第9話 舞は意外にムッツリ?

 母さんが新型ポロナに罹り、完治するまで隔離されるらしい。同日から父さんは出張に行ってしまい、俺は1人になってしまう…。


そんな中、舞子さんが救いの手を差し伸べてくれた。母さんが治るまでか父さんの出張が終わるまで泊まらせてくれるのだ。


舞子さんが良い人で本当に良かった~。



 「正志君。ウチに泊まるのは許可したけど、家事を手伝ってもらうわね」


そんな事、舞子さんに言われなくてもわかってる。


「“働かざる者食うべからず”ってやつよ」

隣にいる舞が補足する。


「もちろんです。俺に出来る事は何でもやりますよ」

何ができるか、自分でもよくわかってないが。


「何でも…ねぇ?」


何故か舞子さんの態度が意味深だ。変な事言ってないよな?


「だったら洗濯をお願いするわ。女を知るのにうってつけだから」


「お母さんちょっと待ってよ! 正志が洗濯をしたら、あたし達の下着見られちゃうわよ!」


「わかってるわ。ていうか、見せるためにお願いしてるの」


「あたしは見せたくないんだけど!」


「舞。下着は漫画でよく見るし、俺は全然気にしないぞ?」

下着単体に、そこまでエロさを感じないからな。


「よく見るって、あんたどんな漫画読んでる訳?」


「それはまぁ…色々だ」

ほぼエロしかない漫画も含んでいる。


「ふ~ん…」


「正志君。漫画と現実は違うものよ? 本当に気にしないのかしら?」


「どういう事です?」


「洗濯は、洗濯機で洗ったのを干すだけじゃないのよ。脱いで間もない服を洗濯機に入れる事も含むんだから」


脱いで間もないって事は、着ている人の匂いが残ってる可能性が高い…。


「どうやら気付いたみたいね。匂いは漫画で表現できないでしょ? 舞の脱ぎたての服を前に抗えると良いけど」


「…確かに自信ありませんね」


「ないの!?」


「やっぱ本人は気付かないのか。舞からはいつも良い匂いがするんだよ」

匂いの元はわからないがな。


「そ…そうなんだ。…正志も良い匂いするけどね」


「えっ? なんだって?」

後半が聞き取れなかった。


「何でもない!」


どう考えても何かありそうだが、言うと怒られそうなので自重する。



 「とにかく、正志が洗濯するのは反対よ。料理とかお風呂掃除をやってもらえば良いじゃない」


「俺が料理できるように見えるか?できるのは千切りぐらいだぞ 」


「ドヤ顔で言うな!」


「今の時代、男の子も料理出来たほうが良いわね~。…そうだ、夕食のカレーを一緒に作らない?」


「カレーですか?」

大好物の1つだが、舞子さんのカレーは食べた事ないな…。


「ええ。正志君にはひたすら野菜を切ってもらうわ。腕前を見させて」


「腕前だなんて…。舞子さんに比べたらまだまだですよ」

料理のキャリアがまるで違う。


「最初はみんな素人よ。少しずつ経験を積むのが大切なの」


「そういう事ならわかりました。なるべく頑張ります」


「それと…、さっき舞が言ったお風呂掃除もお願いしようかしら」


「了解です」


「正志。家のお風呂掃除はよくやるの?」

舞が訊いてきた。


「たまにだな。しっかりできてるかはわからん」

母さんに文句を言われた事はない。


「でしょうね。あんたが手抜きしないように、しっかりチェックしてあげる」


「ああ…。頼んだ」


「それじゃあ、あたしは着替えに行くから」

舞は席を立ち、リビングを後にした。



 「お風呂掃除を付きっ切りでチェックねぇ…。正志君気にならない?」

舞子さんが謎発言をしてきた。


「特に何も…」


「私の勘が正しければ…、舞は白のTシャツに着替えるはずよ」


「はぁ…」

だから何なんだよ。本当によくわからん。


「正志君。制服は私と拓海さんが使ってるハンガーにかけるから、私服を持ってきなさい。置き場所は気にしなくて良いからね」


「はい、ありがとうございます。…ではまた後で」

俺は学校のカバンを持って、一旦舞の家を後にする。



 自室で数日分の私服を用意してる間に、舞子さんの謎発言にマッチする漫画の内容を思い出した。


何かの罰でプール掃除をしている生徒達がホースで水を撒こうとした時、うっかり周りにまき散らして女子の下着や私服の下のスクール水着が透けて見えるシーンだ。


まさか舞はそれを実現しようとしてる? だとしたら意外にムッツリだな。


って、別に意外でもないか。舞子さんと拓海さんのを覗いたんだから、間違いなく興味はあるはず。本人は簡単に認めないだけで…。


彼女のささやかな願いを叶えるのも彼氏の役目か。などと考える間に準備を済ませたので、俺は家を出て施錠してから再度舞の家に入るのだった。

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