SS(ショートショート)大っ嫌いなあいつ
櫛引はイライラしていた。原因はクラスメイトの男子生徒のある一言によってだ。
名前は橘千隼という。この男は人一倍にひねくれており、歯に衣着せぬ発言も多々あり彼を嫌う人も珍しくない。
櫛引も本来であれば橘という男と関わるつもりも仲良くするつもりは毛頭なかった。しかし、彼女が気になっている男の子、高橋と仲良くなると必然的に橘と関わる機会も増えてくる。
「……ほんとなんなの?」
櫛引はお気に入りのクマのぬいぐるみを大事そうに抱きしめながらベッドで横になり、橘に言われた言葉を繰り返し思い出しては顔を赤らめ、ベッドに感情をぶつけていた。
「なにが『素のお前が好き』って、なんなの? もう……」
橘としては思ったことを口にしただけに過ぎないだろう。彼が本心を偽り言葉に発することはしない。もちろん、照れ隠しのために否定したり無言になることもあるだろうが。
そんなクラスメイトの言葉に櫛引は悶々とした気持ちを抱え、常に彼のことばかり考えてしまっていた。
「私が好きなのは高橋君なのに……」
異性として、一人の人間として大好きなのは高橋。それなのに、今彼女の脳内を支配しているのは橘という、死んだ目をしたひねくれ青年であった。
「大っ嫌い。大っ嫌いなんだから……」
櫛引はそう呟くが、彼女の顔はどこか嬉しそうだった。
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