第10話 もう透けてるじゃん!

 自室で着替えてから、5日分の着替えと制服を持って再び舞の家にお邪魔すると、舞子さんは玄関先で待っていてくれた。


「制服預かるわね」


「はい、お願いします」


…渡した途端、舞子さんは鼻に制服を近付けた。


「ちゃんと消臭してるみたいね」


「母さんが『忘れずにしろ』とうるさいので、毎日放課後にスプレーかけてます」


「でも正志君の良い匂いがしなくて残念だわ…」


「良い匂い? 俺がですか?」

何にもしてないんだけど?


「ええ。私がそう思うんだから、舞もそう思ってるはずよ。母娘なんだから」


だったら嬉しいが、直接訊いてもごまかされる気がする。


「今背負ってるリュックに、着替えが入ってるのね?」


「そうです」


「男の子は荷物が少なくて良いわね~。女の子が外で5日過ごすなら、スーツケースぐらいの大きさは欲しいところよ」


本気なのか冗談なのかわからん…。


「さっき話した通り、舞の部屋で過ごしてもらうからそのつもりでね」


「わかってます」


「料理の前にお風呂掃除をしてもらうわ。荷物を舞の部屋に置きに行きましょう」


俺は舞子さんに続いて舞の部屋に向かう。



 舞の部屋の前に来た。最後に入ったのはいつだったかな? 舞子さんは3回ノックした後…。


「舞。正志君を連れて来たわ」


「もう来たの? …入って良いわよ」


「後は2人に任せるわね」

そう言って、舞子さんは階段を下りていく。


俺はワクワクを何とか抑えながら入室する。



 舞の部屋は…、最後に入った記憶と大して変わらないぞ。彼女は部屋に人形を一切置かないタイプなので、部屋の色合いを除けば俺の部屋と大差はない。


舞も着替えを済ませたようだが、舞子さんの予想通り白Tシャツを着ている。…って、既に黒ブラが透けてるんだけど?


自覚してるかは知らんが、風呂掃除の際にイタズラするか。


「日曜に片付いてないって言ったけど、十分キレイじゃん」

少なくとも、俺の部屋より絶対良い。


「急いで片付けたからよ。あんたの事だからもっとのんびりすると思ったの」


「そりゃ悪かったな」


「別に良い。元はといえば、片付けをサボったあたしが悪いんだから」


相変わらず真面目だな~。それが舞の良いところなんだけど。


「さっき舞子さんに言われたんだが、先に風呂掃除をやってほしいって」


「そう。それじゃ早速やってもらうけど良い?」


「ああ」


俺達はすぐ風呂場に向かう事にした。



 脱衣所にしまってあるスポンジと洗剤を舞に渡された俺は、彼女の目の前で風呂掃除を開始する。


「…ふ~ん。意外にちゃんとやってるじゃん」


「意外は余計だ!」

普段使ってるスポンジと使い心地は違うが、掃除自体はできる。


「正志はやればできるんだから、高校生からは真面目になってくれると助かるわ」


「別に今のままで良いだろ」

何も困ってないからな。


「良くないわよ! 『舞の彼氏はバカ』みたいな噂が広がるかもしれないじゃない!」


「じゃあ、周りの目がある時は真面目になるよ」


2人きりの時は変わらずふざける。このギャップが俺の魅力をさらに増やすだろう。


「そうして」



 一通り風呂場を洗う事ができたし、後はシャワーで洗剤を洗い流すだけだ。さて、漫画によくあるシーンを再現するとしよう。


俺はシャワーを手に取ってから水を出す。なるべく自然に…。


「…あ、手が滑った~(棒)」


水を出してるシャワーをほんの一瞬、舞の胸元に向ける。


「きゃ!?」

自分にかかるとは思わず、彼女は当然驚く。


「ちょっと! 何やってるのよ!」


「ゴメン…」


これで良い。問題は濡れてどれだけ透けるかだ。


…思った通り、濡れた事でより透けるようになった。うっすらではなくハッキリに変わっている。あまりにも魅力的なのでガン見してしまう。


舞は俺の視線を辿る事で、透けてるのを自覚する…。


「もう! あんたのせいで透けちゃったじゃない!」


「だからゴメンって!」


「濡れたのはちょっとだから、このまま乾くのを待つわ。良い? あまりこっち見ないでね」


「わかってる」

俺は洗い流すのを再開した。



 本当に透けブラを見られたくないなら、さっさと部屋に戻って着替えれば良い。ここに居続けたら、見られる可能性が高いのは言うまでもない。


にもかかわらず残ってるんだぞ? やっぱり舞はムッツリじゃないか! 風呂掃除の後は舞子さんの手伝いだから、この事をきちんと報告するとしよう。

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