第5回 漫画『理想どおりのマイライフ』(青菜ぱせり)
レディコミといえば悪役が成敗される話や、性悪の主人公が痛い目に合う話など「ざまぁ展開」を思い浮かべるだろう。私自身レディコミには、そういったイメージしかなかった。しかし青菜ぱせり先生の作品と出会ったことで、私はレディコミにも「優しい世界」や「ハッピーエンド」が存在することを知った。
ぱせり先生は、これまでに多くのレディコミ短編を発表している。ぱせり先生が描かれる作品の特徴は、前向きで明るいラストを迎える物語が多いことだ。「誰だって変わることができるのです。今更なんてことは絶対ありません」「諦めないでください。頑張っていたら幸せになれます」など読者を励ましてくれているメッセージが、ほとんどの作品で感じられる。また、そうではないギャグテイストの作品も、ゾッとする結末のホラー漫画も傑作だ。
短編のレディコミが多いということなので、生み出された
また作品によっては「女性の幸せは、結婚だけではない」と教えてくれることがあり、そのようなストーリーに救われた読者も少なくないと思われる。もちろん悩める既婚者に寄り添った物語もあるので、ぱせり先生は多くの人々を励ましていると考えられる。そのようなことから、ぱせり先生に描けないヒロインは全然いないのではないか、と私は思っている。
ぱせり先生の短編『理想どおりのマイライフ』も、前向きなラストが描かれたレディコミ作品だ。そして猫が活躍する漫画でもある。
主人公の山崎芽衣は、恋人の俊哉の提案で同棲をすることになった。俊哉は大病院の跡取り息子で、ルックスも性格も良く、そんな彼との結婚を芽衣は期待していた。しかし価値観の違いが原因で、俊哉は芽衣の元から去ってしまった。上手くいっていた仕事も失敗している芽衣は、元気を出そうと友人たちや家族に電話をかける。それでも芽衣は、まともに相手にされず余計に悲しくなってしまう。すっかり孤独になってしまった芽衣であったが、とある地域猫との出会いで淋しさは和らいでいくのだ。
芽衣と俊哉の仲が悪くなった理由は、俊哉が住んでいる場所にあった。俊哉には魅力的に感じられる地域猫やフレンドリーなご近所さんたちは、芽衣にとって下品なものだったのだ。また自分は恋も仕事も順調だと思った芽衣は、独身女性である職場の先輩をバカにしていた。俊哉に嫌がられるほど、世間体を気にし過ぎていた芽衣。しかし道で倒れた自分を救ってくれた大勢の猫、心の優しいご近所さんたち、頼りにしてくれるベテラン社員のおかげで芽衣の考え方に変化が生じる。そして、やがて俊哉が芽衣の元へ……といった明るい結末を迎えた。
ご近所さんたちの態度が馴れ馴れしい、他人の手料理を食べたくない、野良猫に触るのは危ないこと……そんな芽衣の気持ちが分かる読者も多いだろう。しかし周囲の人間に対する失礼な態度、攻撃的な言動が目立っていた芽衣。考え方が変わるまでの彼女が悪い人間なのかどうかは、やはり読み手が決めることだと私は思う。
それでも芽衣が少しずつ良い方向へ変化していく様子は、見ていて私も嬉しくなった。また、芽衣が最初に仲良くなった猫の「みーちゃん」をかわいがっている姿は心が温まるシーンだ。ちょこちょこ登場する他の地域猫たちも、かわいらしいので見る度に思わずニコニコしてしまう。
ぱせり先生の前向きなレディコミ作品は、悩んでいる人や、嫌なことが続いて元気のない人を励ましてくれるのだ。私も気持ちが暗くなったら、ぱせり先生が描かれるハッピーエンドを目の中に入れて明るくなるようにしている。まだ未読の作品もあるので、これからどんどん読んでいくつもりだ。
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