第23話 生徒会長




 勢いよく扉が開く。

 どうやら3年の先輩らしい。

 どこかで見たことあるような気がする。

 その先輩は堂々とした足ぶりでそのままクラスの中に入ってきた。

 どうやらこちらに向かってきているようだ。

 何故こっちに向かってきているのだろうか。やはり俺の噂が原因だろうか。

 もしそうなら、彼女は風紀委員に違いない。

 顔キリッとしてるし。髪がストレートのロングだし。偏見?知るもんかそんなもん。

 彼女が風紀委員なのだとしたら俺の悪い噂から勝手に俺が本当に何かをやらかしたと思ったのだろう。いい迷惑である。


「桐山さん、明日朝生徒会室に来てくださいと昨日連絡しておいたはずですがどうして来なかったのですか。」


「桐山そうなのか?」


 平気な様相を装う。

 俺がもし勘違いしてたということが桐山にばれようものなら、いじられること間違いなしである。


「え?そんなの聞いてないけど…」


「生徒会のLIMEで送りましたよね?それはあなたの確認不足でしょう。私の知るところではありません。桐山さん、他に言うことは有りますか?」


「いや、でも…」


「私が納得できるだけの理由があるのならばどうぞ言ってください。」


「くっ、その…」


「桐山、ここは素直に謝ろう。」


「何でお前までそっちの味方なんだよ!」


「俺は桐山のために最大限の助言をしてやったんだ。女子に言い訳は禁物。特にどう見ても怒っている奴に言うのはかえって怒りが増すだけだぞ?どれだけ正論で論破できたとしても、そういうのは相手が怒っていないときにやるんだよ。女ってのはそれだけ気をつけても機嫌がすぐ悪くなるからさ。そういうのは愚痴だけにしとけ。」


「それは心外ですね。まるで私に心がないような言いぶりではないですか。」


「実際そうだろ。女子は全員そうだ。特にお前みたいな気の強い女子に文句でも言ってみろ。社会的にも物理的にも殺されるぞ。」


(ん?今桐山じゃなかったような…気のせいだろう。気のせいであってくれ。)


 自分が失言してしまったような気がして一瞬冷や汗をかいてしまった。

 そもそも俺はさっき来た風紀委員ではなく生徒会役員の女子にとっては赤の他人だろうし、はっきり言って俺の言葉なんぞ気にしてないだろう。

 だから問題ないだろうと思った俺はそのまま続ける。


「そもそもだ。あんな気の強い女子がいるって分かっててどうして生徒会なんかに入ったんだよ。あのタイプは避けるが勝ちだ。無駄に突っ込んだお前が悪い。」


「おい椎名やめろ。やめろってそれ以上は…」


「椎名さんというのですね。少し話があります。昼休み生徒会室に来なさい。」


 説教をした自分が先輩の機嫌を最悪にしてしまったらしい。

 これは特大ブーメランというやつなのだろうか。

 というか桐山の上s…生徒会での先輩はさっきから妙に敬語ばかり使っているようだ。なんか厳しそうで怖いな。俺どうなるの?考えたくもない。とたんに顔が青くなる。


「え…いや、俺は団の練習あるから無理。連れて行くなら桐山だけにしてください。」


 別に桐山を犠牲にしたわけではない、俺は団の練習で忙しいから暇そうな桐山に要件を移しただけである。

 本当に他意はない。


「あまりに正論で正直驚きました。でしたら放課後練習後に来なさい。」


 やっぱり命令形なんですか。そうですか。

 多分おそらくはこの場から抜け出すことはどうやってもどうあがいても抜け出すことはできないだろう。


「練習って結構遅くまであるだろ?昨日は休日の練習だったのに終わったのが夜の7時前だったんだぞ?俺は家では料理係を任されているんだぞ?お前は俺の父がちゃんとした食事を取れないことに責任はとれるのか?いや取れないよな。ならそういうのはよしてくれ。」


「本当にあなたは癪に触りますね。確かにあなたの言ってることは筋が通ってます。残念ですけど反論できません。でもあなたのしていることは先ほどあなたが私の前でした発言と矛盾しますがそれに関してはどうお考えで?」


「俺はお前と仲良くする気はないしこれからかかわっていく気も毛頭ない。そんな相手からいきなり不都合を押し付けられてたんだ。しかも俺は学校中で嫌われている。何も失って困るものはないぞ?強いて言うなら時間だろうな。だから言い返した、それだけの話だ。ほかに用がないなら帰ってくれ。」


「…そう。わかりました。失礼でしたね。さようなら。」


「うっわ、今の会長マジ怖かったぞ… あの会長に言い返すとかお前メンタル鬼か何かなのかよ。ある意味見直したわ。」


「俺のおかげで桐山が怒られずに済んだこと忘れてないか?恩人に対してその発言はあまりにも不義理だな。」


「お前…もしかして俺のために…ありがとな。いい友人を持ってよかったよ」


 虚言である。成り行きでこうなっただけなのだ。

 俺は結構強情なやつなので、その成り行きによって得られた結果を恣意的に利用して桐山に恩を着せたのだ。


「いいんだ。ただこれからは俺のこと特に舞山との関係については触れないでくれ。」


「男に二言はないっ。その約束了解した!本当に今日はありがとな。」


「いいさ。友達を守るのは当然だろ?」


 虚言である。俺は一度彼を普通に見捨てようとした。


「っく、お前って本当にいいやつだな!」


 罪悪感がすごい。こんなにだましているのに桐山は単純に感謝してくれている。

 本当に胸が苦しい。

 それにしても桐山はちょろいな。

 仮にこいつが女子だったら、藤室に一目惚れして告るのではないかと思えるほどちょろい。そんなチョロインな桐山(男)にいろんな意味で同情した。

 本当に可哀想だ。

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