第三章 幕開け(一学期後編)

第32話 盛況の後

 



 黒歴史になるかもしれない解団式を終えた後、団の総合優勝を祝して、団役員全員で打ち上げをすることが決まった。

 日時は何故か今日ではなく明日らしい。

 貴重な休日がつぶれる。

 そう思うと少し行きたくなくなる。

 どれだけ変わろうと覚悟を決めても、実際に行動に起こしても、腐った性根だけはどうしても変えられないらしい。


 それはそうとついさっき片付けをしているときに藤室から聞いたのだが、どうやら俺は藤室に言われるまで団リーダーを団役員として一纏めに言っていたらしい。

 いやー本当に恥ずかしい。


…でも本当に良かった。

 ここまで馬鹿を言い合えるまでに戻ったんだ。

 むしろ前までよりも仲が深まった気がする。

 具体的には距離の近さが桐山くらいになった気がする。

 そう考えてみると桐山って異常なんだな。

 っていうか俺と仲いいメンツで生徒会入ってないのっていたっけよく考えてみたら俺…だけ!?

 急に疎外感を感じた。俺だけ蚊帳の外ですか。そうですか。


 とにかく明日の打ち上げに向けて、今からでも可能な限り行かない理由を考えなければ……


 あ、やべ。

 団席があった場所に弁当袋置きっぱだ…てっきり俺はリュックに入れたものとばかり思っていた。

 今から取りに行くのは少し面倒だ。

 でも仕方ない。

 ここはあきらめて取りに行くしかないか。


 グラウンドまで戻ってきた。生徒会の人たちが本部があった場所に集まっている。

 本当に俺って蚊帳の外じゃん。やっば涙出てきそう。

 かと言ってあの生徒会には絶対に絶対の絶対に入りたくない。

 入ったら地獄が待っているだろう。

 ちょうど奴隷であるがごとくこき使われて、精神的にも肉体的にも疲弊し、満身創痍になること間違いなしだ。根拠はあの生徒会長だ。異論は認めない。


 ともかく目をつけられないように地味に、影を薄くしてできるだけ音を立てないように行こう。

 目指すはあそこにちょこんと残っている弁当袋ただ一つだ。

 顧問の先生だろうか、その先生が話していたおかげで行きは見つからなかった。

 問題は帰りである。

 なぜならその話が終わったようで、生徒会の人たちがそれぞれ何かを話し始めたからだ。

 この場合、さっきとはここを抜ける難易度が著しく高くなっている。

 俺から見て舞山はこっちを、藤室は俺の向いている方向を、会長は左側をそして桐山はそれに向かい合う形で右側を見ている。

 監視しているのかと勘違いするレベルである。

 ここは走り抜けるしかない。


 そう決めた俺は何故かクラウチングスタートを決め、走り出した。


『あ~ゆう君じゃん!!今ね生徒会新聞をどうするかって…ちょっ逃げるなぁ~!』


「椎名ちょうどいいところに。ってなんで走ってるんだい?話、話を聞いて。とりあえずでいいからさ。逃げるなよ。俺と椎名の仲じゃないか?」


「椎名さん。そういえば話がまだでしたね。こちらへ来なさい。」


「あいつにそんなこと言っても無駄だって。こういう時は全力で追いかけるのみ!こら~待て~w!」


『桐山先輩の言うとおりかも。‘‘桐山セ~ンパ~イそのまま左の方に誘導しといて~’’っと』


「了解!まかせろーーー!」


『それじゃあ私は彼が走ってくる右から待ち伏せします。』


「じゃあ俺は正面から会いにいこっかな。会長はどうするんですか?」


「なら私は左にけばいい話ですね。分かりました。それではすぐに行動に移しましょう。ほかの皆さんは少し待っていてください。」


『「了解!!」』


 酷い最悪である。全員に見つかった。しかも桐山の奴が楽しそうに俺を追いかけてきた。

 

「おいっ!桐山っ追いかけてくんなよ!俺は家に帰るっていう大事な役目があるの!だから放っておいてって!」


「残念~舞山に頼まれたのだよ。だから張り切っちゃうもんね~。諦めたほうが身のためだぞ?今ごろ全員がお前を追ってきてるからな。」


 え?なにそのとってもカオスな状況。

 もしかしてだけど会長もか?もしそうだとしたら尚更カオスである。

 そして考えられ得る最悪な状況である。もうすぐ大橋が見える。流石にここまでは追ってきまい。


「残念、椎名ここは通行止めだ。」


(え?なんで先回りしてるの?怖いんですけど…)


「なら違う方向行けばいいだけだし…」


「あら?奇遇ですね。とにかく学校に戻って話をさせてもらいましょうか。」


「まじか。それじゃあ後ろしか…」


『ゆう君!逃げられないよ?』


(え?これもしかして詰み?)


「やだっ!俺は帰るの!俺は帰るんだって~‘‘ギャ~ァ!’’’」


(え?俺どうなるの?精神的に殺されるの?はいそうですよね…)


『それじゃあ学校戻ろ♪』


「そうだな。ふ~よく走った~。俺お前のせいで疲れたからあとで自販機で何かおごってくれよ!」


「流石に俺もちょっと疲れたよ…椎名いや、。」


「藤室さん。俺をジト目で見るのやめてくれません?」


「おいおい敬語はやめてくれよ。俺たちの中じゃないか?ため口で今まで通り、な?」


 この後が心配になってくる。

 どうして俺はこんな面倒くさい人たちに囲まれてしまったんだろうか。

 どこかで道を間違えたのではなかろうか。


 それでも、心から嫌がりながらも、どこか心の中でこの状況を楽しんでいる俺がいた。

 やっぱり、根はこいつらも俺もあまり変わらないのかもしれない。

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