SS(ショートショート)綾瀬が見つめる先には

 綾瀬莉子は新生活に慣れ始めていた。

 当初は見知らぬ人たちに囲まれ、まるで見世物小屋にいるような窮屈な日々を過ごしていた。


 だけど、ある日を境に鳥かごから解放されて自由気ままな生活を送れるようになった。

 あるクラスメイトたちによって救われた綾瀬は今も二人に感謝している。


「……」


 授業中のこと。

 綾瀬は教科書とノートを開き、しっかり先生の話を聞きながらメモを取る。

 彼女は真面目な生徒であった。


 綾瀬はふと、隣に座る男の子が気になった。

 彼の名前は橘千隼。少し変わった男の子でクラスの評判はあまりよろしくない。


 ひねくれもの。口が悪い。目つきがキモイ。

 散々な評価に綾瀬は笑ってしまった。


 綾瀬は知っている。

 本当の彼はとても優しく、そして人のために自分を犠牲にできることに。

 そんな人間は滅多にいない。


 橘は頬杖をつき、ウトウトとしながら授業を聴いているフリをしていた。

 うつらうつらしていて、頬杖の絶妙なバランスによって崩れずにいる。


 綾瀬は先生が黒板に何か書いている隙に橘の頬をシャーペンで突いた。

 橘ははっ、と目が覚めて何が起こったのか周りをきょろきょろと探索している。


 そんな橘が可笑しくてたまらず、綾瀬は声を押し殺しながら大笑いする。

 彼女の求めていた日常がここにあり、いつまでも続けばいいと綾瀬は思うのだった。





諸事情により、本日の更新は以上です。

大変申し訳ございません。

明日もSSを投稿予定ですのでよろしくお願いします。

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