SS(ショートショート) 変な人に好かれる才能?

 あれからというもの。長谷部から鬼のように電話をかけてきたりメッセージが送られてきたが、すべて無視。

 絶対にダル絡みされることはわかっているし、カラオケの件でもう関わりたくないと思ってしまった。


 長谷部は自分が欲しいと思ったものを手に入れたい人だ。

 あの一件で彼女の本性がわかって一安心。

 なんで俺みたいなひねくれものがあいつに気に入られたかはわからん。


「はあ……」


 六月の貴重な休日が長谷部によって潰され、休日明けの月曜日が嫌となるほど憂鬱だった。朝からやる気がなく、仮病でも使って早退したい気分だった。


 が、期末テストは中間テストよりも難しいと、先生方が脅しのように喧伝していくから下手にサボれない。

 なーんで期末テストって難しい傾向あるの?

 

 嫌がらせかな?

 そんなことを思いながら本日の授業が始まる。


「ん?」


 俺はダラダラとノートを取っていると、横から紙屑が投げ込まれた。

 おいおい、俺はゴミ箱じゃないぞー?

 また新手のいじめですか?

 と、思って紙屑を広げると何か書いてあることに気づいた。


「昨日は大丈夫だった? by綾瀬……」


 隣の綾瀬からのメッセージだった。

 チラリと隣を見ると綾瀬と目が合い、アイコンタクトで返信をしなさいと言っているようだった。


 俺はルーズリーフをちぎって切れ端を作り、かきかきと文字を書き込んで綾瀬の机に放り投げた。

 問題ない、と一言書いただけ。


『本当に……?』


『ああ』


『長谷部さんはあれから何かあった?』


『ストーカー真っ青なほど連絡が来たけど、今はピタリと止まった』


『そう……それならいいけど』


『そこまで気にしなくてもいいんじゃないか?』


『なぜ?』


『あれくらいで凹むような奴じゃないからな。今もどこかで元気にやってるだろ』


『本当かしらね……?』


『平気平気。今頃ケロっとしてるだろ』


『うーん……橘君って、変な人に好かれるのね』


『そんな才能いらねぇ……なんだよ、それ。綾瀬もその変な人に入っているってことか?』


『ふーん。その発言撤回しなくて平気?』


『あ、や。すんません……』

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