第五畜 悪人博物館(ようやく世界観説明)
目覚めるとそこは牢獄だった。前科三犯の起床を出迎えるに相応しい寒々しさだった。
「あー……起きましたか」
そして横にはもっと心の寒々しい女がいた。
「……。あー、もうちょっと眠りますか、波多良さん?」
女が笑顔で拳を振り上げてきたので、全力でノーサンキューの構えを取る。
心寒き女もといナローデは、笑顔と怒りを引っ込め、腰に手を当てた。説教面だ。
「なんか魔力切れで倒れただけだから、そのうち目覚めるだろうって言われましたが……本当に大丈夫ですか? 身体なんともないですか?」
社畜体操第一で体のあちこちを動かしてみるが、特にどこにも違和感は感じないようだ。
「なんですか今の体操……。まあそれよりも。波多良さん――正座」
寝台ではなく、ぺしぺしと傍らの石床を叩くナローデ。……えっ……?
「ほう。正座する気などないと。それじゃあしょうがありませんね、スキル【編集――」
「あー! わかったわかった!」
正直状況がよく飲み込めないが、とりあえず寝台から転がり落ち正座を決める俺。
「けっこう。――わたくしが何を言いたいか。もうおわかりですね? 波多良さん」
「ええと……主人公ムーブの件でしょうか? あれは何ていうか、そう、不可抗力で」
「わたくしは明確に言ったはずです。――主人公ムーブを、して、と」
あ。なんかこう、ヘリからピンクスーツの人が降りてきたようなヤバさを感じるぞ。
「奇行に走れ、ではありません。前科三犯決めろ、でも。同じように聞こえましたか?」
ああこれ答え間違えると金色万年筆でめった刺しにされるやつだ。作家だし持ってそう。
「――すいませんでしたぁ!」
俺の回答は土下座一択だった。床石で打ち付けた額も足も痛いが、牢獄密室猟奇殺人をキメられるよりはよほどマシである。何せそもそも逃げ場がない。
「まあ、幸いにして――まだ最悪な状況というワケじゃありません」
今度は部下を刺殺してその返り血を浴びたままハグや記念写真撮影を求めてくるようなヤバみを感じる。ていうかこの独裁王ムーブいつまで続けるんだこの人。
「さて――波多良さん」
ナローデは鉄格子の向こうを振り仰いだ。高窓より覗く空はもう夜明け色をしていて、他の牢にも人の気配ひとつしない。看守も外に居るものか、牢獄は静まり返っている。
「やっと落ち着いて話せる状況になりましたね。
ようやく……ようやく。この異世界についての説明ができます。
ここまで来るのに――はたして。原稿用紙、何枚かかったと思います?」
目の前に居るのは金髪美女メイドなのに、二人っきりで向けてくる笑顔がなぜか怖い。
「ええと……五十枚くらいですかね? まあ、巻き込まれ系としては許容し得る範疇では」
「――七十五枚です」
ナローデは今にも編集会議を始めそうな目だ。俺は口をつぐみ、謹聴の姿勢を取った。
「よろしい。やっとまともに異世界転生ものを始められる気がします……」
溜息交じりにそう告げると、ナローデはスカートのポケットから手紙を取り出した。
「まずはその身体の、設定についての説明から始めたいんですが……波多良さんが持っていたこの手紙。とりあえず、読んでいただけますか?」
俺がひたすら大量に複製しそして戦いで燃やし尽くしたそれは。たぶん恐らく本来は、物語の導入部分、転生者に世界背景をキャッチーに説明するためのツールとして用意されたものだったのだろう。バトルに使用される想定などされていなかったに違いない。
「……。」
ナローデの視線が痛い。俺は封を破り(難燃紙で無駄に破りにくかった)、読み始めた。
ナロンベルク駐屯竜騎士第六連隊 大尉フリードリヒ・フォン・ヴェセニヒ騎士爵様
騎士爵様の軍隊へ奉職を希望する若者を一名、ここに送ります。
世に隠され育てられたこの若者の洗礼名はケスパー。姓はハタラーです。
若者の父はすでにこの世に居ませんが閣下同様、かつて騎兵として名を馳せました。
父と同じ騎兵として使って頂けましたならば幸いです。
もしも騎士爵様の手に余るようであれば、殺して頂いて構いません。
家族と同じ道を歩むも、家族の許へ往くも、この若者は喜んで受け入れるでしょう。
「何この手紙……」
読み終えて、俺は呆然と手紙を閉じた。そりゃあ、皆が隠し子とか呼んでくるわけだよ。
ていうかこんな手紙大量にばら撒いてたのか俺は。そりゃあ、ちょっと捻ったサーカス一座の公演ビラ撒きと思われるわけだよ。……うん? そうか? あの発想力凄くない?
「俺――というかこの身体は、ずっと幽閉されて育てられた、って設定なんですか?」
問いかけにうなずくナローデは、そういえば貴族の侍女みたいな外見にも見える。
「そうです。そしてわたくしは、孤児として拾われ、素性の一切を教えられぬままずっと若様のお世話を命ぜられてきたお付きメイド……という設定です」
ナローデにも設定があるのか。そういえばこのなろう作家も自分の身体じゃないんだな。
「氏素性の知れぬ二人が、祭りの終わったばかりの広場へ現れた……。
なるほど――そういう導入だったんですね」
ちょっとミステリーっぽくて正直好みだった。話の掴みとしても悪くないのではないか。
「ええ。――誰かさんの手紙量産大暴走でその導入、滅茶苦茶になりましたけどね」
台無しにしたのは俺だった。
「……で? そこからどう展開する予定だったんですか?」
壊れた予定の話をしてもむなしいですけどね、とナローデは煤けた天井を仰ぐ。
「警吏に保護され、身元を調べられた主人公は――氏素性など何ひとつ知らされぬまま、長年の幽閉生活から突然に開放されたという、自身の奇妙な身の上を知ることになります」
含みを持たせるように、沈黙するナローデ。なるほど。後の展開は主人公の行動次第か。
「まあ――誰かさんが警吏に歯向かった上に軍とも敵対したんで。全ルート潰れましたが」
これまた台無しにしたのは俺だった。
「えっ……? じゃあ、これからどうするんですか……?」
「――それ聞きたいのはわたくしの方ですよ」
どうするんですか波多良さん、とナローデが責めるが、俺はある事に思い至っていた。
「うーん……こういう話、どっかで聞いたなあ……確か……」
「え?」
ナローデを放って、俺は牢屋の虚空へ呼び掛ける。
「えっと神様。神様ーちょっとすいません、急なんですけどウィキ見せてくれませんか?」
『呼びましたか神の子よ。あなたはいつも唐突ですね。……ウィキ見たいのは何故ですか』
ウィキ?と首を傾げるナローデ。律儀に応じる神様だが、まあ理由くらい訊ねてくるか。
「いやこの肉体というか主人公の設定、どこかで見たなあって。ウィキで見た気がして」
『設定とか、そこは普通に異世界転生させたわたしへ聞けばいいんじゃないんですか』
「いやそこでネタバレされちゃあ面白くないですよ。自力で調べるから面白いんですよ」
『……。わかりました、異世界ウィンドウに表示してあげましょう』
空中に浮かんだ画面表示に、現世のインターネットブラウザと、ウィキペディアが表示される。便利だ。言ってみるもんだな。
「……。」
ナローデの視線が突き刺さる。まあ異世界まで来てウィキ見たがる奴はいないか。
「なんだっけなあ、確か……」
中近世。すでに時代遅れながら孤剣、立身し西欧を征服席捲した稀代の英雄。
空中に浮かんだホログラムキーボードを叩き、語句を入力して検索をかける。
「また、なんていうキーワードで検索かけてるんですか……」
横から覗くナローデが半眼で突っ込みをいれた。この画面はナローデにも見えるらしい。
【ナポレオンの隠し子】と入力しッターンとエンターキーを押すと、検索候補が列記されるようなこともなく、どんぴしゃで目当てのウィキ項目が表示された。
〈カスパー・ハウザー〉。カテゴリは野生児である。野生児て。
ナポレオンの隠し子で検索して野生児がヒットするというギャップのデカさが面白くてなんとなく覚えていた。もちろん、隠し子というのはただの噂に過ぎない。認知はおろか、後世のDNA鑑定で同定などもされていない。カスパー・ハウザーとは、ドイツの田舎町に突然現れた、長期間幽閉されていた痕跡を有す身元不明の男児、ただそれだけである。当人は何も知らぬ上、人々の前に現れてわずか三年ほどで世を去ったため、謎は謎のままとなった。わずかに語られた幽閉生活は背後に安定した経済力を感じさせたため、カスパーは貴種の落胤であると噂する者も居たし、実際に利用しようと接近する貴族も現れた。しかし本人は貴種の常識はおろか人並みの教育も身に付かぬまま、神の存在さえ理解できずに死んでいったと伝わる。歴史が物語る通り、血統は教育にまさるものではないのだ。
そのカスパー・ハウザーの立ち位置が、転生者の転生先だったとしたらどうだろう。
俺はこれらの史実を、異世界転生ものの舞台と仮定し、考えてみる。
「あー。なるほど。異世界転生者だったら、いきなり人前に現れた野生児に乗り移ったとしても、野生児だから奇行に走るんだな、で片付けられるしみんな納得するでしょうねえ」
一人ニマニマする俺を、ナローデが気味悪そうに見ている。おい。
「さらに言えば。大貴族の血筋を感じさせる背景や、それを周囲が信じかねない土壌は、たとえ舞台が中世封建社会だとしても、そこからどこへでも話を広げられる展開の自由さを確保できますねえ」
この時期ナポレオンは、と検索する。ああ、カスパーが現れた時点で既に死んでるのか。
「ああ――いいですねえ~。失われてまだ伝説と化したばかりの、覇王の侵略帝政主義と、その爪痕……」
この時期ナポレオンを破った諸国軍は、と検索する。やはり早々に空中分解している。
「――覇王の侵略に手を組み、打ち破った諸国同盟の巻き返しと分裂。個人能力主義の象徴とも呼べる英傑の死によって、侵略より解放され平和が訪れたはずの世界はふたたび、不可視の四分五裂を迎え、沈黙の群雄割拠時代を迎える……」
急に雄弁になってどうしたのこの人、と言わんばかりの顔でナローデが見ている。
「――そんな乱世に彗星のごとく現れる、覇王の落胤……という導入なわけですね」
ナポレオンの子女で検索する。嫡流の方ではナポレオン三世あたりがやはり有名か。
「……覇王の血を利用せんとする者。侵略者の血統を全否定する者。群雄達のさまざまな思惑の波に翻弄されて、その偉大な血筋の証さえ立てられぬ後嗣たち……」
ウィキを流し見していく。為政者としての後継ならば、やはりナポレオン三世あたりが著名だが。祖父の高名に起因する人気に支持基盤を得、また祖父の高名に生涯縛られた。
三世を名乗った時点で祖父の影はまるで宿命のごとく彼の人生につきまとい続けた。
周囲の過剰なまでの英雄アレルギーに翻弄され続けた彼の人生が自由でなかったのは、やはり英雄アレルギーによって軍略より遠ざけられていたためだろう。
祖父と同じ実力で成り上がった軍人ならば、辛くとも、もっと違う人生を送れたはずだ。
――そういう意味においては。
「田舎の一騎兵から、父の神話を再生する。そうして覇王の血筋を示してゆく……」
もしカスパーが本当に、西欧に広大な版図を築いたあのナポレオンの実子であったなら。あるいは、最も父に近い似姿へと成長する可能性を持っていたのかも知れない。
父と同じ騎兵にしてやってくれ、と手紙だけ持たされて、何の後ろ盾もなく放り出されたのは、むしろ血筋的には幸運であったのかもしれない。
なぜなら、父もまたただの騎兵から成り上がったのだから。
「あのー。波多良さん? 言っておきますけどここ過去じゃなくて、異世界ですからね?」
「――おっと」
そうだった。魔力とか普通に出てきたわ。過去の歴史に似通った設定の異世界、かな。
とはいえ、急に社畜を異世界へ放り出しても「何すればいいかわからん」と言うだろう。
そういう意味では確かに、設定が頭に入りやすく展開もある程度予想し得る、史実に酷似したイベントを経験させ、話の導入やチュートリアルを経験させた方が誘導も楽そうだ。
「あー……確かに社畜が好みそうですよこの話。いい着眼点ですねえ――ナローデさん?」
歴史オタクですねキモいですよ波多良さん、と言いたげな顔で見ているナローデ。
「歴史オタクですねキモいですよ波多良さん」
「声に出して言わなくていいです。――それよりもこの設定。あなたが決めたんですか?」
わたくしにそんな神のごとき力があるわけないでしょ、とナローデは天を仰ぐ。
「わたくしはただ、候補の中から選んだだけです。……神様に。いくつか候補を示されたんですよ。舞台にするならどれがいいだろう?――って」
あー。神様は社畜の気持ちとかわからなさそうだもんなあ。人の心ないし。
社畜である事に慣れ過ぎた社畜が。もう浮かれた物語なんて必要としなくなった社畜が。それでも無意識に手に取る本があるとすればどんな物語か、なろう作家に考えさせたのか。
「もはや時代そのものが英雄を必要としなくなった近世に――遅れて現れた英傑の末流。
いやあ社畜をわかってますねえナローデさん。さすが、何冊も書いてるだけの事はある」
急に褒められてナローデは何やら居心地悪そうにしている。
「……まあ、成り上がり系の物語なら一応、書き慣れてますので」
「ああ。違う違う。違うんですよナローデさん」
「えっ?」
俺の苦笑とナローデの真顔が向かいあう。
しばしそのまま、お互い無言のままでいた。
「――ああ。なるほど。ナローデさん天才なんですね?」
「えっ急に何ですかいきなり。わたくしひょっとして皮肉言われてます?」
「いやいや。そうじゃないですよ」
にこやかに思考を閉ざしたままの俺を、ナローデは不気味そうに窺っている。
そうか。わからぬままに、この舞台を選んでしまったか。
まあ天才でも天然でも関係ない。俺は俺でいつも通り、俺の仕事をするだけだ。
会社でやるのと同じように。俺に期待された役割を、ただ果たすのみである。
「……いやナローデさん。それに神様。――よくぞ、俺を選んでくれました」
「さっきから何なんですか一体?」
「この異世界転生。必ずや、もう物語を必要としなくなった社畜でも読むような、そんないいお話に仕上げましょう! 微力ながら、主人公としてお力添えをいたしますよ?」
「何ですか急にかしこまって。それに、何でいきなりやる気出してるんですか……?」
「――さてじゃあ、ここらで一発、世界観の説明とかいってもらっていいですかね?」
飲み会のノリで誤魔化す俺だが。原稿用紙九十枚ぐらいに至ってなお、結局世界観の説明がまるでなされていないという事を思い出したか、ナローデは窓に昇る朝日を眺めた。
「話してる内に朝になっちゃいましたしねえ……。じゃ、その役割は彼らに譲りますね」
「――彼ら?」
俺が首を傾げていると、窓の外から足音と話し声が響いてきて、そうしてひょいと、大勢の人々が窓の外へ姿を現した。
鉄格子越しに牢の中をじろじろ眺め、そうして俺の姿に気づくとみな笑顔になる。
「おお![隠し子]! やっと目ぇ覚めたか!」
「良かったなあ[隠し子]! 身体なんともないか?」
「腹減っただろう[隠し子]! まあこれでも食えや!]
鉄格子の向こうから飛んできた物を掴むと、それはミカンだった。小ぶりなオレンジか。
「えっと――あなたがたは?」
俺が尋ねると人々は顔を見合わせ、朗らかに笑い出した。ナローデが補足する。
「昨日から牢に放り込まれた波多良さんを、ちょいちょい見物にきてた町の人ですよ」
「牢っていうか、もはやただの見世物じゃん……」
「誰かさんがド派手で目立つ大道芸を大勢の前で披露したせいじゃないですかね」
ナローデの説明によるとここは、町の囚人を放り込む小さな塔らしい。悪人博物館かな。
「そうそう、それ! 昨日は楽しかったぜ[隠し子]! ブタ箱入りは残念だけどな!」
とりあえず腹減ったので頂いたミカンを食べると人々から歓声が上がった。動物園かな。
「とりあえず自分、外の世界の事何も解らないんで。皆さん教えてもらっていいですか?」
人々が期待しているらしい台詞を言うと、案の定快諾が返ってきた。田舎の人暇だなあ。
鉄格子にのめり気味な皆の説明をまとめると、ここは異世界ナロラディアというらしい。かつてこのナロラディア大陸には、一大帝国が存在していたのだという。
しかし征略半ばにして帝王は暗殺に斃れ、率いる者なき帝国軍は諸国連合軍との決戦に敗れ、旧帝国領土は四分五裂。帝国の領土的野心への非難のもとに結集しておきながら、帝王亡き後にはおのが野心を剥き出しにした周辺諸国の連合はもろくも瓦解、大陸はかつての味方同士が相争う草刈り場と化しているらしい。この平和そうな田舎町ナロンベルクも戦場と無縁ではいられず、首都バイエルンとの連絡もつかぬまま、唯一の駐屯戦力である竜騎士連隊だけを頼みに、明日をも知れぬ日々を過ごしているのだという。
ひとりの覇王に率いられし強大な帝国は滅びたと言えど、散り散りになった残存軍はいまだ各地を我が物顔で闊歩し、帝国主義の残党は各地に雌伏し静かにその牙を研ぐ。
そして、乱世のいちばんの犠牲となり、もう戦には飽いているはずの民衆の中にさえ。すでに世を去った英雄のふたたびの台頭を求める声が、未だに絶えぬのだという。
そんな人々の心を写したものか。遠く離れた北の半島の先では「覇王が復活した」との噂まで流れているらしい。
「……なるほど。凄くよくわかりました」
英雄の突出を拒絶し、それでいて英雄の出現を求める。そんな民衆の抱える矛盾ゆえに、世の戦乱は終わらないのだと、この人々は訴えているようにも聞こえる。歴史学者かな。
ちょっと説明的すぎひん、とナローデに視線を送るも、奴は頂いたバナナを食べていた。
「――ほらほら、世の中知らない隠し子に世の厳しさを教えるのはそれくらいにしてくれ」
牢番の恰好の兵がひとり、皆の後ろから割って入ってきた。今の説明愚痴だったのかよ。
「夜が明けたら騎士爵様のお屋敷で取り調べと言われてる。――さあ皆、帰った帰った」
えー、詰所じゃなくて貴族様の家で取り調べなんだね、珍しい、やっぱり隠し子って大貴族の子なんかな、お前本当に何も覚えてないの、とか好き勝手な事を言われる。
鍵を弄びながら兵は窓の前より塔の中、牢の入り口へと回り込み、そして錠前を開けた。
「ん。――じゃあ二人とも、行ってこい」
そのまま扉を開け、さあ出た出たと促してくる。
「ええっ⁉ 拘束どころか付き添いすら無し⁉」
牢番はまるで不思議な事を言われたような顔をしていたが、一言だけ答えた。
「いや……騎士爵様が『用があるなら自分から訪ねて来るだろう』って言ってたし」
「えっ……?」
訳が分からない俺をよそに、一斉に同意を口にしたのは、窓の外の暇人たちであった。
「「「ああ~ー…」」」
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