SS(ショートショート)私はここにいる
新しい学校。そう聞くと不安だったり恐怖だったり。
上手く馴染めるのか、そういうネガティブなことばかり考えちゃう。それが普通。
だけど、私はとても心からワクワクしている!
あっすーがいるし、なによりも彼がいるんだもの!
転校なんて私の両親に頼めばすぐに聞いてくれる。
ほんっとうに、私のパパとママは娘想いのバカ。
一瞬で手続きを終わらせたんだもの。お金もコネもすごいな~って思った。
新しい制服を着て新しい学校に。実は誰にも言っていないからサプライズ!
しっしっし。あっすーのあの唖然とした顔は最高だった!
千隼の勘弁してくれよっていう顔も私の嗜虐心が満たせてよかった~。
あの二人がいるから転校することに躊躇がなかったし、これで私は居場所を得られた。前の高校も結局、私の顔とお金しか見ていない人ばかりだった。
下品な視線、下心丸出しの誘い、私のポケットにあるお金。
心底くだらない。ただの交尾に何の魅力も感じない。
お金を持ってもしょうもないことに消費して、それで満足してしまう気持ちを理解できない。
だけど、もうそんな息苦しくて鳥かごのような世界でない。
私のことを一人の人間として迎えてくれる本当の友達がいる。
あっすーは千隼のことになるとすぐに嫉妬するから可愛いし♡
千隼は私の色仕掛けが全く効かない。ししっ。本当にウケる。
普通だったら手が出てもおかしくないのにね。超面白い。
「おい、長谷部。何一人で笑ってんだよ」
「べっつに~? 千隼をどうやったら堕とせるかな~って考えてたところ」
「……お前なぁ。そんなバカなこと考えんなっつーの」
「え~? だって~私は千隼がいいも~ん。旦那様にするんだったら」
「はいはい。どうせ十年くらいしたらもっと素敵な奴と出会えるんだから、そんなこと言ってると後悔すんぞ? 俺の理想は働かず株かなんかで生きるのが将来の夢だからな」
「だから~。私の家、お金持ち。君を一生養ってあげるよ?」
「……やべ。一瞬気持ちが傾きかけたけど嫌だ。お前……絶対に悪だくみ考えてるだろ」
「しっしっし。バレた?」
千隼のイチャイチャしていると、あの嫉妬女王が大股でやって来た。
「な~にやってるのかな?」
「千隼と将来のお約束♡ お婿さんに来てくれるって~」
「なわけねーだろ」
「え~? 私が養うって言ったら鼻の下伸ばしたのに?」
「それは……」
「ふ~ん。橘君。ちょっといいかな~?」
「あ? 待て櫛引!? 俺は――」
千隼の悲鳴が学校中に響き渡る。私はお腹を抱えて笑ってしまった。
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