27.ゴールデンウィークが終わるとテスト!
ゴールデンウィークはあっという間に終わってしまった。
期間にして約一週間ちょっと。短い休みが終わり学校がスタート。
学校に向かう生徒もどこかだるそうだが、久しぶりにクラスメイトと会えるということもあり希望に満ち溢れている。
学校に行くまではしんどいかもしれないが、教室に着けば気の知れた相手と会えば元気になるという。
橘はどうなのかって?
そりゃあ決まってんだろ。寝不足だよ……。
ゴールデンウィークの最初の方は山あり谷ありだったが、それ以外は満足といえるほど充実した日々を過ごした。
お昼近くまでベッドと共に過ごし、それから家から一歩も出ることなく溜まっていたゲームをひたすら消火。目が疲れてきた頃合いを見計らって風呂に入り、積んでいたラノベや本を読む。
で、夜中まで起きてアニメ鑑賞。やっぱりアニメはリアルタイムに鑑賞するのが一番!
特に今期は面白アニメがいくつかあるが、特に気に入ったのはあのファンタジー作品。俺も魔王を倒したファンタジー世界を旅したくなるが、そもそも人見知りで仲間を作るようなほど外交的な性格をしていないのですぐに諦めた。
さて、そんな感じで明日に学校が控えているにもかかわらず、俺は深夜まで自堕落に起きているとあっという間に朝を迎え、睡魔との一進一退の攻防をしながら登校。久しぶりだな、我が高校よ。やっべ。寝不足過ぎて変なテンションになってる。
教室に入り倒れこむように机に突っ伏して寝る。はあ。憂鬱だ。
五月はゴールデンウィークが終われば祝日などないに等しい。
更に来月には誰もがうんざりすると六月になる。梅雨の季節+祝日が一日も存在しないダブルパンチで嫌いな人も多い。
はあ……。
なんでゴールデンウィークってこんなにも短いんだ。毎日がゴールデンウィークだったらいいのになぁ。そんなことをぼやきながら惰眠を貪っていると、ドタドタと慌ただしい足音が聞こえてきた。
「おはよう。細川、ゴールデンウィーク明け早々慌ただしいけど、なにかあったのか?」
この声は高橋。俺に気をつかって話しかけていないが、すぐ俺の傍に立っているようだ。相変わらずの優男。気をつかって俺に話しかけないあたり、俺が女だったら一瞬だけ惚れていかもしれねぇぜ。
「っべーよ! っべーって!!!」
細なんとか、ちゃんと日本語を喋りなさい。何を言っているのか理解不可能だ。
もしくは、彼が生みだした新言語かもしれない。
すみませーん。ここに新人類がいまーす。
「ちゃんと言わないとわからないだろ?」
「あっ! めんごめんご~! ガチでっぱねぇから言葉が出てこなくってさ~」
「大変なのはわかったから。なにがそんなにやばいんだ?」
「あれだよあれ! テスト! 中間テストがあるじゃんかー!」
中間テスト。確かゴールデンウィークが終わった一週間後に中間テストが控えているんだっけ。俺からすると毎日真面目に授業を受け、ノートを取っている俺のような模範生徒からすると大した問題ではない。
この細なんとかは日本語を忘れてしまうくらい慌てているが、何をどう心配しているのか俺にはわからなかった。
「中間テストか。そういえば来週にあるんだったよな」
「そーなんよ! ガチのマジでピンチっつーか? デンジャーなんよね、俺」
「ふむ」
「はるっち~! 俺に勉強教えてくれないっすかね? 頼む!!!」
なるほど。なんとか川は授業中はふざけているか寝ているかの二択しかない人間なせいか、どこからどこまでテスト範囲がわからず、ロクに勉強もしていないから危機感を抱いたいるようだ。
そんな授業料を台無しにするような不真面目は自業自得。放っておけばいいと普通は思ってしまうが、高橋浩人はそんな男を見捨てたりしない。
「そっか。僕に任せてよ! 今日から放課後、一緒に勉強しよう! もちろん、橘も一緒にね!」
「はい?」
聞き捨てならない発言があったので俺は起き上がって高橋を睨んだ。高橋はペロッと舌を出してウインク。おチャラけても俺が許すとでも?
「えーばなっちも一緒的な~? え~ばなっちって勉強できる系なの~?」
「俺を何だと思ってるんだ。お前と違ってちゃんと勉強しているつもりだ」
「橘は評定で三以下を出したことがないんだ」
「マジのガチ!? ばなっちめっちゃ頭いいじゃ~ん! 意外だわ~はえ~」
「意外で悪かったな。あのな高橋。俺は勉強に付き合わねーからな」
「なんで? 少しくらいいいじゃないか」
「ダメだ。どうせそこのバカは勉強をするといってもまともに集中力がねぇから、すぐにスマホをいじるか遊び始めるのが目に見えてる。というか、まともに授業を受けてねぇからノートすらねぇんだろ? そんなやつにノートを見せたくないしコピーすらさせたくない。そんな奴と一緒に俺は勉強したくねぇ」
「ばなっち、ひどい……」
「うるせぇな。細なんとか。お前に言ってねぇんだよ」
「細川! 細川
「はいはい。で、高橋。もう伝えたからな。俺は今回ばかりは断る。絶対にだ」
細なんとか川は一人拳銃で撃たれたかのように後方に倒れてしまうが無視。
「うーむ。橘は頑固だな」
高橋は腕を組んで悩む。俺としてはここは断固として協力するつもりも、勉強会をするつもりもない。勉強は結局のところ一人での戦いだ。一人で努力しようとせず他人に頼る時点で怠慢甚だしい。
「高橋が細なんとかと勉強すればいいんだよ。じゃあ、後は任せた」
「でもたちば――」
俺は再度、朝のHRが始まるまで小睡眠をとろうとしたが、そこに嵐の如く現れる一人の女子生徒。
「た、大変~! 高橋君! 橘君いいかな~?」
「うげぇ……櫛引か……」
疲れても息が上がってすらいないのに、膝に手をついて演技をする櫛引。
これはとてつもなく嫌な予感がプンプンするんだが。
「どうしたの? 櫛引さん?」
高橋が心配そうに聞くと、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて高橋の手を取った。
「あのね~。私って~勉強があまり得意じゃなくて……だから、高橋君に勉強を教えてほしいな~なんて。でも、迷惑だよね? 高橋君だって勉強しないといけないし……無理、だよね?」
「全然! むしろ大歓迎だよ! みんなで一緒に勉強をして教え合えば効率もいいし、一緒だから頑張れるからね!」
「本当に~? うわ~ありがとうね~♡」
勝手に話が進み、更に参加者まで増えていく始末。俺はきっぱりと断る意思を伝えるべく声をあげようとするが、スタスタと近づいてきた櫛引は満面の笑みを浮かべながら耳打ちしてくる。
「橘君も、勉強会するよね?」
「しねぇよ。てめぇらでやればいいだろ」
「ふーん。協力してくれたらまた別のボイスあげようかと思ってたんだけどな……」
「なにっ!? 次はなんだ!? おやすみボイス!? それともがんばれボイスなのか!?」
「食いつき方がキモいからやめて。まじで!」
「教えろって! な、なにをくれるんだ?」
「……め、目覚ましとか?」
「ふっ……櫛引。俺がそんなボイス一つで意見を変えるような軽い男だと思ってるのか? すみません。ちゃんと協力するんでボイスください。足でも靴下でも舐めるんでお願いします」
「うっわ……って舐めようとするなバカっ!!!」
俺はアズチーの魅惑のボイスにすぐさま陥落。
勉強会に参加することになるのだった。
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