61.三位争い

 ゲームは終盤。

 ここまで互角の勝負を繰り広げ、果たして最後に抜け出す人は誰になるのか――。


 きっとみんなはこんな展開を期待しているだろう。

 中盤までは散々な結果だったが、アズチーとマリリンがゲームに慣れて連戦連勝……になるはずがない。

 終盤になっても俺が圧倒的優勢であることに変わらず。


 というか、もう圧勝が目に見える段階に来ており、俺は一人頭を抱えてしまった。

 なんだよこれ……もうやだぁよ……。


 櫛引と長谷部はもう一位を狙えないということで、熾烈な三位争いを演じていた。三位争い、といってもマネーの差はなく拮抗しているため、どちらが再会になってもおかしくない状況だ。


 ここに関しては、まあ面白いことになっており、リスナーの多くが三位争いに夢中となっており、ヘイトが俺に向かなくなって一安心。


「ラスト……三ターンのようね」


 アズチーのご指摘通り、このゲームはあと三ターンで終了。

 ゲームが終了すると結果発表に移る。


 誰が一番フラッグを獲得したのか。

 誰が一番ミニゲームに勝利したか。


 他にもイベント発生した回数が多かった人など、パーティーゲームらしくそういったところでもポイントが発生し、最終順位が決まる。


 ただ、フラッグを集めればいいというわけではない。

 ミニゲームに勝ち、多くのイベントを発生させないといけない。


『最下位はアズサちゃんがお似合いね。私が三位という高みに行くから、最後まで惨めに足掻くといいわ』


「ふっ。好きに言えばいい。最後に勝つのは私よっ!!!」


 本当であればカッコイイというか、盛り上がる場面だろう。

 が、彼女たちが争っているのは三位争い。それも低レベルな。


「が、頑張れよ。二人とも」


 俺は嫌味にならないようにさり気なく応援することにした。

 というか、すでに俺の言葉は二人に聞こえておらず、バチバチに争っているので蚊帳の外状態だ。


 ラスト三ターン。最初はアズチーの番だ。

 ルーレットが回り、三が表示された。アズチーが操作するキャラクターがマス目を進んでいき、マネーゲットマスに止まりマネーをゲット。


 続いてマリリンの番。マリリンはアイテム『カレーのルー』を使用。カレーのルーを使用したことにより、マリリンのルーレットは二つに増えた。


 ちなみにメリモというキャラクターがカレーのルーを食べると力が出て体が大きくなるという仕組みだ。

 開発者にカレー好きがいたので、そういう設定ができたとか。


 そんな小話を挟みつつ、マリリンは合計九マス進み、こちらもマネーをゲット。

 CPUは可哀そうにマネー没収マスに止まってしまい、所持金が減ってしまう。


 ラスト俺の番。

 俺はアイテム『自由のツバサ』を使用。これにより、フラッグがゲットできるマスに直行できる。

 俺はフラッグがゲットできるマスに到着。マネーを支払いフラッグをゲット。


 これで俺のフラッグは六枚目。他にフラッグを持っている人はおらず、俺の勝ちは確定したようなもの。


 熾烈な最下位争いはラスト一ターンで決まることになった。


「ふふ。泣いても笑ってもこれが最後! マリリンちゃん! 覚悟!!!」


 アズチーが威勢よくルーレットを振るが、一マスしか進めず。

 それもマネー没収マスで、これでアズチーの所持金がゼロとなってしまった。


『あっはっはっは!!! 威勢よく言っておきながら所持金がゼロって……もう、これで私の勝ちは決まりのようだね~っしっしっし』


 そう言ってケラケラと笑いアズチーをバカにするマリリンも所持金もゼロに近い。

 かなり低レベルというか、低次元での煽り合いとなっている。


『私の勝ちよ!』


 マリリンはマネー没収マスに止まり、こちらも所持金がゼロとなってしまう。

 最後に俺が所持金プラスマスに止まり、ミニゲームが始まる。


 こちらも俺が圧勝してゲームが終了。

 最後はボーナス勝負となってしまった。


「絶対に私が勝つ。勝つ。勝ってやるんだから!」


『しっしっし。そんなこと言っても無駄なのにね~。どう見たって私の勝ちじゃ~ん』


 どっちもどっちでは?

 だが、二人のファンはそれぞれ推しの勝利を確信しているかのようなコメントが散見している。


 どちらの信者力が試される。そんな雰囲気だった。

 さて、運命の結果発表が始まった。


 当然ながらフラッグを独占している俺が一位で間違いない。

 あとはボーナスでどれだけポイントもといフラッグがもらえるかだ。


 ミニゲーム勝利数が多かったもの……メリモ!!!

 メリモにフラッグが付与されて、ゲーム内のボルテージが上がった。


「ちょっと、空気読んでよね」


『ねー。つまんなーい』


 二人にチクチクと嫌味を言われる。


「CPUに負けるよりはいいだろ?」


「……CPUの方がまだましな気がする」


「アズサちゃんに同意。なんでたち……お兄さんが買っちゃうんだか。ただの脇役のくせにね~」


 おい長谷部。俺の苗字を言いかけたし脇役が出しゃばってすみませんね。

 グチグチと言っている間にもボーナスタイムが続き、所持金所持が多かったものでまたメリモにフラッグが与えられる。


 こうも一方的だとコメント欄も冷めているのか、つまらないだの消えろなどの暴言が目立ってくる。

 それらは後でブロックしておくとして、俺はいたたまれない気持ちになりながらも耐えることに。


 続々とボーナスが俺に与えられていき、ボーナスタイムが終わってしまった。

 最終順位はこれからの結果発表次第となった。果たして……。


『結果発表!!!』


 ゲーム内で司会を務めるネズミのチューさんがそう言うと、じゃらじゃらじゃらじゃら、という聞き馴染みのあるSEが流れる。


 そして、同率三位でアズチーとマリリン。二位がCPUで一位は俺という結果で終わった。

 いや、まあ、うん。予想通りというか、何の波乱もなくゲームの成績通りの結果に落ち着いたという表現が正しい。

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