103.文化祭二日目
文化祭二日目。今日で文化祭も終わってしまうが、本日は日曜日ということもあって人では昨日よりも多い。
学校選びに来た中学生。卒業生や在校生の親。友達はその友達の友達。
近所の人やその他色々な人が来場していた。
「次はいりまーす!」
俺は今日も朝から仕事に追われていた。もちろん、隣の櫛引も同様だった。
また、他のクラスメイトは何をやっているんだよ。人手不足過ぎないか? と疑問に思うかもしれないが、受付や列の整理やその他諸々の仕事がある。
特に受付と列の整理、自由時間や教室内の案内役、驚かせ役と多岐にわたる。
また、絶対にサボっていると思うが広報担当として学校内で宣伝もしている。
「……」
櫛引は昨夜の件もあってなんだか気まずい。今日は一言二言、会話らしいものもなくひたすら仕事に従事していた。
それにチラチラと俺を見てきて、目が合いそうになると逸らされ。
なんだかもどかしい時間が続いていた。
「次行きまーす!」
受付の人の合図があり俺は頬を叩いて集中する。さて、次のお客さんはどんな人かな?
ビビりな人? ホラー耐性のある人? それとも……?
「へぇ~これが千隼のクラスのお化け屋敷なんだね~。楽しみ」
この声……長谷部!?
櫛引も気づいたらしく唖然としていた。
「ほおほお。ビデオを見てからなんだ。どれどれ……」
なんだろうな。俺に聞こえるように実況するのやめてもらっていいですか?
絶対あいつはわかって言ってる。マジでやめろ……本当に!!!
「えー千隼出てるじゃーん。しかもなに? ホラー映画に出てくるお調子者キャラみたいじゃん! ウケるんだけど!」
「……」
「あの女……」
櫛引。頼むから面倒事は起こさないでくれよ……。
「え、ぎゃはははははははははは!!! なに今の断末魔!? 迫真すぎじゃん!? ちょーウケるんだけど!!!」
俺のお手本のような断末魔を繰り返し聞いたせいで感覚が麻痺してしまったが、知り合いに見られると思うと途端に恥ずかしくなる。
「あいつ……」
「あーあ。始まる前から笑っちゃった。で、千隼はどこかな~? お~い! いたら返事してよ~」
ビデオが終わり長谷部は案内に従って歩き始めた。
つーか。俺の名前を呼びながら歩くな! いっちゃん恥ずかしーじゃねーか!!
長谷部は仕掛けに驚きながらも進み、ついに俺と櫛引のいるエリアまで来てしまった。
「おーすごいイラスト。これを描いた子は将来有望だー」
俺と櫛引はこのままスルーしようかと思ったが、日本人の生真面目な部分が俺たちを許さない。嫌々ながらも長谷部が通るタイミングで二人揃ってバッと姿を現して驚かす。
「うわっ!? ビックリし……あっ! この声は千隼とあっすーじゃん! やほやほー元気? しっしっし」
まあわかってはいたが声ですぐにばれてしまった。
しかし、俺と櫛引は布を外すことなくその場で微動だにせず仕事に徹する。
「あれー? おーい! もしもーし。千隼とあっすーでしょ? そんな被り物しているけどすぐわかったよ。君たちのお化け屋敷は中々よかったと思うよ!」
「「……」」
「ねーねー。無視はよくないよー。しょうがないなー」
長谷部は何をとち狂ったのか、俺たちのいる所まで入り込んできた。
俺と櫛引は部外者である長谷部を追い出そうとするが、彼女によって被り物を剥がされてしまった。
「やっぱりそうじゃーん。やあやあ、元気だったかい?」
「……お前な。ここは部外者は立ち入り禁止だ」
「そうよ。あんたが来ていい場所じゃない。とっとと出口から出て行きなさい」
「二人とも冷たいなー。折角私が君たちの学校に来てやったというのにさ。それに……二人とも妙に仲がいいような。私の気のせい?」
長谷部の目は何かを企んでいるようあった。それとも別の意図があるのか。
「偶然一緒になっただけだ」
「そ、そうよ! あんたには関係ないでしょ!」
「ふーん。二人はそう言っているけど、やけに息がピッタリだった。それにやけに距離も近い。はっ!? これはもしや……NTRってやつ!?」
長谷部はわざとらしくガーンとリアクションをした。
「あっすーに千隼が寝取られた!? つまり私はそれをクローゼットの中で涙を流しながら二人の情事を見せられるという、エロ同人ビックリな展開が!?」
「やめいやめい! なんでそんなエロ同人に詳しいんだよ。お前は櫛引かっつーの」
「はぁっ!? なんで私の名前が出てくるわけ? 私がそういういかがわしいものが好きなわけないでしょ?」
「嘘つけ。お前の家の本棚に寝取られもののタイトルの漫画があったの知ってるからな」
「あ、あれは……! ちょっと有名な恋愛漫画であって、そういう変なものじゃないし! つーか、私の本棚を勝手に見ないでくれる!? キモいんだけど!」
「視界に入るんだっつーの。ちゃんとそういう本は隠しておきなさい」
「ああ……これよこれ。寝取られる彼氏彼女たちはこういう気持ちだったのかな? とても悔しい! びくんびくんっ!!!」
「やめろ! ここをR18にするんじゃねー!」
このままでは埒が明かない。俺は気持ちよさそうに頬を朱に染める長谷部の背中を無理やり押し、教室から追い出すことに成功。
あいつのせいでまだ午前中なのに疲労度がすごいことになってしまった。
ちなみにだが、しばらくしてすぐに長谷部が入場し、これがNTRの神髄!?
という意味の分からないリアクションをして悶絶していたので、出禁になりましたとさ。
はぁ……。
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