第34話 生徒会の包囲網 後編

 



 何か変な空気になっちゃったな。

 しばらくと言っても10分ほどだが両者共にダンマリが続いた。

 この空気をどうにかしなくちゃ。


「…で?何に付き合えばいいんだ?。」


 特に何ともなかったかのように話を切り出す。

 少し悪ふざけを入れながらのほうが話しやすいだろうし相手も反応しやすい。

 そう思った俺はわざとらしく彼女の名前を呼んだ。


『……ゆう君、そうすぐに名前呼びなれられてもな~困るんだよ?』


「お前が言えっていうから。」


『何か…思ってたのと違う…』


「悪かったな~美咲さん」


『そう思ってるなら少しは自重してよ~、ね?』


「ハイハイ。分かりましたよ。で、何に付き合えばいいんだ?」


『何って、何がいいんだろ?わかんなーいwねぇさ適当に良さそうなのない?』


「家でゴロゴロこれが一番マストだ!」


 これは事実だ。

 家で勉強して間に単語帳を読んでそれから、英語の発音練習と……考えるだけでワクワクが止まらない。

 正直な話、俺の趣味は人から変わった趣味だと言われるが別に気にしない。

 一部の男が幼い即ちロリコンのような特殊性癖の一種だと思ってくれて構わないし、それが少数なだけで変わっていると言われても振り切っている人は気にしない。

 すなわち俺はあまり気にしない。


『え!いきなり家!?流石にそれは気が早いよ…』


(何いってんだこいつ。頭イカれたか?)


「いや、何勘違いしてんだ?各々の家で各々のやりたいことをやるだけだ。実に有意義な時間の過ごし方じゃないか。」


『え?あ〜うんそういう意味ね。あはは。』


「どういう意味だと思ったんだよ。まさか今更家に行くとかそういうのに戸惑ってたのか?前来たくせに?」


『あーストップ、ストーップ!それ以上はやめてハズいから。え?どうして子供を見るような目で私を見るの?やめてよ、何か惨めじゃん!』


 そこにぐったりとした桐山とイケ顔がすっかり疲弊した藤室がやって来た。


「散々な目にあった〜椎名ぁ〜ジュース奢ってくれ〜」


「それなら俺も頼もうかな。かなり精神的に疲れたからね。」


「そこまでいうほどではなかったと思うが。少なくとも俺のときはそんなになるほどの圧とか負の感情のオーラとかはそういうのは感じなかったぞ。」


「そんなこと言うなよ〜ほらジュース!ジュース!」


「はいはい分かった分かった。」


『“はい”は一回だよゆう君!これ一度言ってみたかったんだよね〜』


「なんか残念感ましたわ」


『酷いよゆう君!』


「それは確かにww」


『き・り・や・ま・君?』


「椎名様ぁ〜どうかお助けを〜」


「俺知らね。」


「見捨てないでくださ〜い。」


「わかったから。取り合えず二人でなにか飲み物買ってこい。ほら」


「サンキューな!!」


「椎名いや優。ありがとな。」


「お、おう響也。」


「今度からはこれでいこうな?じゃ飲み物買ってくるから。また後で。」


 そう言うと桐山と藤室は小走りでなにかから逃げるように自販機に直行しに行った。


「了解っと…「何しているのですか。」うわっびっくりした。脅かすなよ。美咲かと思ったじゃん。圧鬼じゃなくてよかった〜」


『それどういう意味?』


「ごめんなさい。」


『よし。許してしんぜよ。』


「はは〜」


「あのですね。二人して私を無視しないでもらえるでしょうか。」


『「はい…」』


 すっかり忘れていた。

 悪ふざけに熱中しすぎて、会長に話しかけられたことも何もかも頭から抜け落ちていた。


…今度はどんな叱責が待っているのだろうか。

 今からでも楽しみである(棒)。


「はぁ。一つ言い忘れていたことが有りまして。それを椎名さんにお伝えしようと思った次第だったのですが…」


「え?何ですか?気になるんですけど。焦らしてないで教えてくださいよ。」


「はぁ。それが人にモノを頼む態度ですか… まあいいでしょう。どうせいつか伝えるので、伝えておきますが、椎名さんあなたは、今日から生徒会の所属となりました。これからは生徒会の一員としてよろしくお願いしますね?」


「え?俺入部届出してな…」


「大丈夫です。舞山さんがあなたの筆跡を頑張って真似して書いてくれましまから。」


?何してくれてんの?」


『いやだってゆう君だけじゃん。生徒会に入ってないのって。それにゆう君部活も何もしてないでしょ。だからちょうどいいかなって思って。テヘ♪』


「いや駄目だろ。常識的に考えてくれよ。」


『ゆう君のイケず。そんなんじゃモテないよ〜』


「モテる必要ないから。大丈夫だから。あと今恋愛に…興味…ないし…」


『…そっか。興味ないのか。…残念。私だけか。』


 何いってんのこいつ?

 最後しか聞こえなかったんだけど。

 『私だけか』って何?

 もしかしてこいつ恋愛に興味あるの?

 恋愛にかまけていたら学業がおろそかになる。

 だからして、そんな時間作ってる暇なんて絶対にないというのに。


「言いたいことあるならもっとはっきり言ってくれ。ゴニョゴニョ言われてもゴニョゴニョとしか聞こえないっつーの。」


『べっつにー?』


「…お二人共。そろそろ私椎名さんに生徒会業務についての説明をさせていただきたいのですが。よろしいですか?」


『全然オッケーでーす!』


「え?俺入らなi…ってか抜けr…」


「わかりましたか?」


「はい…」


「では…生徒会業務についての説明ですが…」


 いわば地獄である。

 なんと表したらいいのだろうか。

 校長の話を三十分連続で聞き続けるというのが一番近しい表現だろう。

 寝そうになった。

 しかし話している当人、しかも結構それなりに怖い(舞山以下)が目の前にいるのだ。

 寝れるわけがなかった。

 そのまま地獄のような時間を過ごし、予想通り雑用にこき使われたあと、一番最後に帰るのだった。


 一瞬誰かに見られていた気がした。

 きっと俺がこんな美男美女と仲よくしていたのが羨ましいのだろう。

 少し優越感に浸っていた。

 その時に思い出したので、藤室と会長とLIME交換をした。

 会長のアイコンがくまのぬいぐるみで思わず驚いたのはココだけの話である。

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