第4話 あの日トーク①

 舞子さんと胸トークをした翌日。今日も舞と一緒に家に来てくれると、母さんから聴いた。一体どんな話をしてくれるんだろう?


…呼鈴の音が聴こえたので、リビングにいる俺と母さんは玄関に向かう。


「こんにちは。清美さん・正志君」

家に入ってきた舞子さんは笑顔で挨拶してくれた。


「お邪魔します。…ねぇ正志、どうかな?」

舞は恥ずかしそうに、髪先を指に巻いてクルクルしている。


昨日2人が帰る時に美容院に行くと言っていたな。舞子さんの変化は間違い探しレベルだが、舞はかなり違う。


肩より少し長めだった髪は首元あたりで整っている。ミディアムロングからボブに変えたようだ。


「正志。何か言いなさい!」

隣にいる母さんに肘打ちされた。


「よく似合ってるよ」


「あ…ありがと。前“こういう髪型が好き”って言ってたからさ…」


高校受験前のいつだったかな? 登校中の何気ない会話で髪型が話題になったんだが、その時に「ミディアムボブが良いな」と言った事がある。


あれを覚えていたなんて…。だったら今度は俺の番だな!


「舞。俺にして欲しい髪型はあるか? 何でもするからさ!」


「別にないわね」


「ないの!? それだと一方的になるじゃん!」


「正志君。その気持ちは別の形で返してあげてね」


舞子さんに意味深な発言をされる。別の形ってなんだ?


「…続きはリビングで話しましょう」


母さんの言葉を皮切りに、俺達4人はリビングに向かう。



 リビングに着いた後、母さんがお菓子と飲み物を準備してテーブルに置く。テーブルの椅子に座る場所は昨日同様で、親子が向かい合う形だ。


「今日も女について話そうと思うんだけど、あまりふざけすぎないでね」

舞子さんに念を押された。


「わかりました…」

昨日と違って真面目な内容かな?


「今回話すのは…、“生理”についてよ」


念を押されなくても大体わかる。おっぱいと違ってふざけにくい内容だ。


「女の子と付き合うにおいて、生理は切っても切れない関係なの。…正志君は生理についてどれだけわかってる?」


「そうですね…。腹のあたりが痛くて、股から血がドバドバ出る感じかな」


「言い方!」

隣にいる舞にツッコまれる。


「大体そんな感じよ。痛みや経血は人それぞれだけどね」


だとしても、血が出るのは大変だよな~。怖いし。


「男の俺には全然わからないんですけど、急に起こるものなんですか?」


「ううん。一応周期的よ。でも、うまくいかない場合もあるの」


「なるほど…」


「生理中は貧血になりやすいのはもちろん、体調も不安定になりがちなの。だからその時はいつも以上に舞を気遣ってあげてね、正志君」


「はい! 舞とデートする時は、トイレに行きやすいところを選びます!」


「そこまで気を遣わなくて良いから!」


「ていうか、トイレを中心に行動した方が良さそうですね」

これならいつ生理が来ても安心だ。


「どこにも行けないじゃない!」


ノリの良いツッコミをしてくれるから、今は多分生理中じゃないだろう。


「実は昨日の夜、舞の生理が終わったみたいなの」


「へぇ~」


…もしかして昨日の帰りに舞が言った「あんたは悩みがなさそうで良いわね」は、そういう事だったのか!


自分が痛い時に俺がヘラヘラしてるんだもんな。イラつくは当然かも。


「舞、気付けなくてゴメン! 今度は俺も空気読むから!」

痛いと知った時は静かにするつもりだ。


「読まなくて良いわよ! あんたの能天気さはイラつく事もあるけど、気が紛れるんだから。静かにされると調子狂うの」


「アンタのおバカをここまで言ってくれるのよ。舞ちゃんは絶対に大切にしなさい」


「言われなくてもわかってるよ、母さん」


話が一区切りついたので、全員お菓子に集中し始める…。

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