第21話 開発しても良い?

 舞が食べたいケーキについて考えていたんだが、「あたしが食べたいケーキは…、ね」などと言い出した。


何でそんな事言い出したんだ? ちゃんと確認しなくては。



 「正志、この間みんながどういうケーキ食べたか覚えてる?」


「もちろん覚えてるぞ。俺はショートケーキ・舞はチョコケーキ…」


「“ビター”忘れてるわよ」


「ああ、そうだったな。舞子さんと母さんは……何だったっけ?」

俺達と違うのはわかるが…。


「お母さんはミルフィーユ・清美さんはモンブランよ」


「そうだったか。舞は記憶力良いな~」


「あんたが悪いと思うけど…。食べたのは土曜日で、今日は水曜日よ? 1週間も経ってないじゃない!」


「ごめんごめん。全員のケーキがわかったところで、それがどう関係するんだ?」


「どうせなら違うケーキを食べたいけど、どれにしようか悩むのよ。だから彼氏の正志に選んでもらおうと思ってね」


「それ、俺に面倒な事を押し付けてるだけじゃ…?」


「正志君。彼女のお願いを面倒なんて言っちゃダメよ」


舞子さんに軽く注意されてしまった。確かにそうかもしれないが…。


「何を選んでも文句言わないよな?」


「当たり前よ。文句を言うなら自分で選ぶから」


「それもそうだな。舞のケーキは…、ショートケーキにしよう。悩んでたが、俺も同じにするから」


「お揃いって事ね。たまには良いかも」


「話は決まったわね。私はすぐ買いに行くから」


テーブルの上に置いてある車のキーを持って、舞子さんはリビングを出る。


「なぁ、今更だが本当に良かったのか?」


「これはあまり言いたくないけど、お母さんは出かけたし…」

そう言う舞は少し恥ずかしそうだ。


「昨日正志に前戯されてから、新たな扉が開いたというか、自分の知らなかった一面を知る事ができたというか…」


あれをやってから舞は一皮むけた感じがしたが、気のせいじゃなかったか。


「自分で自分の殻を破るのは難しいでしょ? だから正志の意見を聴きたかったのよ」


殻を破ること自体は良さそうな反応だ。これって、舞に色々しても良いんだよな?


「何か嫌らしい事でも思い付いた? あんたは顔に出てわかりやすいよね」


「でも止めたりしないんだろ?」


「一応ね。というか、そんなの言わせないでよバカ…」


照れてる舞が可愛くて襲いたくなったが、舞子さんの帰宅で中断すると思って止めた。互いに風呂を済ませた時なら良さそうだ。



 「ただいま~」


ケーキを買ってきた舞子さんがリビングに来た。


「私もショートケーキにしちゃった。仲間外れは嫌だからね」


「すみません、気を遣わせてしまって…」


「気にしないで。あの時正志君おいしそうに食べてたから気になってたの」


ショートケーキは好きなケーキランキング1位だからな。実際味も良かったし、大満足の出来だった。


「ケーキを買ったから、次はハンバーグの準備をしないと」


「お母さん。ハンバーグって1からこねて作るの?」


「そのつもりよ」


「あたしも手伝う。昨日のカレーは正志が野菜を切って手伝ったから、あたしも何かしないと」


「そういう事ならお願いするわね」


「正志は昨日と同じようにお風呂掃除をお願い。しっかりできてたから頼りにしてるわ」


「任せろ!」


全員やる事が決まったし、早速行動を始めると思ったら…。


「今日も真面目にやってくれたら、後でちょっとだけご褒美をあげる♡」

舞は俺にそう耳打ちしてきた。


ご褒美って何だ? よくわからんが、気合入れてやるぞ~!!


俺はテンションを上げたまま、風呂場に向かうのだった。

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