第18話:可愛い子は風呂に入れよ
「とにかく、 キバちゃんは1回 家に連れて行ってお風呂に入れます!」
いずなは、自分の発言が正義とでも言わんばかりに自信をもって言った。
「了解……でもなんで?」
「なんででもです! 女の子はきれいにしておかないといけないのです!」
あんだけ痛い目見たのに、 自ら妖怪を家にまねこうってか。 俺は驚きを隠せなかった。
「危ないとか思わないのか?」
「もちろんです!」
「 発想が斜め上すぎる。作者のプロットでもここは俺の 過去についてとか話す場面じゃないのか?」
「そんなメタ発言やめてもらっていいですか!?
キバちゃんは、 今からお風呂に入れるために 家に連れて行きます! これは決定事項です!」
人気の出ないアニメが急に脈絡もなく入浴シーンやプール回を突然ねじ込んで来ることもあるだろうけどさ。まあ、キバ汚いけど、妖怪だし……。
「あと、お母さん帰ってきました。お騒がせしました」
ペコリといずなが頭を下げた。律儀。かまいたちにその関係を切られたのかもしれないが、親子であることには違いがない。
1度切れた関係も修復されたのだろう。血が繋がっているというのはそれほど強い繋がりなのだ。
「いやいや、 良かったけれども!それは、良かったけれどもね?」
「どうしたんですか? 喋りが大泉洋さんみたいになってますよ?」
俺たちが話していると、キバは俺からクッキーをふんだくると少し離れて美味しそうに食べていた。 その後、 黒猫の姿に戻ったかと思うとふっとしかいから消えた。
物陰に行ったとかそういうのじゃない。人の視界の外に 出て行った感じだった。
そして、俺とイズナはなぜかいずなの家に向かって歩くことになった 。
帰路については俺たちは高校生らしく歩きながら話しながら帰ってる。 そこでいずなが雑談を持ちかけてきた。
「山田くんは何人家族ですか?」
「うーん、 多分 4人かな?」
「なんでそこがあやふやなんですか!?」
「 ちょっと 定かでなくて……」
ツッコミはごもっともなんだけど、記憶があやふやなのはしょうがない。
「家には帰ってないんですか?」
「いや、帰ってる。そこの家族が4人」
「へー。じゃあ、『妖怪退治屋』さんの家族は何人ですか?」
「妖怪退治屋には家族はいない」
「やっぱり! 私、思うんですけど 山田くんの中の人は妖怪退治屋さんだと思います」
「中の人とか言うな」
「そして、すごく昔から タイムトラベル的にやってきた!」
「タイムトラベルして、 陰キャぼっちの意識に入るとか 複雑で斬新な設定だな」
「仮にその人をA吉くんとしましょう」
「矢沢永吉?」
「アルファベットの A です」
「文字にしないと分かんねーよ。あと、お前のセンスがわかんねえ」
いずなは、俺のツッコミに関係なく話を続けた。
「A吉 君は10年前……だと話が合わないか。 15年前から現代にタイムスリップして 山田くんの体に乗り移りました 」
「それだと 俺が 妖怪的じゃないか」
「そうです。人間の心に 妖怪の体を持つ男。 そして、そのヒーローが悪い妖怪を次々倒していくんです」
「いやいやそれもうほとんど 仮面ライダーだから! しかも昭和の仮面ライダーだから! 令和のライダーはそんな目的で戦ってないからね?」
「A吉くんは予言ができて、バスケットボールが上手です。その上、妖怪退治ができます。15年前から来たとして、現在おいくつでしょうね?」
いずなが二ッと笑って訊いた。
「何が言いたい?」
「A吉くんが現在のどこかに生きているのでは、と? 異世界転移ものとかでは、転移する前主人公は死んでることがおおいぞ?」
「それだと、現在の山田くんがいなくなってしまいます」
なるほど。確かに山田の記憶は俺の中にあるけれど、本人の意識は感じられない。いつの間にか、俺も自分をA吉だと思っているし、山田が別人格だと思い始めている。 これはいずなの喋り方が上手いのか それとも俺が他に乗せられやすい性格なのか……。
「そこで私考えたんです。山田くんは屋上から飛び降りようとしてたんじゃないかって」
「ぶっとび理論だな」
「でも、あの屋上ですよ? 階段もないし、梯子で上っていくあそこに人が行くのは普通じゃありません」
「お前がそれを言うか」
そう言えば、こいつの一家はかまいたちに呪われていたな。何でもかんでも切られてた。友達とのつながりも、両親とのつながりも、もしかしたら、この世とのつながりも……。そう考えると飛び降りようとしてたのもかまいたちの呪いの一環だったのかもしれないな。
「山田が別にいるとしたら、戻すためには俺も元に戻る必要がありそうだな」
「そうですね。現在の山田くんが16歳で、15年前からタイムスリップしたとして、現在46歳くらい!? 山田さん!」
いや、急にさん付けに変えんなよ。色々思考が斜め上なヤツだ。しかも、頭が良さそうだ。
「ただ、A吉さんは私にまだ言ってない事がありますよね?」
「誰がA吉さんだ」
「A吉さんはケガがすぐ治りますよね? やっぱり、あの時ってかまいたちに胸を刺されましたよね!?」
「……」
「でも、私が見たときには傷は治ってた」
ちゃんと覚えてたかぁ………
「伏線のホームセンターでの釘の機械もやっぱり釘が飛び出して刺さってたんじゃ?」
「伏線とか言うなよ」
「そんな妖怪ってなんですか?」
「妖怪が死ぬかって話はあるけど、不死身の代名詞といえば人魚かな。その肉を食べたら人間ですら不死身になるって昔の本にも書かれてるし」
「じゃあ、不死身で予言ができて、妖怪退治ができて、バスケットボールが上手な妖怪って?」
「バスケする妖怪とか聞いたことないけどな。バスケ分引いても、そんなヤツは知らんな」
「やっぱり」
いずなは、仮説が証明できたみたいな確信を得たみたいな笑顔だった。
■お知らせ
すいません、ストックもなにもなくなったので、明日はお休みします。
新しいのを書いてて追いつかないです(汗)
すいません。遅くとも火曜日には更新予定です。
別タイトル「告白します!うちのラーメン屋のスープは袋麺のスープです!」は更新します。
https://kakuyomu.jp/works/16818093073032927110
よろしくお願いします♪
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