第40話 忠告
どうしてだろう。教室から出るときに先ほどの覗くようなものと同じ視線を教室から出るときに感じた。
確かにこの中にそのストーカの恐れがある人がいるのは事実である。
でもその視線が俺だけを捉えていたような気がした。
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「ということでみんな、特に星加会長、美咲、響也。この三人には今から俺の話を聞いてもらう。これは緊急事態である。そのため異論は認めない。いいな?」
「いや、いい方ふざけてないかそれ?本当に緊急事態なのか怪しいな?」
「えぇ。確かに本気で言ってるようには聞こえませんでしたね。冗談を言うのは無駄なのでやめて欲しいのですが。」
『冗談を言ってもいいじゃん!少し滑ってたけど…』
「いや、これ結構ガチな話だからね?特に君たち三人にとっては極めて重要で知っとかないと危険なんだって。」
どうして信用してもらえないのだろうか。
いつも屁理屈ばっかり言ってるせいだろうか。
おそらくそれが理由なのだと思う。
…こんなことになるならもっとちゃんとした言い訳を毎回毎回用意しておくべきだったな。
「ハイハイ。で?どういう意味なのか教えてくれるか?」
「そうですね。私もそのことに関して本当であるならば気になります。」
『私も気になる!多分しょうもないけど…ゆう君、ゆう君早く言ってよ~』
さっきとはまるで態度が違うがそれでも信じている感が一つもなかった。
ここまで信用されていないとさすがに悲しくなってきた。
「あのな…昨日から団席に向けてちらちら視線を感じることがあったんだよ。それで最初は気のせいだと思っていたのだけれど、生徒会の片付け?みたいなののときにもあってさ、今日も視線を感じたから流石にこれ誰かのストーカーじゃね?ってなって話に来た感じ。」
『え?結構マジな感じ?』
「大マジ。俺が廊下に出ようとしたときに急いで逃げてたから間違いないはずだけど?」
「それ本当か?ごめんだけど冗談にしか聞こえないな。でももし本当だったら結構ヤバいな、全校集会ものになるぞ。」
「視線だけだったのですよね?それなら他の生徒にも散々いますし、わざわざ見るためだけに教室を覗きに来る生徒も少なからずいますのでどうともいえませんね。あと、学校だけでしかなかったような言い振りでしたが、それはストーカーとは言わないのでは?」
「確かにそれもそっか。でも気を付けろよ?少なくとも顔の整っていない俺の可能性はあり得ないが、お前らなら十分有り得る話だからな?」
「むしろ舞山さんや藤室さんと仲良くしていることを疎ましく思ってあなたをストーキングしている可能性のほうが高い気がするのですが。」
もしそうならいい迷惑である。
この人たちのオーラのせいで、平均凡庸な俺がストーカーしかも疎まれているとかたまったもんじゃないのである。
『それあるかも!だって今までそんな噂も気配もなかったからね〜』
「確かにな。十分有り得る話だ。」
「ちょい待ち!?藤室はわかるけど、舞山お前は、不登校だった時期があっただろ?だから分からんぞ?むしろお前が一番可能性高いまであるな。」
このまま俺がストーキングされている流れは少しキツイ。
だから申し訳ないがここには美咲…舞山には犠牲になってもらおう。
主に俺の精神的な安定のためにな。
『呼び方舞山に戻ってる!?普通に怖いこと言わないでよ〜』
「それは…確かに。」
『ちょっ藤室君まで!?やめてよ〜からかわないで〜お願いだから〜』
「いつもからかっているお前が言うか?それにこれは実際に有り得る話だしな。からかってない。響也は…知らないが。」
『てか藤室君性格変わったね?前より関わりやすくなったよ!』
「話を脱線させるなよ。今は、ストーカーの問題だったよな?」
『あ〜!都合の悪いこと言われたくないからってそんなこと言っちゃ駄目なんだ〜』
「それは美咲もだろ?本当は響也と血でも繋がってるんじゃないか?それぐらい息ぴったりだな。まあ仲いいことはいいことだが、今は真剣に考えろ。二人共、身の危険を負う可能性がある以上、何か考えとかないと。」
「私には言わないんですね。」
「会長は言われずともできますよね?それに比べてこの二人はどうにも信用できないので、何度も強調していってあげてるんですよ。」
「そういうことでしたか。私が蚊帳の外ではなくて少し安心しました。……無視されるというのはやはり私でも嫌なので…」
(え?会長?もしかして寂しがり屋何ですか?これがギャップ萌えというやつか!…)
会長のなかなかに衝撃的な発言に呆けているうちにいつの間にか深刻そうな雰囲気になっていた。
会長がことの緊急性を信じてくれてそれで二人に話してくれたのだろうか。
それにしても二人が会長から直々に説教されてしまったことは我ながら少し申し訳ないと思ってしまう。
もっとも、俺の話を冗談めかして取り合おうとしなかった二人に主な責任があるので俺には非がないのは明らかである。
それでも、呆けていなければ少しはフォローに入れただろう。
いろんな意味でテンションがだだ下がりな二人をよそに、この打ち上げは佳境を迎えるのであった。
余談だが、その時に一番はしゃいで打ち上げを満喫していたのは会長となぜか会長に連れられてきた桐山であった。
なぜ、桐山が白団の打ち上げに来たのかはいまいちわからないが、このときにわかったことがあった。
なぜならその時に視線を外から感じたからである。
そしてこの件は本格的にストーカーの可能性が高いという考えたくもない事実が頭をよぎった。
そして驚くべきことにその視線は一つだけではなく、二つあった。
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