような笑顔を浮かべる。


「御天道様が許してくれないってよ」


「御天道様?」


この時は言葉の意味が分からず、コハナちゃんがやったのだと思っていた美海だったが、それから少しして後輩が会社に復帰し、熱中症で倒れていたことを知ったのだった。


「……」


今日もコハナちゃんは窓辺から燦然と煌めく太陽を見つめる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る