第10話:予言
俺はいずなが俺の能力を信じるように、予言を言って信じさせることにした。
「2011年3月11日 仙台で津波が起きる」
「んっ?」
いずなが変な顔をした。そりゃそうだろう。仙台と言えば東北だ。そんなところに津波が来るとか信じられないだろうしな。俺は続けた。
「多分、最初は大きな地震だな。そして、その地震によって津波が起きるんだ。波の高さはそんなに高くなかったから、最初はみんなそんなに心配してなかった。それまでに津波はあまり経験したことがなかったから、みんな気が緩んでたんだと思う」
「そういう風に言われる方もおられますね」
「いや、結構大きな地震に驚いていたと言ったほうが正しいか。地震と津波の天変地異2つが次々来るんだ。被害は甚大になる」
いずなの感想に俺は少し言い換えた。
「なりましたね」
「全国放送でニュースが流れるんだけど、海沿いの方に被害が大きくて、山の方はそこまで被害が出ない。地震が起きてから少し時間はあるみたいだから、地震が来たと思ったら山の方に逃げるのがいいだろう」
「結果論ですけど、津波が来たら高いところに逃げるっていうのが常識になりましたね。正常値バイアスって言葉が話題になりました。自分には絶対にそんなことは起きないっていう謎の信頼。誰かが『逃げろ』って言うことで我にかえって逃げられるのだとか」
「やけに同調してくるな」
「あぁ、そうですね。痛ましい災害でしたね」
いずながあまり驚かないので、続けて予言を言うことにした。
「 2016年4月14日、熊本で地震が起きる。結構大きくて、日本の測り方では震度7が一番大きいんだけど、実はそれ以上の揺れじゃないかって程ゆれる」
「たしかにかなり話題になりましたね」
「熊本の人の誇りであり、心のよりどころである熊本城の一部が倒壊する。その後何年も復旧できないだろう」
「天守閣は2021年に復旧しましたね。でも、全体は2052年の予定でしたっけ」
いずながあまり動揺していないので、彼女の言うことなんて無視して俺は予言を続けた。
「オール電化は災害に強いと思われがちだけど、電気がないと水も出ないし、照明が点かないし、お湯を沸かすこともできない。結局、避難所生活を余儀なくされることが分かる」
「福岡から比較的近い話なので私も心配してました。なんにもできないから、募金だけ協力したんです」
地震の予言とか昔からたくさんあって驚かないだろう。俺はもっと驚く予言をすることにした。
「2020年 3月未知のウイルスで日本中は混乱する。それまでに経験したことがない事象だから、信じられないかもしれないけど、日常生活がガラリと変わる」
「ダイヤモンドプリンセス号なんて、かなり話題になりましたね」
いずなは精神的に強いな。かなり衝撃的なことを言っているのに全然驚いていない。もしかして、全然信じてないからか? 俺はもっと詳しく話すことにした。
「人と人は会えなくなるし、経済も冷え込む。原因が分からなくて、感染したら死ぬっていう恐怖が先走りする。予防のワクチンや治療薬ができるまで何年かかかって、それまで人は怖がって外に出なくなる」
「たしかに、最初の方はかかったら死ぬって言われてましたね。段々と症状が軽くなっていったのは、ウイルスが変化していったからでしょうか」
未知のウイルスはまだ経験していない人間にしたら想像しにくかっただろうか。もう一つ津波の予言をすることにした。
「2026年7月横浜に津波が……」
「ちょっと待ってください! これまでに聞いた内容はもう過去に起こったことです」
「なんだと!? 今何年だ!?」
再びいずなに止められてしまった。たしかに予言の日時を過ぎてしまったら、その効果はないだろう。しかも、よく考えたら未来の予言をしたら、その時が来ないと当たっているかどうか分からない。
結局、今って何年なのかが重要だ。
「何年って……今年 2024年ですけど」
「2024年!? もう、俺の予言が終わってるじゃないか! 未来の記憶でウェーイするはずが! ところで、どうなんだ!? 俺の予言はどうだった!? 当たったのか!?」
「うーん……はい、概ね合ってますね。もし本当だったら、預言者って言っても驚きません」
既に過ぎているとは。なんてこった。これじゃ証拠にならないじゃないか。合っているとしても、俺が過ぎてしまってから過去のことを言っただけに過ぎないし、外れていたら間違ったことを言っていると思ってしまう。
「とりあえず、信じましたから。もう少し山田くんのことを教えてください」
「俺のこと知りたいの!?」
いずながついっと後ろを向いて言った。恥ずかしいからか!?
「嬉しそうな顔をしないでください! 妖怪退治について知りたいだけです!」
「これがリアルのツンデレか」
「誰がツンデレですか!」
全然話が進まないから、今度は妖怪退治について話してやることにした。
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