第14話 満月に照らされて


 夜道を二人並んで歩く。

 夜遅いけど、有紗の家と叶乃の家は近いのでそこまで心配は要らない。


 しばらく無言だったが、手を繋がれている事が気になった叶乃は静寂を破る。


「な、何で手を繋いでいるのですか?」

「夜道は危ないでしょ」

「そうですが……。指を絡ませる意味、ありますか?」

「その方が安心するから」


 そう、二人は恋人繋ぎをしているのだ。恥ずかしいけど、暗がりだから嫌じゃない。


「もうすぐ家、着くね」

「そうですね」

「叶乃と離れたくないな」

「西野さんはもう少し私離れしたほうがいいかと思います」


 学校でも校外でも家でも、有紗はべったりと叶乃にくっついている。依存している、と言っても過言じゃない。


 ――少し歩くと有紗の家に着いてしまった。


「わあああー、別れたくないよおおー」

「明日、会えますよ」

「分かってるけど、ずっと一緒にいたいんだよ!」

「……」


 叶乃にとって、その言葉は嬉しかった。誰かに必要とされてる、求めてくれてる。生きる意味が分かったような気がした。そして、ずっと一緒にいたいのは叶乃も同じ。


「最後にハグしよ?」

「しましょう」


 ぎゅっと叶乃の身体を引き寄せた。強く、長く、ハグをする。体温を感じ合うだけで、幸せな気持ちになれるから、ハグの力はすごい。


 離れたくないから、いつまで経っても叶乃を離そうとしない有紗。


「お、終わりましょう」

「嫌だよ。ずっとこうしていたいよ……」

「それでも」


 無理やり、叶乃は彼女の身体から離れた。


「うう……」


 泣きそうになる彼女の頭をそっと、優しく撫でた。


「!」


 有紗の肩が跳ねる。


「もっと、もっと、して?」


 連続で何度も有紗の頭を撫でる。


「気持ちいい……」

「それは良かったです。でも、もう別れましょう。さようなら」

「さよなら」


 手を振って、二人は別れた。

 有紗は合鍵を大事そうに両手で包みながら、家の中に入った。


(そういう意味じゃないのは重々承知だけど、『別れる』とか『さよなら』って言葉は使って欲しくないな)



 :有紗Side


 私の部屋にて。


 さっき、胸揉まれたよね!? どゆこと?


 仕返しって叶乃は言ってたけど、ずっと今まで触りたい気持ちを我慢してたの!?


 叶乃にだったら、何回揉まれてもいいのにな。


 叶乃は大きな胸が羨ましい、と言っていた。でも私は、叶乃の小さな胸も好きだよ?


 それにキスもされた。


 今度は唇がいい。

 そんな事、言ったら引かれるだろうか。


 とにかく興奮状態から抜けきれない私。


 絶対、寝たフリだなんて言えない。


 でも、寝てたら何かしてくれるなら、ずっと寝てたい。


 私達、本当に友達なんだよね?


 友達でも恋人でも、私は叶乃が好き。


 叶乃はどう思っているんだろう……? と疑問に思い、ラインを送った。


『叶乃は私のこと、好き?』


 するとすぐに既読。


『好きです』


 この『好き』が恋愛感情の好きだったらいいのに、と思いながら、私はベッドに潜った。

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