163.全然ラブコメにならない
ちょっとはラブコメ的な展開になると思うだろ。
白雪先輩は前生徒会というキャラ設定ありで櫛引たちに割って入ることができるヒロイン属性を持っている。
一緒に勉強をしたり、密室空間でゲームをしたり。
おっとぉ!? これはラブコメ的な……残念ながらみんなが想像するようなラブコメ的な展開だったり、ラッキースケベは皆無といっても過言ではない。
「昔のゲームはシンプルだな」
白雪先輩は髭のブラザーたちが攫われた姫を助けるため、不思議で独特な世界をタケノコを食べてパワーアップし、横スクロールしていくゲームにそんな感想を抱いたらしい。
「まあ、超人気ゲームの最初の作品っすからね」
「タケノコを食べてパワーアップという概念ができたのはこの頃か」
「っすね」
なんでブロックを叩いたらタケノコが出てくるのか、未だに謎である。
そんな謎を謎のままにしていくのがいいのかもしれない。曖昧な世界観とか設定の方がゲームとしていいのかもしれない。
「このタケノコはなんだ?」
「それはタケノコを食べた後に出てくるアイテムの一つですね。通称メラメラタケノコ。口から炎を吐くことができるようになります」
「これは辛いのか?」
「どうですかね……」
口から炎を吐くということは辛いのかもしれない。
白雪先輩は不思議な世界観のゲームに興味津々なようだが。
「これはなんだ?」
「それはタイフーンタケノコっすね。風を発生させて敵をふっ飛ばす能力を手にできるアイテムですね」
「タイフーン? そうか。こういうタケノコを駆使して進めていくのだな」
「はい」
「ふむ。九面まであるのか。これくらい楽勝にクリアしてみせる」
先輩はこのゲームが簡単だと判断したらしい。
が、その判断が間違っていると気づくのに時間はかからず。
「なに!? もうゲームオーバーなのか?」
先輩は残機をすべて溶かしてしまいゲームオーバー。
ちなみに1-1をクリアすることができず、雑魚敵のモリビーやダンゴムシのダンダンによってやられまくってしまうのだった。
うん。ジャンプして乗っかれば倒せるし、ゲーム初心者でもすぐに慣れるはずなんだけどな……。
さっきから操作はおぼつかないし、勢いよくダッシュしてジャンプしても穴に落ちてやられたり。他にもタケノコを取るのに必死で雑魚敵に意識が行かず、接触して残機を一つ失ったり。
「……」
ゲームが下手だと思ったけど、想像以上の下手さに俺は項垂れて頭を抱えてしまう。幼少期から全くゲームに触れずに育ったこともあり、ゲームのコントローラーに慣れるのに時間がかかってしまう。ボタン配置も感覚で覚えないといけないし、昔のゲームだから簡単という訳でもないのが重なり、白雪先輩はVRゲーム以上に苦戦。
「私は諦めが悪い女なんだ」
「そこは諦めてください……適正ってものがあるんで」
この人にゲームをやらせてはいけない。受験が控えているし、時間を忘れてゲームに没頭しちゃう人間だからダメだ。
ゲーム。それは人を熱中させて堕落の道に足を踏み外してしまうこともある、とても楽しい娯楽の一つだ。用途、時間を厳守すれば気分転換やストレス発散、趣味の一つとして楽しめる最強の娯楽だ。
ゲームソフト一つ購入すれば、ゲームのジャンルや種類にもよるが何十時間と遊ぶことができる。初期投資にゲーム機の購入やその他諸々とお金がかかってしまうが、準備ができてしまえば安い趣味となる。
ゲームは頭が悪くなる。ゲームは目が悪くなる。
そう言ってゲームを敵視したり、ネガティブに見ている大人はまだまだ多い。
確かにゲームをすれば勉強ができるわけでもないし、やりすぎは目に悪いことは事実。
でも、それは他の趣味にも言えること。
読書だって目を悪くする。スポーツだって度が過ぎれば心身の健康に異常をきたしてしまう。結局のところ、バランスなのだ。
「橘君」
「まったく……ゲームだって日本の産業の一つなのにあーだこーだ言う人たちは……なんです?」
「確かに日本のコンテンツは世界に誇れることだ。私はこのような素晴らしいものを経験せずに大人になるところであった。私の感想は以上として」
白雪先輩はモニターを指差した。
「ゲームが止まってしまった。何か変な操作をしてしまったからだろうか?」
「あー。バグっすね」
ゲーム機自体が古いのとこういうバグはよくある。
ゲームを一旦リセットし、カセットをふーふーすれば……あ、でもふーふーしちゃだめなんだっけ。唾が飛んで逆に故障の原因になるとか。
「まずはゲームをリセットしてカセットをもう一度指し直すんです」
「なるほど。そうすれば直ると?」
「そういうこと」
「ふむ」
昔はテレビを叩けば直ると言われていたとか。
今の時代はバグだったり故障だったり。ハイテクだからこそ脆くなっているのかもしれない。
「よし。思いっきりやればいいのだな」
「あ、ちょ、何やってるんです!?!」
白雪先輩は力いっぱいゲームのカセットをゲーム機本体に差し込んでしまい、無事故障しちゃいました☆
買い直すのに万札が飛び去ってしまうことになるが、これはまた別の機会にお話ししよう。俺の諭吉……あ、今はもう別の人なんだっけ。
時代の移り変わりは早いねぇ……本当に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます