60.勝負の行方は……!?
ゲームは中盤へと差し掛かっていた。
普通であれば勝負が拮抗していて、最後まで熱戦が繰り広げられる――はずだった。
だけど、予想以上にゲームが下手くそなアズチーこと櫛引とマリリンこと長谷部。
俺だって二人の勝負を盛り上げようとわざとミニゲームで手を抜いたり、二人をアシストするように行動しているが、俺の努力はすべて無駄に終わってしまう。
あるときはわざとルートを間違えてフラッグをアズチーに譲ったが、所持金が足らずか獲得できずCPUに取られる。
マリリンがフラッグ獲得チャンスを迎えたが、俺のプレイを見てアイテムが欲しくなったようで購入。
そのあとすぐの所持金を出し合ってのガチンコバトルに突入して、マリリンは惨敗を喫し所持金をすべて失う。
もう呪われているとしか思えない二人に、俺は頭を本気で抱えてしまった。
「ちゃんとやってんだよな?」
「「もちろん!!!」」
そう自信満々に言われたらもうお手上げだ。
ミニゲーム『なぐって! なぐってほりすすめ!』という、ボタンを連打するというシンプルなミニゲームをしているとき。
キャラクターたちが岩を殴っていって、最終的に壊してその先にあるゴールを目指すというものだ。
俺はなるべく二人のうちどちらかに勝ってほしいので、手加減しながらボタンを連打していたはいいが……。
「い、いった~ぁい!!! 手が、手がぁっ……!!?」
アズチーはボタンを連打し過ぎたせいで、腕がつってしまい悶絶。
一方、アズチーが早々に離脱したということでマリリンの勝ちかと思ったが。
『私の勝ち――あれ? ボタンが? あれ、反応していないけど? おっかしいな~?』
マリリンこと長谷部が壊れる勢いでボタンを連打した結果、コントローラーが先に逝ってしまったようだ。
マイクが音を拾うくらい、ガチャガチャいっていたから壊れるんじゃないかと危惧していたがと、なぜこの奇跡的なタイミングでコントローラーが壊れるんだよ……。
「あー俺の勝ち。だな」
ポチポチと適当に連打していると俺の操作しているキャラが岩石を打ち破りゴール。続いてCPUがゴールして二着。
制限時間が過ぎてしまい、二人は脱落となってしまう。
ミニゲームの最終順位は俺、CPU、同列三位でアズチーとマリリンという結果に。
それぞれ順位によってマネーが配布されるが俺は溜まっていく一方。
アズチーと櫛引は無駄にアイテムを購入したり、イベントでマネーを没収されたりと散々な結果に。
普通であればやる気が消失したり、物に当たったりして雰囲気が悪くなるのが普通。
みんなも経験があるだろう。
通称、友情は買いゲームと呼ばれるゲームを友達とプレイし、こちらが一方的に勝ち進んでいくと友達が不機嫌になり、最終的にゲームプレイを放棄して口喧嘩になってしまう事。
昔の俺はそんな友達を一切フォローせず、雑魚だの敗者の言い訳だの煽った結果、友達がいなくなりました!
「くっそー! 次は勝ってやるんだからねー!!!」
『お兄さんは強いなぁ。でも、負けないよ!!!』
「あ、うん」
俺はフラッグを五つゲットし、マネーだってカンストしてしまった。
これ以上、俺という脇に徹さないといけない人物が一位を独占すると、見ている視聴者も不満が溜まって来ることは必然だ。
『クソつまんねーな』
『お兄さん手加減しろって』
『ごみ』
『さすさすさす』
コメント欄は荒れ気味。
普通であればこの荒れようを見て、多少なりとも気にするものだが肝心の当事者二人は勝負にお熱でコメントが視界に入っていないようだ。
というか、手加減してこれなんだよ……。
俺が勝負を譲ったら、二人による熱い譲り合いが発生してCPUが一位を勝ち取る。
CPUが勝ってしまうのは、それはそれで配信が地獄になると思ったので、俺がCPUを蹴落としていくと俺が一位になってしまった。
どっちにしろ、地獄が待っているということだ。
もうやだ……誰か助けてくれ……。
俺の心の嘆きが届いたのか、アズチーとマリリンにチャンスが訪れた。
イベントのそれぞれをアズチーとマリリンの二人が勝利をおさめ、それぞれフラッグを獲得。
「えへへ~☆ これでわからないぞー!!!」
アズチーはフラッグを獲得して調子が良くなったのか、いつものアズチーに戻っている。
『少し出遅れちゃったけど勝負はまだまだ。お兄さんは私がいただきます!』
マリリンも上機嫌のようだ。相変わらず変なことを言っているせいで、マリリンのリスナーに目の敵にされているのはマイナスだが……。
これでそれぞれのフラッグ獲得数は、俺が三つ。CPUが二つ。アズチーとマリリンが一つ。
ゲームは中盤に差し掛かったが、やっと勝負が面白くなった。
コラボ配信で当初はどうなるのやらと心配したが、これなら終盤にかけて盛り上がる。そう思っていました。
「ん? あれ?」
アズチーの操作時、彼女が止まったマスですべてが変わってしまった。
「あっ……」
メリモの仇敵、大泥棒Yが突如として現れて不敵な笑い声を上げる。
そして、大泥棒Yが二つのルーレットを回し、それぞれアズチーとマリリンの操作するキャラクターのところで止まった。
『二人のフラッグをいただくとする! では、サラダバー!!!』
大泥棒Yは二人のフラッグを盗み、そしていなくなってしまった。
「……ここまで来ると運がいいなぁ」
そんなことをこぼす俺だったが、盗まれた二人は激怒してしばらくの間、ゲームが中断するのであった。
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