172.ガンシューティングゲームはゾンビものが一番
一通り施設内を見て歩いた俺は再びゲーセンに帰ってきた。
ゲーセンはUFOキャッチャーにどんな景品があるのか、見ているだけでも楽しいし時間も潰せる。そして、多種多様なゲームが揃っていることもあって一向に飽きない。
運動はもうこりごり。後は一人でひっそりのんびりして――。
「……白雪先輩か」
白雪先輩から電話がかかってきた。これは百パーセントお呼びがかかったか、何かトラブったか。一瞬電話に出ることを躊躇ったが無視するわけにはいかないので着信をスライドさせて応答することに。
「なんですか?」
『橘君。君は今どこにいる?』
「ゲーセンっす」
『ゲーセンか。実は私もゲーセンとやらに行ってみたいと思っていたところなんだ』
「先輩って行ったことないんですか?」
「そうだ。私の両親がダメと言われて育ったからな。この機会だから経験してみようと思ったんだ」
「あー……ゲーセンってヤンキーとか不良とかの溜まり場になっていたことがありましたけど、それはもう昔の話なのになぁ。今はお年寄りとかの憩いの場になっているところもあるらしいし」
「そうなのか。では、そちらに行くから待っていてくれ」
「了解っす」
「橘君。待たせてしまってすまない」
二分後。白雪先輩がゲームセンターと合流した。どこかで遊んでいたのか、額に光るものが見える。
「いえ。それでゲーセンっていっても何するんですか?」
「ふむ。一通り見て回りたい。初めてだからな」
「よく両親が許してくれますね。ここだってゲーセンもあるし、変な輩だってくるのに」
「模試でいい結果が出ていることと、気分転換に出かけることに両親は文句がないらしい」
「そんなもんなんですか」
「さあ。模試の結果だけで上機嫌になっているからな。あの二人の考えていることはわからない。それよりもだ、橘君。君が案内してくれたまえ」
「うーっす」
案内といっても、これはこうこうゲームですよ~って説明するくらい。
UFOキャッチャーは流石に知っているので軽く見て回って終わり。
次にUFOキャッチャー以外のゲームエリアに行くと、白雪先輩は勉強をしている時のような真剣な目で周囲を見渡し始める。
「これはなんだ?」
「レースゲームってやつですね。これに乗って実際に操作して順位を競ったりしますね」
「なるほど。橘君、やったことあるのか?」
「ありますね。昔、狂犬の橘って呼ばれるくらい地元でブイブイ言わせていたんですけど、あまりにも強すぎたが故に対戦する相手がいなくなってやめたことがあります」
「それは君が変なことをしたせいで寄り付かなくなったの間違いだと思うが」
「……すみません。本当は勝ちたくで卑怯な真似ばかりしたら、店員さんに注意されてビビッてやめただけなんです……」
「はぁ……まったく、君という人は。私は無免許だからこのゲームはやらない。次に行こう」
「免許なくてもいいんですけどね」
変なところで真面目な性格が出てしまう白雪先輩。え、そうなのか?
という、表情をされても困るだけなんですが……。
「これはなんだ?」
「ガンシューティングゲームってやつですね。これはゾンビを打ちまくるゲームのやつですね」
白雪先輩が次に興味を持ったのは、三十年以上続くガンシューティングのシリーズのゲームだ。タイトルはアウト・オブ・ザ・ゾンビ。一作目から五作目まで作られ、現在は五作目の作品が全国のゲーセンで稼働している。
確かに五作目は映像も綺麗でゾンビたちもよりグロテスクで怖くなったが、一番の傑作は四だ。これまでのシリーズはハンドガンであったりショットガン、リボルバーを使ってゾンビを戦っていたが、シリーズの四からマシンガンとなった。
そのため、ゾンビの数も一段と多くなり、また自作爆弾をステージごとに三つ投げられることから戦略の幅が広がった。
迫りくる大量のゾンビ、変異種、ゾンビアニマルたち。
これらの理由から個人的な最高傑作は4だと思っている。異論は認める。
そしてセカンドアップに置かれているのはシリーズ四作品目の筐体。
もしかしてここのお店の人はわかっているな。素晴らしい。
「ゾンビを打つ、か。ホラー映画のような?」
「そうっすね。ま、娯楽なんで細かいところは抜きに打ちまくれるってところに爽快感がありますしね」
「なるほど。面白そうだな」
白雪先輩は通称アウゾン4に興味を持ったらしい。筐体の前でPVを見て、なるほどと呟いている。
「操作は簡単っすね。マシンガンをこう持つ。引き金を引いて打ちまくる。弾が無くなったらマシンガンを振ってリロード。自作爆弾はマシンガンのここについているので押して離すと投げられます」
「シンプルでわかりやすいな」
「二人プレイもできるみたいなんで一緒にやりましょう。俺、このゲーム大好きなんで」
「それは心強い! 橘君、よろしく頼む」
「任せてください。こう見えて三十回くらいクリアしているんで!」
あまり上手ではないのでそれなりにお金を投入してクリアしているが。
まあ、慣れたら案外簡単にできるってもんよ。
個々の筐体は管理や整備がきっちりしているらしく、マシンガンを持った感触は悪くない。俺と白雪先輩はそれぞれワンコイン投入しゲームスタート!
「なぜこのご老人は泣いているのだ?」
「娘さんが死んじゃったから生き返らせようとして実験した結果、死者を生き返らせる薬を作ったはいいけど、それを悪用する組織が現れて……みたいな設定なんですよ」
「なるほど。短いムービーながらもそれらを示唆しているのか。4ということだからそれだけ多くの人に愛されているということだな」
「まあ、そうっすね」
ムービーは代わり、今度はエージェントの二人が某所の施設で資料を集めていると、突如としてゾンビが大量発生し街が大混乱になっていることを知り、急いで施設を抜け出そうとするがすでにゾンビに侵入を許していて……みたいなストーリー。
そしてドアを破って大量のゾンビが侵入。
ここでゲームスタートだ。
「先輩! 撃ちまくってください!」
「任せてくれたまえ!」
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