第11話:本当の妖怪退治の方法とは

 よく考えたら、妖怪退治と予言は一般人からしたらあまり関係ないように感じるかもしれない。そもそも、そこから説明していたら時間がいくらあっても足りない。そこで、俺はいずなに普段どうやって妖怪退治をするか話して信用を得る作戦に切り替えることにした。


 よし、普段どんな風に妖怪退治してるか話すよ。その上で今回のプランを説明する

 よろしくお願いします


 いずながペコリと頭を下げた。


「まず、妖怪だけど相手は妖怪なのだ。妖怪退治とは言うけど、退治できることなんてほとんどない。相手は神であり、バケモノであり、妖怪であり、悪魔なのだから」

「はい」

「退治とか祓うというより、交渉とか裁判とかのほうが俺的にはイメージが近い。こっちはここを我慢するのでここは譲ってもらえないか、みたいな」

「いわゆる交通整理みたいなことでしょうか」


 なぜ、こいつはおじさんみたいな言葉を使うのか。


「結界を家の周りに張って、妖怪が逃げられないようにするとこから始まる」

「結界! 締め縄みたいな感じですか?」

「そう、締め縄だ」

「あんなの効果あるんですか?」


 いずなが半眼ジト目で見てきた。こいつは半眼ジト目をさせたら日本一だろう。


「効果てきめんだ。結界を作ったら、妖怪は逃げられない」

「霊感がない山田くんが作ってもですか?」

「……多分」

「そこは言い切ってください!」

「だって、俺、霊感ないから見えないし」

「だったら、どうやって妖怪だって判断してるんですか!?」

「それは、色々あるんだよ。それは後で説明する」


 これを話すとなると、色々面倒くさい。できれば話したくないというのが本音だった。


「……じゃあ、とりあえずいいです」


 いいんかーい! こいつ絶対悪い男に騙されるタイプだな。……この場合、悪い男って俺だろうか。


「服は着替える」

「白装束ですね!」

「だから、違うって。庭に水を撒いて、ボロボロの服を浸して泥だらけにする」

「その服で家に入ってこないですよね!?」

「いや、バリバリ入る!」


 今度は、いずなが眉を段違いにしている。本当にこいつの表情は分かりやすい。色々言わなくても『絶対嫌!』って伝わってくる。


「床にビニールシート敷いてもらえますか!?」

「……善処する」


 準備するものにブルーシートが追加されたな。それも、防水タイプの高いやつ。


「ろうそくに火をつけたら交渉開始だ」

「あ、家にろうそくないです。オール電化なのでコンロもないです」


 ろうそくがないのは分かるが、コンロを代理で使おうと考えたのか!? 感性が個性的すぎて理解が追いつかないぞ


「次のステップとして妖怪が喜ぶ歌を歌ったり、祝詞を上げたりする」

「あ、なんか妖怪退治っぽくなってきました」

「その後、交渉だ」

「山田くん、妖怪が見えないんですよね!? 声は聞こえるんですか!?」

「いや、聞こえないけど!?」

「ダメじゃないですか!?」

「まあまあ。手はあるから」


「大体、妖怪が大事にしてるものを見せて、焼かれるのが嫌なら家から出ていってくれ、とお願いする」

「脅迫じゃないですか!」

「相手は妖怪だぞ? 普通の交渉で言うことを聞いてくれるもんか」

「どんなものを交渉材料にするんですか?」

「子どもかな」

「は?」

「妖怪の子どもを捕まえて焚き火の上に吊るすとか……」

「鬼っ!」

「それくらいのガチの交渉が必要なんだ」

「妖怪っていや 獣と一緒だからな。弱いところなんか見せたらそこにつけ込まれるんだから! ちょっと気を許したらすぐに命をとらえかねない 」

「そんなこと言って命を取られたことはないんでしょう?」

「まあ、ないな」

「山田くんは言ってることがちょいちょい 矛盾してます」

「まあ、そのあたりは気にすんな」


 こうして基本的なレクチャーだけは終わった。


「よし、じゃあ、妖怪退治に必要な材料でも仕入れに行くか」

「どこに そんなの売ってるんですか?」

「ホームセンターに」

「ホームセンター!? 最近のホームセンターは品揃えがいいとは聞きますけど、妖怪退治の道具まで置いてある時代なんですか!?」

「そんな特別な道具じゃないんだよ」


 普通のものを買うだけだから。 ホームセンターにも置いてある。例えば、ブルーシートとかね。

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