本作は猫を題材としていますが、焦点は著者自身の心。
著者は猫と犬が嫌いです。経緯は本編をお読み願います。周囲に広く言っていませんが、そう自認していました。
しかし、です。もうそろそろ許しても、過去を「過去」にしていいのではないか。
読めば分かるのですが、仇敵を許すときに一番の敵になるのは、仇敵を憎んでいた過去の自分です。仇敵を許せば、仇敵への復讐を止めるのではなく、過去の自分を裏切ることになります。それが辛いです。
それでも、です。もう終わりにしていいのではないか。心情の移り変わりがゆっくりながらも確かな歩みで語られます。
過去を乗り越える過程がよく分かる、いいエッセイです。