第50話 初めてのゲーセン




 本当に人生初めてのゲーセンに今俺はワクワクを抑えきれない。

 以前の学校でも友達に誘われたことがあったが、部活が忙しくて行けなかったのである。

 だからこそ、突如行くことになったこのゲーセンでの遊びを俺は今日の楽しみとしていたのである。


「あ~めっちゃ、楽しみっ!」


「そっそうですね。ぼ、僕も凄く楽しみで仕方ないで、す。」


「ですよね斉坂先輩!やっぱりゲーセン楽しみでしたよね!」


(やっぱり同志はいた。斉坂先輩!全力で楽しみましょうね!)


 そんなことを思っていると隣を歩いていた桐山と響也が意外そうにこっちを見てくる。


「お前ってこういうのに興味あったのかよ。じゃあ今度俺ん家でゲームしようぜ!」


「そんなに楽しみにしてたのか?そんな風には見えなかったが…」


『ゆう君もやる気満々だね〜言っておくけど私UFOキャッチャーとか得意だから。』


「UFOキャッチャーって?クレーンゲームみたいなものか?」


『あ〜そんな感じ。てかゆう君知らないの〜w』


「あ〜うっざ。知らないですよ、知りませんよそれが何か?」


『あ、逆ギレした!そっか〜知らないんだ…まあ私もクレーンゲームの一種としか知らないけどね〜』


(ならからかうなよ。美咲、おまえも同類だろ?と言いたいけど、怖くていえね〜。やっぱり俺の扱い酷くない?)


「取り合えず行きましょうか。入口で話していても他の客に迷惑ですから。」


「そ、そうだよね、は、早く行こっ、う。」


 確かに入口付近でこうつっ立っていたら迷惑だろう。

 流石我らが生徒会長。

 ちゃんと周りのことを気にしておられるようだ。

 まあ会長に限らず、普通の人でも同じことはするか。

 無駄に会長を持ち上げ過ぎたようだ。

 失敬、失敬。


「取り合えずどこから周るか?無難にクレーンゲーム最初に行くか?それともコインゲームでもやるか?」


「うわっドラムの名人あるじゃん!斉坂先輩これやりましょうよ!」


「うっうん、そうだね。やろ、うか。」


 俺は斉坂先輩と勝負した。

 結果は完敗だった…

 斉坂先輩強すぎではなかろうか?


「くそっ〜次はこの格ゲーとかどうだ!」


「うん、わ、わかったよ。」


『二人ばっかり遊んでズルい〜次は私も混ぜてよ〜』


 美咲が不安そうにそう訴えてきた。

 ここで美咲を不機嫌にさせるのは得策ではないと判断した俺は、その案を了承することにした。


「斉坂先輩と一戦してからでいい?」


『オッケー!負けないよ〜』


「俺が勝つから。手加減は絶対にしないからな。」


 大人げないといわれてもいい。それでも勝負事には手を抜きたくはない。

 負けず嫌いな訳ではないが、できるものなら勝ちたい。

 よって俺は相手がたとえ子供だとしても手を抜く気はない。

 ましてや、相手が美咲であるならば絶対に手は抜かないだろう。


「まあ先に斉坂先輩とやるから。あと少し待っててな。」


 そうして俺と斉坂先輩との熱い戦いが始まり…斉坂先輩の超絶技巧によって一瞬で俺は敗北した。本当はこの人ゲーマーなのではないか?そう思はずにはいられなかった。


『次は私!勝っちゃうぞ~』


 俺が落ち込んでいるのを無視して美咲は次の対戦を申し込んできた。


「はあ。お前もうちょっと待ったらどうだ…全くそれじゃあ始めるぞ。」


『どんと来い!』


_________


「これで十回連続俺の勝ちだな!いい加減諦めたらどうだ?俺正直飽きてきたし…な?」


『う…でも、悔しい…』


「何もこのゲームで勝つ必要はないだろ?別の奴でもよくないか?」


『それは確かに!じゃあ次は何の勝負する?』


「早速かよ!?まあいいけどさ…」


 本当に彼女の負けず嫌いには困ったものである。

 それでも不思議といやな感じはしないので別にいいけど。


 それからは俺たちはコインゲームでガチガチの勝負をした。

 結果は俺の圧勝だった。

 もうコインがたまりまくって持ちきれないほどである。

 それに比べて美咲は逆にもうほとんどすっからかんであった。

 美咲は悔しそうだったが、これはゲームなのだ。

 本気でやるからこそ楽しいのであって、手加減なんてしてしまうのは正直言って楽しくない。


『もう…少しは手加減してくれてもいいじゃん。』


「だから言っただろ。手加減できないって。あともうそろそろ他のみんなのところに行くぞ。結構前にクレーンゲームのコーナーに行ったみたいだったし、俺らも行くぞ!」


『ちょっまだ勝負は終わってないって…逃げるな~!」


 みんなのもとに急ぐ俺を美咲が追いかける構図で俺たちはみんなの待つ、クレーンゲームの場所に向かうのだった。

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