第49話 ファミレス
自己嫌悪に陥った俺を横目にどうやら問題は解決していたようだ。
ただ、美咲はなんか不満そうだ。
そして響也はさらに複雑そうな顔をしている。
俺にはさっぱり分からなかった。
「すぐ近くのファミレスってガーデニアだよな?」
「確かそうだったはずだぜ?急にどうしたよ。」
「いやあの二人さ〜なんかさっきから、様子がね?」
「あー確かにな〜藤室は複雑そうで舞山は何か言いたげな表情してるもんな。ってかお前って気遣いできたんだな。感心するわ。」
「前に気遣ってお前を守ろうとしたの忘れた?」
「あー確かにな。そういやできるやつだったわ。やり方回りくどいけどな。」
「うっさい。別にいいだろ。」
そう馬鹿話をしている間に、すでに目的地である、ガーデニアの目の前に来ていた。
ガーデニアって名前、結構前から思っていたけどファミレスっぽくなくて何か花屋みたいだな。
それはどうでもいい話として、響也はともかく、美咲の機嫌をどうにかして取らなければ。
このままだといつ爆発して、こちらに飛び火するかわからない。
ここで放置しておくのは得策ではない、むしろ愚策である。
「美咲~何か食べたいのある?今日は俺が何でも奢るから。あ~ほかの奴らはなしな。」
『え!いいの!?』
予想以上の反応である。
ついさっきまでは何か言いたげで不満そうだったが、もうその様子は見えない。
「食いつきすごいな…」
本当に食いつきがすごい。そして近い。
「俺たちはだめってどういうことだよ!」
「桐山。空気読め。」
「そうです。少し不満はありますが、今は読むべきでしょうね。」
(会長の不満ってなんだよ。ものすごく怖いんですけど。今さら会長もいいって言うのも変だからな… なんか女性陣には全員奢った方がよく思えてきたな…)
「え~っともう!なら他の女子も奢るから!そんな不満そうなにこっちを見るなよ…」
「それはうれしいですね。佐伯さんもそう思いますよね?」
『えっ?うん、何でもって本当に何でもいいんですか?それならこのパフェが食べたいです!』
「なら私も頼みましょうか。舞山さんはどうしますか?」
『私はこの苺パフェにする~ 本当にいいんだよね?今から取り消しても無駄だよ?』
「別にいいぞ。男に二言はない(泣)」
『それなら問題ないね~とびっきり高いの頼もう!』
そこは自重してほしいものである。
俺の過去問を買うお金が…
もういい。図書館と学校にある問題で我慢しよう。
「俺たちには奢ってくれないんだね?」
「当たり前だろ?そんなたいそうなお金持ってないって。お前らの分まで奢ったら本当に今日遊ぶお金が尽きるからな?」
「えっと注文は何にするか?俺、ランチメニューの一番上のにする~!藤室はどうなの?」
「ドリアは確定だな。後は適当にピザでも頼もっかな。みんなも食べたいだろ?」
「サンキュー。俺ドリアとたらこスパゲッティでも頼むわ。」
「う、うん。えっとカルボナーラとズッパって料理で」
「女性陣はどうなんだ?やっぱ高いのか?」
『そうだよ~私と星加会長は、このラムのグリルと…あとソテーで!』
「美咲さん。パフェを忘れていますよ。」
『あ~そうだった~忘れてたよ~ 詩乃先輩もだよね?』
『うん。そうだよ。あ、私も言わないとね。私はドリアとパフェだけでいいです。藤室先輩のピザ食べるので。』
(佐伯さん、マジでナイス。俺の財布気にしてくれてありがとう。それに比べて、会長、美咲お前らは…もうちょっと佐伯さんのこと見習ったどうだ?あまりにも気遣いがなさすぎる。わざわざメインに一番高いメニューを選ぶなよ。そんな気はしてたけどさ…)
「ハハ、あまり食べ過ぎないでよ。みんなの食べる分もちゃんと残しなよ。」
『そんなことしませんよ。普通に食べるだけです!』
「…もうとりあえず注文するか。」
__________________
「うわ~藤室めっちゃピザ頼んだな。全種類はやりすぎじゃないか?面白いからいいんだけどな。」
今のどこに面白いポイントがあったのだろうか。
それよりもそんなに食べて、最後のバッティングセンターで楽しめるのかが心配である。
時間も少し経って全員の注文した料理が届いた。
お店の気遣いなのか、まだパフェだけは届いていないものの、みんなはもう食事を始めている。
かく言う俺もメインを二つも頼んでいるので人のことは言えないかもしれない。
ただ、昼からガッツリ肉をいっている女性陣二人と、桐山にはさすがに少し引いてしまった。
それにこの三人はバケツサイズのポップコーンをつい先ほど平らげたばかりである。
こんなに食べて太らないのか心配だ。
「…桐山食べるの早っ。もう少しゆっくり食べろよ。」
「え~馬鹿話で盛り上がりたいじゃん?俺食いながら話するのは苦手なんだよ。」
『意外な弱点だね?』
「うるさいな。お前も早く食べたほうがいいんじゃないのか?せっかくのパフェが解けちゃうかもしれないぞ?」
『少しピザもらいますね。もう食べ終わったので。』
「全然いいよ。食べきられなければいいからさ。」
『そういうことなら遠慮なく…』
そう言った佐伯さんはものすごい勢いでピザを平らげ始めた。
本当にあの華奢な体のどこにあの量の食べ物が入るのだろうか。
この勢いで食べられるのなら。某大食いのテレビ番組で完食できるかもしれない。そんな勢いである。
結局、佐伯さんは一人で全部のピザの半分を食べた。
一応バケツポップコーンを食べた後なんだよな?
信じられない。
その後、女性陣のパフェが届いた。
佐伯さんは一目散に食べ始めて、すごい満足そうな雰囲気だった。
会長と美咲の二人は食べるのが遅くて少し溶けてしまったことに少ししょんぼりしていた。
桐山がさっきちゃんと注意していたのでこれに関しては二人の自業自得だろう。
そうして俺たちは次の目的地であるゲーセンに向かった。
と言っても徒歩数分だったのですぐについた。
俺にとっては行ったことがない場所である。
初めてのゲーセンに胸を躍らせながら、馬鹿話に花を咲かせながら俺たちはゲーセンに入った。
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