第8話:屑村との出会い

「山田くん、放課後一緒に帰りましょう」


 2組のいずなのクラスに行くと、屑村が俺に話しかけてくる。すでに恒例のことになってしまっている。


「 いや、放課後は用事があるんだ」

「 絆さんと一緒に帰るの!? どうして絆さんなの!? 山田くんと絆さんは 釣り合ってないわ!」

「誰と誰が釣り合ってるとか、そんなの関係ない。俺はいたいヤツと一緒にいるだけだ」


 屑村と話すと、セットで取り巻き2人も付いてくる。女子3人に囲まれての話は教室内でも目立ってしまう。しかも、俺は別のクラスだし。


「山田くんは倒れた私をそっと抱き起してくれました!」


 ん? ちょっと脚色が入ってきた!? 可憐に気を失って倒れた少女のように言っているが、ボールがぶつかって倒れた姿は車に轢かれたガマガエルのようで全然可憐でもなんでもなかった。まあ、ぶつけたのは俺なんだが……。


それが今ではこうだ。


「3人でカラオケに行きましょう!」

「あ、そうだ! 駅前に新しいカフェができました、行きませんか?」


 取り巻き二人の女子も俺を何とか誘おうと必死だ。なにこれ? 誘えると屑村から何かもらえるの?


「我が家に遊びに来られませんか?」


 極めつけとばかりに屑村が家に誘ってきた。


「すごい! 屑村さんのお宅に誘われるなんて! 屑村さんはお金持ちのお嬢様なのよ!」


 解説ありがとう。周囲の取り巻き女子が、誘われることの価値を説明してくれた。


 先日の倒れた屑村を保健室に運んで行って以来、この屑村という少女にはえらい懐かれてる。 屑村も容姿的には可愛いくないわけじゃないけれど、なぜこいつはこんなに執拗にいずなをいじめるのか。


 どうして仲良くできないんだ。同じクラスメイトだろうに。


 ***


 放課後、三度 屋上で作戦会議中だ。


 いずなが屋上でズタズタにされた教科書を前にすごく悲しそうな顔をしていた。いつの間にか 教科書がこんなになってたらしい。


 いや これはもうちょっと異常だろう。屑村は今日ずっと俺と一緒にいたぞ。なのにここまで嫌がらせするなんて。


「ちょっとお前のいじめは異常すぎる」


 ついつい率直な感想を言ってしまった。


「やっぱり、私が悪いということでしょうか?」

「いじめられるヤツが悪いとかあるわけがない。いじめるヤツが悪いに決まってる。俺が言ってるのはそうじゃない」


 いずなはどうしてこう自信がないのか。隙を見せたら、すぐに自分のせいだと思いやがる。


「だいたい、あのおまじないがこんなにも効かないのはおかしい。お前のことをもう少し聞かせてくれ」


 事情が分からないと対処法も思いつかない。正直、もっと簡単な問題だと思っていた。それでも、手を入れれば入れる程こじれていく。これはちょっとおかしい。問題解決の基本に立ち返って、いずなからヒアリングすることにした。


「別に私は普通にお散歩が好きな、ちょっと根暗な普通の少女ですけど?」


 高校生でお散歩好きがどれほどいるというのか。あと根暗と普通は共存できるのか!? 「普通」が2回も出てきたけど、わざとだろうか。色々気になるが、話を進めるためにここはスルーした。


「屑村はどうしてお前のこと あんなに嫌ってるんだと思う?」


 事実は別として、いずなの認識を確かめたいと思った。


「屑村さんとは高校に入ってから知り合いました。同じクラスになって、最初は仲が良かったんです」


 意外な回答が来た。仲が悪いのは最初からじゃなかったのか。じゃあ、生理的に受け付けないという訳でもなさそうだ。益々訳は分からないけどな。


「屑村さんがいいなと思った男子がいて、その人が私に告白してきた辺りからおかしくなってきました」


 なんだかありがちな理由が浮かび上がってきたぞ?


「私は屑村さんの気持ちも聞いていたので、お断りしたんですけど、その男子と屑村さんが仲良くなっていくにつれて私への当たりが強くなってきて……」

「ああ……」


 マンガかドラマか、よくありがちな理由でいじめは始まったらしい。


「最初は、ちょっと距離を置かれてるなーって感じた程度でした。悲しかったけど、でも学校生活においてはそんなこともあるかなって諦めてました。それがだんだん攻撃的になってきて……最近では……」


ズタズタにされた教科書を見た時よりも寂しい表情を見せるいずな。


「お前は何かしたのか?」

「いえ、特に……」


そういえば、以前、こいつ毎日お参りに行ってるって言ってた。


「毎日お参りに行ってんのか? 神社に」

「はい、毎日神社にお参りに行ってます。また葛村さんと仲良くなれたらいいなって」


良い子か。


「お前ん家と神社がどこか、どんな道通って神社に行ってるのか、この地図アプリで教えてくれ」

「いいですけど……でも、普通ですよ?」


なぜ、そんなことを聞くのかと少々合点がいかないらしい。でも、ちゃんと教えてくれるあたり良い子なのだろう。


「いつもこの道を通ってます」

「最短コースじゃないんだな」

「はい、趣味がお散歩なので、少し遠回りをして近所の猫ちゃんを見たり、花壇のお花を見たりして決まったコースで通ってます」


割と余裕があるな。


 今日なんか、いずなは屑村たちに無視され続けていた。いずなに聞けば、そっちの方が助かるのだとか。


 屑村たちに余裕があるといずなに何かしらのちょっかいをかけてくるので迷惑していたけれど、無視されるのは別に何ともないとのこと。


 図らずとも俺がこの教室に来て 屑村たちにちやほやされていた方が、いずなとしては助かるらしい。


 一応、俺はいずなの彼氏なのだけれど、それが他の女子にちやほやされている方が心が休まる、なんてこれはどう考えても普通の状況じゃない。


 よく考えたら いずなに俺が彼氏だって、別に認めてもらってないような……。あ。そんなことはどうでもいいか。


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