第3話 母さんのサイズを教えてくれ!

 舞子まいこさんとしていた胸トークが一区切りついた。さっきと違って静かに過ごしている中、彼女が携帯を観て驚きの声を上げる。


まい、もうそろそろ予約してた時間になりそうだわ」


「じゃあ急いで行かないとね」


2人は席を立ち始める。どこに行く気なんだろう?


「なぁ、どこを予約してるんだ?」


「美容院よ。高校の入学式までもう少しだからキレイにしないと」


今でも舞はキレイだと思うが、そんなセリフは俺には合わない。勇気を出して言っても「キモい」と返される気がする…。


「2人の行きつけはどこなの?」

興味を持った母さんが尋ねる。


「○○よ。あそこは丁寧で評判も良いから、清美きよみさんも行ってみたら?」


「そうさせてもらうわ」


…床屋を利用してる俺には付いていけない。俺も美容院に行けば仲間に入れるが、値段が高すぎるからダメだ。なんであんなに高いんだよ? 意味不明だろ。


正志まさし。舞子さん達を見送りに行くわよ」


母さんに声をかけられたことでハッとする。


「そうだな」


そして、俺達4人は玄関に向かう。


「正志君。これからも続きを話してあげるからね」


「はい! お願いします!」

もっと過激な話でも良いんですよ、舞子さん。


「…あんたは悩みがなさそうで良いわね」


「? 舞は何か悩んでるのか?」

彼氏として何とかしたいが、言ってくれないとどうしようもない。


「別に…」


なら言うなよ! こういう女子の気まぐれ? の解説を舞子さんにお願いしたいぞ。


「次はについて話そうかしら。…お邪魔しました」


謎の独り言を言った舞子さんに続き、母さんに一礼した舞も家を出て行った。



 「母さん、ちょっと訊きたいことがあるんだけど良いか?」

舞と舞子さんを玄関で見送ってから声をかける。


「? 何かしら?」


「母さんって何カップなの?」


さっきの話で、舞子さんはEカップなのを知った。となると彼女と歳が近い母さんの大きさも気になるよな?


「げほげほ…」

何も食べても飲んでもいないのに、母さんがむせ始める。


「母さん大丈夫か!?」


「それはこっちのセリフよ。アンタこそ頭大丈夫?」


「頭大丈夫? はストレートすぎ! さすがの俺も傷付くぞ」

HPというか耐久値は無限じゃない。


「だったら言わないでちょうだい…」


……次の言葉が思い付かないから黙ってるんだが、母さんも何も言わない。玄関に微妙な空気が流れる。


「…アンタがどうしてもって言うなら、話して良いけど…」


「本当か? 教えてくれ!」


「玄関では言いたくないわ。リビングならね…」


俺と母さんはリビングに戻り、テーブルに向かい合って座る。


「アンタがこんな事を言い出すのって、さっきの舞子さんが原因よね?」


「ああ。2人は歳の差がほとんどないはずだろ? だから…」


「正志も年頃の男って事か。…『C』よ」


「えっ?」


「だから“Cカップ”って事! 2回も言わせないで!」


「聞き返したんじゃなくて、差に驚いたんだよ。カップの事はサッパリだけど、2つも差があるようには思えないぞ?」


あくまでぱっと見の印象だがな。


「それはのおかげよ。直接じゃなきゃ、差はわかりにくいと思うわ」


そんな物があるのか…。どういう作りなんだろう?


「言っとくけど、絶対見せないからね! そういうのは彼女の舞ちゃんにお願いしなさい! 見せてくれたらの話だけど」


「言われなくてもわかってるよ」

そこまで行ったら“マザコン”だろ。


「…話はこれで終わり。これからお皿とかカップを洗ったりやる事があるの」

母さんは席を立ち、舞子さんが使った食器を運び始める。


俺も用件は済んだし、手伝ってから部屋に戻るか。舞が使った食器を流しまで運んだ後、俺はリビングを出る。

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