137.転校生……ってお前かい!!!
ハロウィンパーティーは無事終わった。ブーブー言っていた渡部もいざ賛成多数の先生方には勝てず、ブツブツと文句を言っていたとか。
まあ、そんな先生のことはどうでもいい。
ハロウィンが終われば後は今年僅かとなった日々を消化していき、クリスマスに年末年始を楽しむとしよう。
クリスマス。これを聞いて思うことが多いはずだ。
やれ恋人がいなくて寂しいだの。性の六時間はけしからんなど。
言いたいことはわかる。クリスマスはクソだの、クリスマスはぼっちや恋人がいない俺たち、私たちに対する当てつけだ! 今すぐクリスマスはやめろ! クリスマスはキリスト教の祭りなんだからやめろ!
はいはい。わかるわかる。
だったら、普通に過ごせばいいじゃないか。
趣味があるんだったらそれに没頭すればクリスマスなんて関係ない。
クリスマスだからと言って、恋人と過ごさないといけないという法律や決まりがあるわけじゃない。友達や家族、またはそれに近しい人たちと過ごせばいいんじゃないか?
実際、アメリカは家族で過ごす人が多いと聞く。
恋人に限定して視野が狭くなっているのは日本の一部だけだ。
「つまり……クリスマスはクソってことだ」
「なんでそうなるのかな……」
俺はクリスマスのクソさについて高橋に延々と持論を展開していた。
流石の高橋もうんざりしたようで勘弁してくれと顔に書いてある。
「クリスマスは家族、もしくは仲のいい友達で過ごすことがスタンダードのはず。それにプレゼントの送り合いも理解できる。つーか、最近は物質主義的になりすぎなんだよ。ケーキはこういうので~とか、食べるんだったら○○で~とか。プレゼントには最低いくら必要で~すとか。もっと精神的な豊かさとか感謝だったり、ゆったりした時間を過ごしてもいいじゃねぇか。なーにが恋人とうんぬんかんぬんだよ。恋人に限定し過ぎのクリスマスの風潮は嫌いだ」
「そうかな? 今は幅広く楽しもうってなっていると思うけどね」
「ふっ。そうなればいいんだけどな」
「また橘君の講釈垂れしているのかしら」
綾瀬は呆れながらやって来た。
「講釈じゃねぇよ。クリスマスというのが歪められている事実を憂いているんだ」
「それはただあなたのひねくれた考えでしょ? まったく……」
「おっは~。なに話してるの?」
「おはようございます……」
櫛引と柊も俺の下に集まってきた。まだ朝のHRまで時間に余裕がある。
続々と登校してきた面々が集まり、俺の周りは騒がしくなる。
「第一、ハロウィンの余韻はどこに行った。あんだけハロウィ~ンって限定のスイーツだとかグッズだとかコスプレが出ていたのに、終わった瞬間次はクリスマスだっ! って、俺は付いていけねーよ」
「私もそう思います……」
「そうだよな、柊! やっぱりお前は俺の気持ちをわかってくれるいい奴だ!」
「えへへ……そうでしょうか?」
「ダメよ、桃子。この男に毒されたら桃子が危ない道に行ってしまう」
「うっせーな櫛引。危ない道ってなんだよ。俺を悪者みたいに言いやがって」
「え~悪者じゃないの~? だって~女の子とお揃いのコスプレをして~ハロウィンパーティーを楽しんでいたのはどこのどいつだっけ~?」
「……人違いじゃ?」
「ふ~ん」
なぜだろうか。櫛引を筆頭に女性陣の視線が俺に向けられている。
いや……まさか、そんな……。
「うぃ~っす、ちょり~っす!!! ん? みんなどしたの!?」
細なんとかはそんな空気を知らずに輪に入ろうとする。
ああ、こいつの空気の読めなさに感謝する日が出てしまうとは。助かる。
「あなた、やっぱり空気が読めないのね」
「そうだね~。本当にやだな~」
「……すみません」
「え……俺っち何か悪いことしちゃった感じ的な? うっそ~?!?」
「ドンマイ、細川」
「加藤っち~!?! 助けてへるぷみ~!」
「俺には無理だ」
「うそ~!?!」
加藤も現れた。加藤は泣きじゃくる細なんとかを慰める。
という感じでいつもの面々が集まった。俺の周りは気がつくといつも喧しく賑やかだ。
という感じでいつものように盛り上がっているとチャイムが鳴った。
担任の先生もやって来て、高橋たちはそれぞれ席に着く。
「みなさん、おはようございます。早速ですが転校生の紹介をします」
転校生。この時期に?
あまりにも唐突な事態にクラス中が浮足立ってしまう。
高校生活は三年。それも半分も終わってしまった今の時期に転校は珍しい。
とはいえ、その転校生も親の事情だったり、様々な理由でうちの学校に転校したに過ぎないだろう。今から新しい学校に慣れ、それから友達を一から作るのは難しい。
「では、その子を呼んでくるから待っててな」
先生はそう言って教室を後にした。先生がいなくなるとすぐさまクラスメイト達は仲のいい連中の所に集まり、その転校生について話が熱を帯びる。
俺の所にも高橋たちが集まって、誰が来るのか楽しそうに話し合っている。
そんな期待を高めるようなこと言って、普通の感じのやつが来たらどうなるんだか。
しばらくして先生が戻ってきて、それから転校生がドアを開けて教室に入ってくるが――。
「長谷部乃唖です。よろしくね♪」
ニコっと笑って軽く自己紹介をする長谷部。その視線は俺に向けられていた。
嘘だろおい。なんでお前がうちの学校に?!
「はぁぁぁ!?!」
櫛引は誰よりも驚き声を上げていた。
まあ、気持ちはわからんでもないが……。
つーか勘弁してくれよ……これ以上頭痛の種を増やしたくねえのに。
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